前回の記事で論点を考える重要性を書きましたが、難しいのは、「自分の言いたいこと」ではなく「相手の知りたいこと」を論点にしなければならないということです。

よく陥ってしまう過ちは、自分で何か調べてわかったときに、その「自分がわかったこと」を伝えようとしてしまうことです。

しかし、これはコンサルに限らず一般企業で資料を作成する場合も同じですが、重要なのは「相手が何を知りたいか」です。例えば、稟議書等で上司や役員の決済を仰ぐとき、そこに書かれるべきことは、相手が判断を下すうえで必要な情報であって、自分がそこで何を伝えたいかではないのです。

相手の聞きたいことと自分の言いたいことが一致すればいいのですが、だいたいの場合はそうはならず、相手に説明した時に、「よくわからない資料だなあ」とか「で何が言いたいの?(言いたいことを書いているにも関わらず)」という反応が返ってくることになってしまいます。

コンサルの場合は、クライアントが知りたい答えが論点となるのですが、論点を特定していくのは、シニアなコンサルタントも日々悩む、非常に難しいことです。

正しい論点を設定し、その論点を意識して自分のワークを進め、論点に答えるアウトプットを出すという、この一連のことを日々繰り返すことしか、自分のスキルを高めていく方法はなさそうだと最近感じています。

プロフェッショナルな世界は概ねそうだと思うのですが、何か明文化されたノウハウがあるわけではなく、先生や師匠につきながら、その技を盗み取っていって、自分のものにしていかねばなりません。

入社してちょうど7ヶ月が過ぎましたが、少し新たなステージの挑戦が始まった感じがしています。

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やっぱり論点を考えることは大事


前回の記事において、プロジェクトを進めるにあたっては、インタビューや自分の足で稼いで得たファクト(事実)が重要であり、高い付加価値を生むことが多いと書きました。

しかしこれは、「どのような問いに答えようとしているのか」が、正しく、かつ明確になっていることが前提です。そうでなければ、例えばインタビューを実施したとしても、全く付加価値を生むことはできなくなります。なぜなら、相手に正しく質問ができないし、またインタビューの結果を価値のある形でまとめることもできないからです。

この「どのような問いに答えようとしているのか」が、いわゆる「論点」と言われるものですが、コンサルの仕事を進める上では、論点を意識して仕事をすることが非常に重要です。

ただし、論点を意識するというのは非常に難しいことです。日々が、論点を意識してそれに沿ったアウトプットを出すための挑戦です。

過去の経験からの蓄積知識があれば、ビジネスセンスを働かせて何が課題となりそうかについて、ある程度の当たりをつけることはできますが、それをやっていると、未知の分野のプロジェクトに入った場合に、全くアウトプットが出せなくなります。

一方で、何に答えるべきかという大論点を理解したうえで、それに答えるにはどういう要素が必要かについてロジカルに分解していくスキルが身についていれば、たとえ業界が違えど、ある程度までは、共通のアプローチで進めていくことができるようになります。

私のようにある程度のビジネス経験があるコンサルタントにとっては、わかっていること(知識)を積み上げて、そこから課題を見つけていく思考パターンになりがちなのですが、何に答えるべきかという大論点からブレークダウンして課題を整理していく思考パターンに切り替えるのが重要になってきます。

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事実(ファクト)を捉える難しさ




以前の記事で、今ある知識をベースに仮の答え(仮説)を立てることが大事であり、それをサポートする事実を見つけるために調べ物やインタビューをすると書きましたが、コンサルタントにとって、この「事実を見つける」というのは非常に重要な仕事の一つです。

例えば、プロジェクトを進める中で、事実の弱い地に足着かないふわふわした議論をしていると、シニアのコンサルタントの方から「ファクト!とにかくファクト!」と注意されます。

また、BCGの元日本代表で現在ドリームインキュベーター会長の堀紘一氏が最近書いた「コンサルティングとは何か」(下記参照)という著書においても、「コンサルタントが拠り所とすべきは、あくまで事実だけだ。事実にもとづいて論理によって物事を設計するのがコンサルティングの本分だ。新鮮な事実を発掘して、それを論理に落としていくのが、コンサルタントに最も求められていることだ 」と書かれています。まさにその通りなのです。

ただし、この「事実を見つける」というのは案外大変で、時には非常に泥臭い作業が必要となります。よく戦略コンサルティング業界に対して、派手さやかっこよさというイメージが持たれるのですが、仕事のベースとなるのはこういった地道で泥臭い作業が多いのです。

