経営の勘どころ・つかみどころ -7ページ目

フルスペックの平成30年だが、そうは簡単に終わりそうもない年のようだ!

今月26日、京都御所から来年10月に予定されている天皇の即位に使用される「高御座」と新皇后の「御帳台」が皇居にトラックで移送されてきた。いよいよ平成の元号から新元号に変わる準備が目に見える形で動き出したようだ。このまま平穏無事に新時代へ移行していければ・・と願いたいものだが、平成30年はそう簡単に終わりそうにない雲行きである。


 そもそも今年は、世の人々の願いも虚しく、いろいろな不穏な出来事が次から次に起こっているのだ。振り返れば、平昌冬期オリンピックを契機に歴史的な米朝首脳会談が開催され、それを受ける形で南北首脳の往来が相次ぎ、にわかに我が国を取りまく国際情勢が流動化してきた。安倍首相も日朝首脳会談に意欲を示す談話を発表したり、この秋には中国を訪問して習近平国家主席との首脳会談を目論んでいる。国際政治はその舞台裏で激しく動き始めている様子が覗える。


 他方、経済面でも今年は、11カ国による米国抜きのTPP交渉が成立し、続いて日・EUとのEPA交渉が成立するなど自由貿易体制が強化される一方で、トランプ政権による鉄鋼・アルミの制裁関税の発動を皮切りに米中貿易戦争が勃発し、今や米国トランプ政権は2500億$に及ぶ制裁関税を中国からの輸入品に課するまでに発展した。心配なのはトランプ政権は制裁の手を緩める気配がなく、相手の出方次第では中国からの全輸入品に制裁関税を課すと息巻いていることだ。

 

 さらに中東では、米国によるイランへの本格的な経済制裁を前に、EU主要国との間の同盟関係にひび割れが生じはじめ、この影響を受けて原油が高騰、9月の国内におけるガソリン小売価格も1㍑150円を突破してきた。

 自由貿易体制を自認する日本ではあるが、米国の勢いに押されるままに日米物品貿易協定(TAG)の交渉入りを約束するまでに押し込まれつつある。自動車への制裁関税を回避するための方便とみる向きもないではないが、それだけで済まされないような気がする。相手はなんと云っても前言を平気で覆すトランプ大統領であるからだ。


 さて、国内に限って目を向けてみても、今年は6月の大阪地震、7月の西日本豪雨災害(死者行方不明者200人超)、オウム死刑囚13人の死刑執行、7・8月には歴史的な酷暑襲来で、熊谷市では気温が41.1度を記録し、国内最高記録を更新した。9月には台風21号によって発生した高波被害で、関西国際空港が水没し、おまけに関空につながる橋梁にタンカーが衝突して交通が遮断されるなどの大被害が発生した。その翌々日の未明には北海道胆振地方で震度7の地震が発生し、大規模な山崩れと全道一斉停電となる国内初のブラックアウトが発生した。訪日客もその後激減し、地方の観光経済にとって大打撃となった。今も台風24号が接近中であるから心配は尽きない。ことほどさように今年はひときわ災害が目立った年になりそうである。

 

 まだ年末でもないこの時期にもう既に書き切れない程の出来事が連続して発生しているのである。今年も残り3ヶ月となったが、この先何が起こるかまったく分からないと云う他はない。
 平成30年! 今年もそう簡単に終わりそうもない年のようである。

 

 

災害レベルの猛暑は温暖化現象なのか? 秋の涼しい空が恋しい!

この夏は、6月末にはやばやと梅雨明けを迎え、7月初旬には、西日本各地が豪雨に見舞われ、多数の犠牲者を出した。

その後も夏の高気圧が日本列島を包み込むように居座り、災害レベルの酷暑をもたらし、多数の熱中症患者が病院に運ばれる事態となった。
 これは地球温暖化の前触れなのだろうか? 大いに不安を感じる。

9月1日は立春の日から210日目の、いわゆる「二百十日」に当たるが、先人の長い生活体験から、この二百十日から二百二十日の10日間にかけて野分(のわき:台風)が吹き荒れて、海も陸も強風と大雨によって、稲や果実に被害を受け、漁師も海で命の危険に晒されるなど、厄日の期間と記憶されている。
 しかし、今年の夏はこの二百十日よりも早い7月から8月末まで、台風が20個も発生して、10日どころか2ヶ月もの間、酷暑と豪雨による被害を各地にもたらしているのである。温暖化がもたらす異常気象か?と不安に感じるのは私一人ではないと思うのだが。
 いずれにしても、もうすぐ暦は9月を迎える。今はひたすら、あの秋の透き通るような涼しい空を恋しがるばかりである。

 

2018年7月6日に起こった事!

