今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。
好きなピアニスト、クレア・フアンチの新譜が発売された(Apple Music)。
曲目は、バッハ/ブゾーニのトッカータとフーガ ニ短調(ピアノ版)、およびバッハのトッカータ全集(ピアノ版)である。
詳細は以下の通り。
Bach: Toccatas
Claire Huangci
J.S.Bach: Toccata and Fugue in D minor, BWV 565 (Arr. for Piano by Busoni)
J.S.Bach: Toccata in G Minor, BVW 915
J.S.Bach: Toccata in E Minor, BVW 914
J.S.Bach: Toccata in C Minor, BVW 911
J.S.Bach: Toccata in G Major, BVW 916
J.S.Bach: Toccata in D Minor, BVW 913
J.S.Bach: Toccata in F-Sharp Minor, BVW 910
J.S.Bach: Toccata in D Major, BVW 912
以上、Apple Musicのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。
バッハ/ブゾーニのトッカータとフーガ ニ短調(ピアノ版)で私の好きな録音は
●バリーニ(Pf) 2005年セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2)
あたりである。
しっとりとしたバリーニ盤に比べ、今回のフアンチ盤はペダルが薄めで歯切れよい。
前者がオルガン風、後者がチェンバロ風といったところか。
出来としてはほぼ匹敵すると思う(原曲がオルガン曲だけに、前者のほうがやや合っているかもしれないが)。
バッハのトッカータ全集(ピアノ版)で私の好きな録音は
●シモニアン(Pf) 2011年11月7-9日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube)
●サヴァリー(Pf) 2013年4月2-4日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
今回のフアンチ盤は、これらを凌ぐ出来。
歯切れよいがときに歌に乏しいシモニアン盤、しっとりとしているがときに足取りが重いサヴァリー盤、それぞれから良いとこ取りしたような、完全無欠の演奏である。
若きバッハの覇気が漲るトッカータ集は、バッハ作品の中でもとりわけフアンチに向いており、ここでの彼女の演奏の活きのよさは、まさに水を得た魚のよう。
全集でなく曲ごとにみると、ハ短調BWV911は中川真耶加(動画)、ニ長調BWV912はラ・サール(YouTube)、ト長調BWV916は古海行子(動画)の演奏が上の2種の全集以上にお気に入りだが、今回のフアンチ盤はこれらにも引けを取らないものとなっている。
中川真耶加、ラ・サール、古海行子はレガート主体のピアニスティックな演奏であるのに対し、フアンチはノンレガートやスタッカート主体のチェンバロ風要素を取り入れた演奏であるのが特徴。
どちらの解釈も素晴らしく、甲乙つけがたい。
ともあれ、全集録音としての完成度は比類ない。
名盤が少ないだけに、よくぞこの曲集を録音してくれたものと思う。
バッハのトッカータ全集が欲しいという人には、チェンバロ版であれば鈴木雅明盤を(その記事はこちら)、ピアノ版であればこのフアンチ盤を、決定盤としてまず最初にお勧めしたいと思う。
Bach: Toccatas - Claire Huangci - YouTube
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=Jcv5GPJQXl0&list=OLAK5uy_mPT-3J3xxxOpdFs5NGzXhXdP24pXggKqw
なお、クレア・フアンチのこれまでのCDについての記事はこちら。
(クレア・フアンチの3rdアルバム「A Chopin Diary」)
(クレア・フアンチの新譜 シューベルト/カバレフスキー ピアノと管弦楽のための幻想曲へ短調)
(クレア・フアンチの新譜 パデレフスキ ピアノ協奏曲 ショパン ピアノ協奏曲第1番)
(クレア・フアンチの新譜 ラヴェル ピアノ三重奏曲 ショーソン ピアノ四重奏曲)
(クレア・フアンチの新譜 ベートーヴェン/リスト 交響曲第6番「田園」)
また、クレア・フアンチの演奏会記録についての記事はこちら。
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