6月の大異変! | 経営の勘どころ・つかみどころ

6月の大異変!


 何と今月29日、気象庁は関東地方の梅雨明けを宣言した。平年よりも20日も早い6月中に夏を迎えることになった。こんな些細なニュースでも今月起きた大きな出来事を考えると「異変の予兆」を感じざるを得ない。


 ロシアで開催されているサッカー・ワードカップ。西野朗監督率いるサムライニッポンが大方の予想を覆し、決勝トーナメントに進出を果たしたのは嬉しい誤算にしても、この6月には世界秩序を根底から揺るがしかねない大きな出来事が相次いで起きた。


 6月12日には史上初の米朝首脳会談がシンガポールで開催された。この会談で、米国のトランプ大統領は北朝鮮の体制保証を表明し、一方の北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、完全非核化への取り組みを約束したという。現在のところ米朝ともに細部の交渉を開始したばかりで、着地点は見通せないが、中国、ロシヤ、韓国の首脳が相次いで会談を繰り返すなど、北東アジアの安全保障環境は急速に地殻変動が起きつつあるように感じられる。仮に将来、米朝が国交を回復して、在韓米軍撤収と南北朝鮮統一に動き始めると、今までの日米韓による対中国・北朝鮮防衛ラインを維持することは不可能となり、対馬海峡を日米(若しくは日本単独で)の新たな防衛ラインとする根本的な国防戦略の再構築を迫られる可能性がある。


 米朝首脳会談の直前に開催されたG7サミットでは、トランプ大統領の掲げる保護主義政策に他の6カ国の首脳が反対を表明。特にEUとアメリカの貿易を巡る対立が一気に際立ってきた。すでにトランプ大統領は、米国の国内法・通商拡大法232条に基づき、中国・日本などに対して鉄鋼・アルミに25%の制裁関税を課しているが、これをEUにも拡大すると表明。メルケル首相の神経を逆なでした。
 中国には、約500億$相当の制裁関税を課すことを決定。中国が同額の対抗措置を決めると、さらに2,000億$相当の追加制裁関税の検討を指示するなど、米中貿易戦争の様相が日増しに高まっている。トランプ大統領の鼻息は荒く、輸入車や自動車部品にも25%の制裁関税を課すことまで言及しており、EUも対抗措置としてアメリカのハーレーダビットソンに同率の関税を課す可能性は示唆している。


 イランに対しては原油輸入禁止を同盟国(日本を含む)に要求し始めており、中東地域でもきな臭さい空気が漂い始めている。
 平和とは互いの信頼関係がなければ実現しないし、維持することもできない。今、世界はこの信頼関係にくさびが打ち込まれ、深刻なひびが入りつつあるようだ。あとに続くものは、疑心暗鬼と不信だけである。これがある時に沸騰点に達したとき、おぞまし憎悪の化身たる「戦争」が始まるのであろう。


 幸いに日本では、6月29日にTPP関連法案が参議院で可決成立した。7月中には、国内手続きを終了して、11カ国からなる巨大自由貿易圏の発効に大きく前進することになった。既にメキシコが批准し、カナダ・ニュージーランド・オーストラリアも年内比準に動いている。TPPには、タイ・インドネシア・英国も加入に意欲を示しているので、TPPの早期発効と加盟国拡大が保護主義の台頭を抑える役割を果たすことが期待できる。安倍首相は、あわよくばトランプ大統領に翻意を促し、アメリカのTPP復帰を願望しているのでないかと思われる。


 経済と安全保障は表裏一体の関係にある。経済にあっては自由貿易主義VS保護貿易主義の対立。安全保障では新冷戦か?と揶揄されつつある米国・EUVSロシア・中国を中心とする対立軸の形成。この二つの世界秩序を揺るがす構造変化が、耳障りな軋み音をハッキリトと立て始めたのがこの6月ではなかろうか。