6月下旬に梅雨明けし、その後の災害レベルの猛暑列島と化した日本だが、7月6日という日は歴史に刻んでいい日であると思われる。

それ程までに象徴的な出来事が集中して発生した日が7月6日なのである。


 この日、法務省(上川陽子法務大臣)は、オウム真理教の教祖・麻原彰晃を含む7人の死刑囚の刑を執行した。平成の時代を代表するテロ事件として人びとの記憶に深く刻まれている地下鉄サリン事件の首謀者への死刑執行は、予想されていたこととはいえ、社会に大きな衝撃を与えるものであった。これに続いて26日にはさらに6人のオウム死刑囚に刑が執行され、結果13人全員が死刑となったのであるから並の出来事ではないことは確かである。
 おりもおり、その当日、異常に発達した梅雨前線が西日本中心に大雨をもたらし、16府県に及ぶ200人超の死者行方不明者を出す大災害が発生したのである。後に、平成最悪の豪雨災害と称されるほどの大災害となり、政府も14日には「特定非常災害」に指定するに至っている。


 かかる事件と災害に揺れ動いているまさにその当日、海の向こうのアメリカでは、トランプ政権が中国に対して340億ドルの制裁関税を発動した。6月の鉄鋼・アルミに対する25%の制裁関税(通商法232条)に続く措置で、今回は知的財産侵害に対する対抗措置として通商法301条を発動しての制裁関税である。その内容は中国の自動車や半導体、医療機器・産業用機械等のいわゆるハイテク機器に対して25%の制裁関税を課すというものであり、これは中国政府が推し進めようとしている、「中国製造2025」というハイテク産業育成策に対抗する意図があると目されている。中国も間髪を入れず、アメリカの自動車や大豆・農産物・ウィスキーなど545品目に対して同規模の制裁関税を課すことを発表した。トランプ政権はこれに対して、7月中には500億ドル規模まで制裁品目を拡大するとしており、中国の対抗措置を見据えつつ、9月までに約6000品目に対して総額2000億ドル(22兆円)規模の制裁関税を課すとしている。最終的には中国からの年間輸入額に相当する5000億ドルまでその規模を拡大すると公言している。

 

 保護貿易主義がもたらす21世紀の貿易戦争が、あとから振り返るとこの日、すなわち7月6日に勃発したと記憶されるかも知れないのだ。おりしもこの6日、日本政府は、先月の国会で承認成立したTPP11の国内手続きを完了した旨を、TPPの寄託国ニュージランドに正式に通知した。TPP11で国内手続きを既に完了しているメキシコ・シンガポールに次いで、3番目の手続き完了国となったのがこの6日である。カナダ、ニュージランド、オーストラリアも年内完了が見込まれているので、TPP発効はカウントダウンの段階に入ったといえるだろう。世界のGDPの11%:人口5億人の巨大な自由貿易経済圏がまもなく誕生する。

 これに歩調を合わせるように今月19日には、日本とEUの間でEPA(経済連携協定)がEUのトゥスク大統領とユンケル委員長がそろって来日して、安倍首相との間で正式に締結された。こちらも世界のGDP30%:人口6億4000万人という巨大な自由貿易経済圏が成立することになる。


 アメリカ・トランプ政権が強引に進める保護貿易主義に、TPP11&日本・EUのEPAが必死に対抗しようとしている構図が、この7月6日を境に誰の目にも明らかになってきた。

 今後どちらの勢力に軍配があがるかは見通せないが、7月6日に起きたアメリカと中国の双方による制裁関税の報復合戦と、日本におけるTPP国内手続完了と日・EU間のEPA協定締結の動きは、ある意味で経済面での歴史的な対立軸の形成の端緒となった象徴的な出来事として、将来人々の記憶に刻まれるやも知れない。

 

 

6月の大異変!