さて、事実を見つけるのに一番簡単なのは、新聞や雑誌の記事、あるいは企業のHP(ニュースリリースや決算資料、アニュアルレポート等)から探し当てるというものです。しかし、立証したい仮説にストレートに刺さるものを見つけられれば幸運なのですが、そういったことは稀で、そうでなければ、状況証拠的というか、周辺から固めていくような「やや甘い事実」となってしまいます。

ちなみにGoogleなどでWebからブログなどを検索したりするのですが、記事の信憑性という観点からは少し落ちてしまうので、ブログなどを手がかりに、その情報ソースを当たりにいくというやり方をしていきます。

問題は、記事などでは調べられない(あるいは見つからない)内容を調べたいときです。こういった場合は、インタビューをして話を聞くか、あるいは自分の足で調べてくるしかありません。

インタビューといっても、まずは電話で聞くことからはじめるのですが、これはいわゆる「突撃電話(=迷惑電話)」に近いものです。調べたい業界の企業の担当者や、あるいは本を書いたり講演などをしているエキスパートの方に電話を掛けるのですが、大体の場合に冷たい対応をされるため、「コールド・コール」といわれているくらいです。

ただ、今回のプロジェクトで私も何度かインタビューを行いましたが、比較的確率高く、相手のかたからちゃんと話を聞かせていただくことができましたし、また実際に会って話をしてもらうアポも取れたりしましたので、このあたりは「年の功」が効いているのかもしれません(^ ^)v

あと、もう一つが自分の足で調べるというパターンです。消費者行動の調査などはこのパターンが多く、お店の中でじっと消費者を観察する、あるいはお店でどのような売られ方をしているのか売り場や店員を観察するといった類のことをします。あるいは消費者インタビューをして、声をかけてちょっと話を聞くといったことで、事実を積み重ねていくのです。

消費者調査のような場合、こうやって書くと、「たかが数人~数十人の意見を聞いたところで、サンプル数としては少なすぎるではないか」という反論があるかもしれないのですが、我々の仕事はアンケートのような統計調査をおこなっているのではなくて、あくまで仮説を立証するための証拠を探しているので、このくらいの数でも、仮説をサポートするのに十分な場合がほとんどです。

もし本当に統計的なデータがほしければ、数百人~数千人規模のアンケートを実施することもあります。さすがにこれは外部の業者を使いますが、この時でも、アンケート項目だけは必ず自分たちで組み立てます。

さて、長くなってしまいましたが、いずれにせよ、こうやって足で稼いだ生の情報が、プロジェクトの中で非常に価値の高いものとなり、クライアントに対しても非常に説得力のある材料になります。なので、事実を捉えるというのはコンサルタントとして非常に重要な仕事であり、そのためのスキルは、基礎中の基礎として必要とされるスキルなのです。

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★参考図書
元BCG日本代表で現在ドリームインキュベーター創業者の堀紘一氏が、戦略コンサルティング業界に関する歴史や誤解、高いと言われるフィーの仕組み、コンサルタントに求められる資質・能力、コンサルティングファームを使いこなす経営者の覚悟などについて、筆者の30年を越すコンサルタントとしてのキャリアに基づいて書かれている。
前回の記事では、今行われている節電対策について、ロジカルに考えた時にあまり意味のないことが、ズルズルと行われていると書きました。

例えば、深夜の節電がそれにあたります。

そもそも深夜は電力が不足していません。そして夜中の余った電気の大部分は蓄えることができません。もちろん揚水発電のように、夜間の電力を利用して昼間の電力ピークに備えるような方法も行われているのですが、そういった備えにフルに電力を使ったとしても、深夜に電気は余っています。つまり、深夜の節電は「ピーク時の電力を抑制する」という目的からすると、あまり意味のないことになります。

そう考えると、夜10時を過ぎたならば、例えば24時間営業をしているコンビニや深夜までやっている飲食店などは、堂々と看板の電気を付けてもいいわけです。しかし、実際はそういう動きにはなっていません(一部の店舗では自主判断でやっていますが・・・)。なぜこのようなことが起きているのでしょうか?

考えられる理由は2つあって、1つは、社会全体で見たときに、自分たちのやっている節電にどれほどの意味があるかどうかは、一企業では判断できないということです。つまり、全体のなかで意味があるかどうかはわからないけれど、やらないよりはやったほうがいいだろうということで、節電の取り組みを行うわけです。

もちろん、デメリットが全くないならばそれでもいいのですが、節電によるデメリットが存在する状況では、効果とデメリットを天秤にかけて判断することが必要になります。

それともう1つの理由は、「節電しなければ」という社会的風潮があるなかで、仮に全体像が把握できて節電を行う意味が薄いとロジカルに判断できたとしても、節電を実施しないことで企業として社会から批判を浴びるリスクがあるということです。

