幼虫達はオオバコに巣を作り終え、オオバコを食べている食痕も見え始めた。今回の飼育で一つの山場と考えていたポイントは越えたようだ。この題名での更新は、幼虫に特別な変化がない限り、今後は不定期としたい。今後の幼虫の成長経過を綺麗な写真で見たい方は、下の『観察レポ』を参照して下さい。
今まで連日のように更新してきたが、それを休止する理由は単純。幼虫の状態が安定期に入り、しばらくは株への水やり以外にやることがなく、書くことがなくなったためである。
次回更新は休眠の有無などが問題になり始める8月下旬以降になると思う。勿論、その前に気になる現象やアクシデントなどが確認されたら、随時更新する。
この後、首都圏は発生地にはないような高温多湿の条件が続く。プランターに長時間直射日光が当たるような条件は避けなくてはとは思っているが、特に更新がなければ、順調に育っていると考えて欲しい。
コヒョウモンモドキの減少の原因とか保護対策などについても触れたいことはあるが、それは現在いる幼虫達のほぼ全部が越冬体制に入った前後でも遅くないと思う。
直近の飼育の経緯を簡単にまとめておく。
1株に200卵程度の卵塊が産付されている株は葉が上の方の二段程度だけになり、餌不足が心配される状況になってきた。そこで、茎を下の方で切断し、オオバコが繁茂するプランターの中で斜めに突き刺す形で置いた。
クガイソウの葉が萎れても、幼虫はすぐにクガイソウに作られた巣の中から出てくることはなかったが、やがて一部の個体が出てきて、クガイソウの茎をプランターの中のオオバコと糸で結びつけた。その結果、クガイソウの茎とオオバコからなる巣が完成し、安定した。
他方、最後の方で産卵した2つの卵塊が付いている株は、株も大きく、すぐに移動させる必要は感じなかった。このグループは最初から最後まで、クガイソウ(エゾクガイソウを含む)のみを食べて成長するグループとし、クガイソウのみを食べた場合と、途中オオバコも食べた場合とを比較しようと思っている。
下の写真がその状況である。左がクガイソウの鉢、右がオオバコのプランター。共に外敵からの保護のために洗濯ネットを被せてある。
これまでの飼育の過程で確認したことを再掲すると、以下の通り。
1.一生における産卵数はほぼ千卵程度で、従来言われていた数字と一致する。
2.孵化までの日数は、最初の卵塊のみが産卵当日を含めて8日。他は産卵当日を含めて11日であり、孵化率はほぼ100%、孵化は極めて斉一。卵期は従来言われていた約2週間よりも短いが、関東平地は本来の生息地よりも気温が高いことに依ると思われる。初産の卵塊のみが特に早い理由としては、卵が受精する時と産卵される時期がずれていることが関係するのかも知れない。
3.孵化した幼虫は極めて小さく、見にくいが、葉の裏面でかなりランダムに移動しながら糸を吐き、摂食も行っているようだ。
4.幼虫が吐いた糸は、やがて複数の葉を寄り合わせる袋のような形になり、大半の幼虫は袋の内部にいる。「観察レポ」の作者に依ると、この糸で仕切られた空間の中に、出入り口もあり、時間帯によってはほぼすべての幼虫が内部入るそうだ。
5.この付近の段階(1齡末期ないし2齡初期)でクガイソウを切り取り、オオバコプランターに移すと、やがて一部の個体が巣から出て来て、クガイソウをオオバコに繋ぎ合わせてより大きな巣を作る作業を始める。それと前後してオオバコにも食痕が見え始める(←今ココ)。
6.全体として、採卵および若齢幼虫の飼育は極めて容易。必要なものは吹き流し、産卵用のクガイソウ株、飼育用のオオバコプランターだけ。吹き流しの中に交尾済み雌とクガイソウの株を入れ、直射日光があまり当たらないベランダなどに置いて毎日餌をすれば、やがて多数の卵を産む。蜜源植物による吸蜜はあまり期待しない方が良く、ポカリスエット、薄めた蜂蜜などを人為的に与えた方が良さそう。
クガイソウからオオバコへの移動も極めて容易。以後の管理はクガイソウやオオバコが枯れないように水やりをするだけで十分と考えられ、単なる植物栽培と何ら変わる所はない。
現時点での印象としては、とにかく採卵も飼育も呆れるほど楽で、何でこういう種が減少とか一部の県で採集禁止とかになっているのか、不思議なほどです。
標本目的の採集と言う観点から言うと、「採集は危険な種」ですね。うっかり雌1頭採集してしまうと、標本箱10個位コヒョウモンモドキで一杯になってしまい兼ねない。クガイソウに過剰産卵されているのを見つけたら、必要なだけ切り取って持ってくる位がいいんじゃないですかね?雌1頭採集は多すぎます。
ただ、本当にそう言えるかどうかはまだ分かりません。越冬のための休眠入りや休眠明けの飼育に、注意しなくてはならない何らかのポイントがあるのかないのか、そこがまだ見えていない。特に「越冬に失敗して全滅」はありそうな気がする。