 何と今月29日、気象庁は関東地方の梅雨明けを宣言した。平年よりも20日も早い6月中に夏を迎えることになった。こんな些細なニュースでも今月起きた大きな出来事を考えると「異変の予兆」を感じざるを得ない。


 ロシアで開催されているサッカー・ワードカップ。西野朗監督率いるサムライニッポンが大方の予想を覆し、決勝トーナメントに進出を果たしたのは嬉しい誤算にしても、この6月には世界秩序を根底から揺るがしかねない大きな出来事が相次いで起きた。


 6月12日には史上初の米朝首脳会談がシンガポールで開催された。この会談で、米国のトランプ大統領は北朝鮮の体制保証を表明し、一方の北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、完全非核化への取り組みを約束したという。現在のところ米朝ともに細部の交渉を開始したばかりで、着地点は見通せないが、中国、ロシヤ、韓国の首脳が相次いで会談を繰り返すなど、北東アジアの安全保障環境は急速に地殻変動が起きつつあるように感じられる。仮に将来、米朝が国交を回復して、在韓米軍撤収と南北朝鮮統一に動き始めると、今までの日米韓による対中国・北朝鮮防衛ラインを維持することは不可能となり、対馬海峡を日米(若しくは日本単独で)の新たな防衛ラインとする根本的な国防戦略の再構築を迫られる可能性がある。


 米朝首脳会談の直前に開催されたG7サミットでは、トランプ大統領の掲げる保護主義政策に他の6カ国の首脳が反対を表明。特にEUとアメリカの貿易を巡る対立が一気に際立ってきた。すでにトランプ大統領は、米国の国内法・通商拡大法232条に基づき、中国・日本などに対して鉄鋼・アルミに25%の制裁関税を課しているが、これをEUにも拡大すると表明。メルケル首相の神経を逆なでした。
 中国には、約500億$相当の制裁関税を課すことを決定。中国が同額の対抗措置を決めると、さらに2,000億$相当の追加制裁関税の検討を指示するなど、米中貿易戦争の様相が日増しに高まっている。トランプ大統領の鼻息は荒く、輸入車や自動車部品にも25%の制裁関税を課すことまで言及しており、EUも対抗措置としてアメリカのハーレーダビットソンに同率の関税を課す可能性は示唆している。


 イランに対しては原油輸入禁止を同盟国(日本を含む)に要求し始めており、中東地域でもきな臭さい空気が漂い始めている。
 平和とは互いの信頼関係がなければ実現しないし、維持することもできない。今、世界はこの信頼関係にくさびが打ち込まれ、深刻なひびが入りつつあるようだ。あとに続くものは、疑心暗鬼と不信だけである。これがある時に沸騰点に達したとき、おぞまし憎悪の化身たる「戦争」が始まるのであろう。


 幸いに日本では、6月29日にTPP関連法案が参議院で可決成立した。7月中には、国内手続きを終了して、11カ国からなる巨大自由貿易圏の発効に大きく前進することになった。既にメキシコが批准し、カナダ・ニュージーランド・オーストラリアも年内比準に動いている。TPPには、タイ・インドネシア・英国も加入に意欲を示しているので、TPPの早期発効と加盟国拡大が保護主義の台頭を抑える役割を果たすことが期待できる。安倍首相は、あわよくばトランプ大統領に翻意を促し、アメリカのTPP復帰を願望しているのでないかと思われる。


 経済と安全保障は表裏一体の関係にある。経済にあっては自由貿易主義VS保護貿易主義の対立。安全保障では新冷戦か?と揶揄されつつある米国・EUVSロシア・中国を中心とする対立軸の形成。この二つの世界秩序を揺るがす構造変化が、耳障りな軋み音をハッキリトと立て始めたのがこの6月ではなかろうか。
 

 

 

7割国家ニッポン!

半世紀後の日本は7割国家となる。5月20日の日経新聞紙面に目が惹きつけられた。

その記事では、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると2065年の我が国の総人口は今より3割減の8800万人に減少すると書かれている。その途上の2045年には各自治体の人口も減少が続き、鳥取県が44.9万人、高知県が49.8万人といずれも50万人を切るという。

 今年5月5日の新聞各紙では、子どもの数が37年連続減少を続け、4月1日時点で最少の1553万人(外国人を含む14歳以下の子どもの数)に留まったと報道されたばかりであるから、7割国家という活字には、現実味をともなった凄みすら感じられた記事であった。

 