このように考えると、今回の節電対策のように社会的に重要かつセンシティブな問題に対しては政治的なリーダーシップが重要であり、各企業の判断だけでは対応がしづらいのではないかと思います。

ただ、残念ながら現状では、政府がこのようなリーダーシップを取っているようには見えません。政府は節電担当相を指名したりしていますが、節電に関しては、ロジカルなアプローチをしているというよりは、政治的パフォーマンス色が強いように思えてしまいます。

また石原都知事が、自動販売機やパチンコ店の営業を考え直すべきと言っていましたが、これは、メリットデメリットを考えた上での、最優先の対策なのでしょうか?効果のインパクトなどは考えずに、単に目の前にあるから、あるいは目立つからという理由(あるいはそれ以外の政治的な理由)で挙げられているだけではないでしょうか?

「自粛」という言葉が多く語られているように、日本の社会は論理よりは情緒によって流されやすい国民性・文化を持っています。そういう中で、最小のリスクで夏の電力不足を確実に乗り切るために、冷静かつ論理的に諸対策のメリット、デメリットを見極め、どのような節電対策を優先的に取り組むべきなのか、逆に優先度を下げても良いものは何なのかについて、理由と共に明確なメッセージを社会に伝えることこそが、政府に求められていることだと思います。

ロジカルに節電対策を考える(1)

前回の記事で、ロジックに基づいてストーリーを展開する力について書きましたが、ロジカルに考えたときにどうも腑に落ちないのが、電力不足に対する節電対策です。

誤解があってはいけないので先に書きますが、節電が不要であると言う意図は全くありません。逆に、夏場にかけて電力需要が供給を上回ることがほぼ確実な状況であり、社会全体として節電に取り組む必要があると思っています。

一方で、電力というのは社会インフラであるがゆえに、節電が経済活動を停滞させたり、時には生命を危険にさらすリスクもはらんでいます。

つまり、節電対策を考える際には、それ行うことによるメリット(節電効果)と、デメリット(経済停滞リスクや社会へのリスク)の両方を考えて、どの対策を優先的に取り組むべきかを判断しなければなりません。

別の言い方をすれば、横軸に節電効果をとり、縦軸に経済活動や社会活動への影響をとって4象限のマトリックスを書き、考えられる対策をプロットして、メリットが大きくデメリットの少ない対策から優先的に行うのが良いということです。

こう書くと簡単なようなのですが、では、横軸(メリット)と縦軸(デメリット)は、それぞれどのように評価すればいいでしょうか?

横軸のメリットを考える際には、ある施策が全体の電力需要に対してどの程度のインパクトを持つものなのかを判断する必要があります。そのためには、電力需要、しかもピーク時の電力需要の内訳の全体像を把握する必要があります。

ここで「ピーク時」と書いたのは、電力が足りなくなるのは夏場のピーク時(昼間)であるからであり、平均的な電力需要ではなくて、ピーク時にどういった分野でどのくらい電力が使われているのか把握する必要があるということです。容易に想像がつくのは、夏場においては、ピーク時と平均時の電力需要の差はほとんどがエアコンによるもので、かつ商業施設やオフィスによるものの割合が高いのはないかということです。

一方の縦軸のデメリットについては定量化が難しく、定性的でやや主観的な判断になるかもしれません。例えば、病院の医療機器をストップすると、患者の生命は危険にさらされます。また、通勤の足として利用されている鉄道をストップすれば、社会全体に大きな影響を与えます。一方で、冷暖房の設定温度を1℃控えめにするというのは、少々の不快感が生じ人によっては仕事の生産性が落ちたりするかもしれませんが、それは我慢すれば済む話です。

ただし、全てのエアコンをストップして、真夏のオフィスのなかで人が熱射病で倒れたり、満員電車の中で人が倒れたりするような事態になれば、それ大きな影響となります。そういう意味では、「1℃エアコンの設定を控えめにする」というのと、「全くエアコンを使わない」というのは、全く別の施策として、別の位置にプロットされるでしょう。

このような判断のもとに、考えられる施策についてプロットをしていけば、何を優先的に実施すべきかが明確になります。

上にも書いたのですが、おそらく、社会全体を通じてエアコンの設定温度を去年よりも2~3℃控えめにすることが最も優先度の高い対策となりそうで、この夏は少し暑さを我慢するしかなさそうです。(ちなみに余談ですが、冷房を控えることで真夏のヒートアイランド現象が少しは緩和され、思ったよりも過ごし易い夏になったりしないかと、ちょっと期待しています。。。)

さて冒頭の話に戻しますが、ロジカルに考えていった場合に、今行われている節電対策について、「果たしてそれってやる意味があるの?」ということが、あまり検証されずにズルズルと行われていることも目につきます。

これについては、次回の記事で書きます。