前回の記事はこちら
それでは、続きを書いていきたいと思います。
択一式の問題は、「民法の規定及び判例に照らし」とされていることから、事案の把握は最低限度でよく、何が問われているかを効率よく抽出していけばいい。これが、速解のポイントでした。
今回は、具体的な例をいくつか出して、検討してみたいと思います。
共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務(以下「本件貸金債務」という。)を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。 本件貸金債務につき、A・C間の更改により、AがCに対して甲建物を給付する債務に変更した場合、Bは本件貸金債務を免れる 。(H29-32-2)
問題文が非常に長いですが、速解の技術を使うと、次のように問題文が見えてくるはずです。
共同事業を営むAとBは、Cから事業資金の融資を受けるに際して、共に弁済期を1年後としてCに対し連帯して1,000万円の貸金債務(以下「本件貸金債務」という。)を負担した(負担部分は2分の1ずつとする。)。 本件貸金債務につき、A・C間の更改により、AがCに対して甲建物を給付する債務に変更した場合、Bは本件貸金債務を免れる 。(H29-32-2)
自分が問題を読んでいるときは、上記のように赤くした部分しか目に留まっていません。
具体的には、次のような思考過程です。
「あ、連帯してという言葉がある。ということは、この問題は、連帯債務に関する問題だな。」
「連帯債務が聞かれたら、とにかく相対効・絶対効・負担部分の限度で絶対効の話を聞いてくるはずだから……あぁ、更改ってあるな。」
「更改は……絶対効。つまり、効力が及ぶでよかったよな。」
「Bは本件債務を免れる。」「うん、免れるだから、効力が影響している。これでOK。○だ。」
いかがでしょうか。
赤い部分を読んだだけで答えが出ませんか。
連帯 → 絶対効等の話を想起 → 更改を見つけて → 及んでいるかを確認
実際は、このような頭の動かし方でいいんです。
この調子で、さらに見てみましょう。
これもずるい解法です。今度の問題文は、相当長いです。
Aがその所有する甲土地についてBとの間で締結した売買契約をBの強迫を理由に取り消した後、Bが甲土地をCに売り渡した場合において、AからBへの所有権の移転の登記が抹消されていないときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権の復帰を主張することはできない。(司法書士H29-8-イ)
この問題文も長いですが、次のように見えれば良いと思います。
Aがその所有する甲土地についてBとの間で締結した売買契約をBの強迫を理由に取り消した後、Bが甲土地をCに売り渡した場合において、AからBへの所有権の移転の登記が抹消されていないときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権の復帰を主張することはできない。(司法書士H29-8-イ)
こちらの問題文も、事案の把握などの必要はありません。赤い字に着目します。
「強迫を理由に取り消した後…か。ということは、対抗関係処理だ。」
「えーと、登記を備えていれば、主張できるんだよね。…AからBへの移転の登記が抹消されていない。ということは、Aは登記を備えていないのね。」
「Aは、所有権の復帰を主張できない。そのとおり。○だ。対抗関係だから、登記がないとダメだもんね。」
こちらも、赤い字の部分だけで、論点想起をした上で解答しています。
強迫後の第三者 → 対抗関係 → 登記を備えているかを見る
これが、解法です。
問題を解くスピードを上げるには、問題文をなるべく読まないで、論点的に把握をしてしまうこと。これが重要です。
この解法は、択一式の問題であれば、無限に使うことができます。
だって、問われる条文・判例は、「テキストで勉強した『民法』に関するもののみ」なのだから。
民法の過去問などを検討するときには、知識の確認をすることが大事?問題文の事案をきちんと把握することが大事?
いえ、いずれも違います。特に、後者は完全にアウトです。
民法の問題を検討するときには、「問題が聞いている条文・判例を出題するためには、どの言葉を使わなければならないか(キーワードの発見)。そこから、何を想起すればいいか。」。これを決めることが重要なのです。
なお、前回の記事でも注記しましたが、このような解法は、あくまでも、「択一式問題」においてのみ妥当するものです。
対実務や論文問題だと、「そもそも民法の条文・判例の射程だけでいい」という前提がないので、この解法は使えません。
また、このような解法を身につけるのは大変そうだな。他に早く解く方法ないの?という相談が来ることもありますが…解法を使うのには、訓練がいります。訓練をしたくないのであれば、愚直に事案を把握して、その場で何の問題かを読み解いていくしかありません。
(受講生の皆さま。解法技術完全マスターでやることがちょっと見えてきましたか。この解法をすり込むのが、解法技術完全マスター講義です。」
頑張って訓練してみましょう。
問題文の見え方が劇的に変わるはずです。
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