 そんな未来予測に一人焦燥感を抱いていたさなかの翌21日、政府は2040年の社会保障費が2018年度から6割増加し、190兆円になるとの推計を公表した。

2018年の1.6倍である。特に高齢者数の増加に伴う介護給付が大きく膨らむのが、増加要因であると分析している。その給付総額は、国内総生産(GDP)比24%に達するだろうと予測する。社会保障給付費を膨張させる高齢者がますます増加する中、一方では子どもの数の減少が止まらないのである。

 この現実こそが、7割国家を疑いなく想起させる悪因悪果の根源である。現在でも介護現場の人手不足は深刻である。企業の生産現場においても人手不足が経営課題になりつつある。

 ここにきて政府も外国人労働者の雇用政策の緩和を進め始めているが、島国ニッポンにとっては、外国人や移民を大量に受け入れる免疫力はないから、一時的な対処療法に過ぎないであろう。

 

 根本的解決は、少子化を多子化へと誘導する政策をもっと強力に進めるしかないのだが、政治家の動きは鈍い。頼るは民間の力だが、まだまだデフレ後遺症から抜け出せない経済状況を考えると、企業も賃金抑制を続けざるを得ないと思われる。四方八方行く手を阻まれた自縄自縛経済のニッポンの未来は、7割国家に辿りつく前に破産国家になってしまうのかも知れない。

 

ESG投資とは何か?

最近の経済誌や新聞の経済記事の中に、「ESG投資」という単語を良く目にするようになった。このESG投資のESGとは何を意味するのであろうか? 端的にいうと、Eは、Environment(環境)、SはSocial(社会)、Gは、Governace(企業統治)の英語の頭文字をつなげた略語である。
 近年、株主資本や企業利益の最大化を目的とする行き過ぎた利益至上主義・株主資本主義に限界が見えてきた。これに変わって注目を集め始めているのが「インパクト投資」という考え方である。簡単に言えば、企業が市場競争の中で優位に立ち、企業価値を長期的に向上させるためには、企業自身が社会的課題を解決するという一定の責任を果たしていくことが大切であるという考え方である。つまり社会的課題解決型企業こそが、社会とともに、長期的・継続的に企業価値を共創できる存在と位置づけ、ESGに取り組む企業に積極的に資金を投資して、投資リターンを追求しようとする投資スタイルがインパクト投資といわれるものである。
 日本最大の機関投資家でもあるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もここ数年、ESG投資を重視し、運用委託先の金融機関に対して、ESGを考慮した投資運用を行うよう求めて始めています。
 世界の機関投資家がESGを投資プロセスに取り入れはじめた契機となったのが、2006年国連が提唱したPRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)といわれています。その後2008年のリーマンショックを経て、短期的利益を追求する投資スタイルに批判が高まるとともに、このPRIに賛同して署名する機関投資家が増加しました。2017年4月時点で1700を超える年金基金や運用会社がPRIに署名しており、これら機関投資家によるESG投資の運用資産残高は17兆ドル(1800兆円)に達している(GPIFホームページ)という。
 2015年9月国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:「SDGs」)では、貧困撲滅、格差是正、健康と福祉、気候変動対策など世界を変える17項目の開発目標が明記された。世界のグローバル企業はこの開発目標を強く意識し始め、自らの事業に関連の深い開発目標の課題解決に積極的に取り組む姿勢を強めつつ、ESG投資を呼び込もうと動き出している。ESG投資は21世紀型成長企業の原動力になる可能性を秘めているように思う。今後の動向に注目だ!

 

 

不易流行其基一也

     
俳聖・松尾芭蕉が「奥の細道」で体得した概念と伝えられる。
その意味するところは、「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず、しかもその基は一つである」ということである。

 平たく言えば、「不変の真理を知らなければ基礎が確立せず、変化を知らなければ新たな進展はない。しかもこの不易と流行の根本は一つである」という思想である。
 我々はこの「不易流行」(ふえきりゅうこう)の思想こそ、政治・経済・社会を見るときの心眼とすべきではないかと思う。特に企業経営の現場では、この「不易流行」の思想こそが企業経営の発展の法則であると確信するものである。この世に生きるあらゆる生物界において生存競争に勝ち抜く生物は、強い生物ではなく、環境の変化に対応できる生物であるとはよくいわれるフレーズである。イトーヨーカドー(現セブン&アイホールディングス)の中興の祖と称される鈴木敏文氏も、企業存続の本質を「経営とは変化対応業である!」喝破している。

 ドックイヤーと言われて久しい今日の社会の変化は、インターネット・ブロックチェーン・IOT・AI等の登場でますますそのスピードを加速しているのだが、たとえそうであったとしても物事の本質には必ずや普遍性が備わっているという真理は変わらないはずである。もって、何が大事なのかという真理・理念を探求する姿勢を忘れてはならず、いたずらに流行に乗ろうとしても、それはやがて徒労に終わるだけであるということを我々は肝に銘じておきたいものである。

 

 

仮想通貨はデジタル時代の鬼っ子か?

 所得税の確定申告の時期が到来した。今年の申告で注目されているのが「仮想通貨」により稼得した所得の申告である。平成29年はビットコインが急騰したことは記憶に新しいが、高値で換金化して得た利益は雑所得等として課税される。

サラリーマン諸氏の中にも思わぬ稼得にあずかった人が結構いるのではないかと思われるが、サラリーマンの場合、例年は会社の年末調整を済ませれば他に所得等がなければ申告不要となる。しかし平成29年中に仮想通貨取引で20万円以上の利益を得た人は、今年は申告が必要となるので要注意である。

 

 ネット上で密かにやっているので、税務署には分からないだろうと高をくくっていると怪我のもとである。実はネット上で取引される仮想通貨ほど把握しやすい取引はないのである。国税当局は仮想通貨取引業者を通じて全ての取引を一網打尽にすることができるので、3月の申告期限後は一斉に申告漏れの調査を実施することが予想される。心当たりのある人は申告漏れのないよう留意すべきだろう。
 さて、すい星のごとく登場してきた感のあるビットコインやイーサリアム、リップル等の仮想通貨は、デジタル時代の通貨といえるのだろうか?この点は大いに疑問である。

通貨と呼べるには次の4つの利点を備えていなければならない。一つめが、いつでもどこでも何とでも交換できること(価値交換)、二つめが、細かく値付けできること(価値分割)、三つめが、値打ちを貯めておけること(価値保全)、四つめが、利の子を産むこと(価値生産)である。この利点に照らしてみると、これら仮想通貨は、一つめの価値交換面で通貨としての機能が著しく不足している。ビットコインが急騰する局面では、だれもビットコインを使って支払いすることはないだろうし、逆にビットコインが急落する局面では、だれもビットコインでの受け取りは回避するであろう。これでは、支払手段としての通貨の役割は果たせない。また、価格が常に上下に乱高下して安定しない状態では、価値を保全するという通貨としての機能も果たせないことになる。日銀の黒田東彦総裁は、最近の記者会見で、ビットコイン等の「仮想通貨」は、通貨と呼ぶよりも「仮想資産」と称すべきではないかと意見表明しているほどである。国際決済銀行やグリーンスパン元FRB議長なども、仮想通貨の根源的な価値はゼロとみているようだ。


 やがて、中央銀行やメガバンクが関与した法定通貨や固定レートタイプのデジタル通貨が登場することも予想されるが、少なくともしばらくの間は、現在の「仮想通貨」は、投機性の極めて強い「仮想資産」とみるべきであり、やがてネット上の「幻想資産」となって雲散霧消してしまうデジタル時代の「鬼っ子」なのかもしれない。

見えない不安に悩まされそうな2018年

    2018年、平成30年はどのような年になるのだろうか? いつものことながら新年の劈頭にあったて考えてみた。

・・・が、今年ほど先が読めない年はないというのが正直な感想である。そこで2018年という年の先が読めない要因は何んなのか? ということになるのだが、その最大の要因は、誕生1年目を迎えたトランプ政権であろう。1年前、誰もが泡沫候補と考えていたトランプ氏が、大方の予想を覆して超大国アメリカ合衆国の大統領の座を射止めた。

 その結果、アメリカ第一主義を唱えつつ、締結間もないTPPやパリ協定からの離脱を宣言。NAFTAの見直しや移民取締りの強化、北朝鮮への圧力強化など、次々とインパクトの強い政策を推し進めてきた。直近では、エルサレムをイスラエルの首都と認定して混乱を引き起こし、中東情勢に不穏な種をまき散らす一方、連邦法人税率を35%から一気に21%へ引き下げる大型減税を成立させるなど、瞠目させられる政策を次々と打ち出している。

 他方、次々と有力な側近スタッフを解任したり、ツイッターで不可解な発信を連発して周囲を混乱に陥れる。ロシア疑惑も今後どのような展開を見せるのか予測不能な情勢だ。トランプ政権を巡るこのような異常ともいえる不安な状況が世界に与える影響は計りしれない。早くも世界の注目は、今年の後半に予定されているアメリカの中間選挙の行方に注がれ始めている。そこで、与党共和党が敗北となれば、トランプ政権の命脈は尽きて一期4年で政権は消滅する可能性がある。世界の国々は、今年は不安な目でトランプ政権を見つめつつ、外交の間合いに腐心することになろう。実に不安の根っ子は、不透明な「トランプ政権」の存在そのものなのである。
 しかしながら本家本元のアメリカ国内でのトランプ政権の支持率は、低位水準とはいいながらも、底堅い水準を維持している。意外と固い岩盤支持層が存在していることが窺える。経済的に崩壊寸前にある白人の中間層がトランプ政権を支持している言われている。
表向きはトランプ大統領を批判している者のなかにも、本音では密かにトランプに期待を掛けている隠れ支持者が少なくないというニュース解説も耳にする。8年間オバマ政権が続いた結果、我々日本人には見えない米国市民の分断が顕在化してきているように思える。
 さて、このあたりで我が国の近隣地域に目を転じてみると、2月には平昌冬期オリンピクが隣国韓国で開催される。

だが、この開催期間の前後から北朝鮮情勢は極度に緊迫する事態も予想される。アメリカの本気度が誰の目にも明確になるとの危惧を覚える。さらに北朝鮮問題では何かと中国に期待を寄せていた米国がついに見切りをつけて、中国に対してセーフガードを発動して貿易戦争を仕掛ける可能性もある。イギリスのEU離脱交渉もいよいよ山場に差し掛かる。日本も平成の世がもうすぐ終わる。IOT・AIの時代・ビックデータなどに代表される第4次産業革命時代を迎えるな中、一般人にはとうてい理解できない仮想通貨やICOが誕生し、一気にバブルの様相を呈しつつある。とにもかくにも、今年を見通すには今までの経験値ではとてもカバーできないというのが正直な感想である。ある意味で今年は、不安を抱えたまま目をつぶってでも、一歩前に踏み出す勇気と覚悟が求められそうな気がする。

 2018年1月23日から26日に開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、カナダの若き宰相トルドー首相が演説した内容の一部が日経新聞に掲載されていた。その内容がこの時代を象徴するように思えるので、以下のとおり紹介する。

      「今ほど変化のペースが速い時代は過去になかった。

         だが今後、今ほど変化が遅い時代も二度と来ないだろう。」

 

 

早すぎる世界の動きや技術の動きに、日本はついて行けるかな?!

 北朝鮮が「沈黙の75日間」を破り、11月30日深夜ICBM級とされるミサイルを発射した。ロフテッド軌道で発射された高度は4475㎞に達し、通常軌道であれば確実に米国全土を射程内に収める飛距離性能を有すると目されている。

北朝鮮は猛烈な勢いで「国家核戦力完成」を目指しているのは明白だ。

 今後米国がどのような反応を示すのか?大きな懸念を孕む。極東に火の手があがれば、日本は確実に戦火に巻き込まれる。北朝鮮も中国も、日本を標的にしたミサイルを既に十分に配備済みであるからだ。

専守防衛の日本といえば、防衛力強化のため陸上配備型イージス・アショアを2基、秋田と山口に配備する予定だが、配備は2年以上も先の話だ。隣国とはスピード感がまるで違う。

 

 11月29日には米国上院予算委員会で法人税を35%から20%に引き下げる税制改革法案が可決された。

本会議可決までには曲折が予想されるが、法人税率を29%台に除々に引き下げつつある日本は、アッという間に米国に追い越され、先進国で法人税率が一番高い国になるかも知れない。

 

 中国はAI産業を2030年までに世界トップにする計画を明らかにしている。

今やオンライ決済による世界の電子商取引の40%は中国国内でなされているそうだ。アリババ集団・テンセント・百度などのIT企業が主役である。「誰であれ、AI分野のリーダーになった者が世界の支配者となる。」と言い放ったのは、ロシアのプーチン大統領である。中国のAIドローン編隊が日本上空を覆い尽くすのはそう遠くないかも知れない。