イノベーションを科学する: フューチャーセンター、ゲームストーミング、サラサラの組織、事務局力、コミュニティ・オブ・プラクティス -6ページ目

第四話: 仕事を入れ替わっちゃえ

「ジロー、ジロー、こっちこっち」
缶コーヒーを買いに行くと、打合せコーナーでノートPCを開いて仕事をしていたユリが、顔を上げて声をかけてくる。
「おぅ、ユリ。メール見たか?」
「もちろんよ。すっごく目からうろこのアイデアよね」
ほめられると、悪い気はしない。
「お、そう思う? いつでも飲み会に巻き込んでやるよ、覚悟しな!」
「まー、まー、ちょっと待ってよ。落ち着いて」
「落ち着いていられるかよ、グッドアイデアは早く実行しないとねー」
「そんな単純な問題ではないのよ」

ユリの表情が思ったよりもずっと真剣であることに、ようやくジローは気付いた。
「ジローのメール、すごくうれしかったよ。助けてくれる、という気持ちがすごく伝わってきた」
お、いきなり熱い言葉。とまどうじゃねぇか。もしかして、モテてるのか?オレは。
「いつでも相談に乗るよ。オレでよかったら」
照れ隠しにコーヒーを一気にあおる。勢いで、最後の数滴があふれ、ワイシャツに染みを作った。マジ、だせー。
「ありがとう、ワイシャツに染み作ってまで、元気づけてくれて」
違う、違う、わざとじゃないよ。見られてたとは、やっぱり格好悪ぃ。
「小沢君」
お、何かしこまってんだよ。

ユリは、すっと息を吸い込んだ。ジローはまだ、ワイシャツの汚れを気にしている。
「私と仕事入れ替わってくれない?」
「。。。。は?―――意味が分からない。どういう意味だ?」
ユリの表情がややいたずらっぽくほほ笑んだ。右の唇が少し上がっているから、きっと何か悪だくみをしているに違いない。

「ジローに頼みたい仕事は、ダイバーシティ委員会の事務局、女性だけで商品開発しようというプロジェクトXの事務局、それからいつも私が一人でやっている部屋の後片付け。この三つをまとめてお願いしたいの。私が女性だという理由だけで、押し付けられている、裏方仕事ばっかり。もう、たまんない!」

ふぇ―――、そうきたか。確かにたいへんだとは思うけどね。それにしても、オレにとっては、女性ばかりの活動っていうのも、なんだか悪くないかもね。ヨシッ
「オッケー。任せてみなさい」

あれ―――?本当にいいの―――?ジローってこんなにお人よしだったっけ?なんだか悪くなっちゃったな。押し付けたみたいで。
「本当にいいの?事務局ってつまんないし、雑用ばかりだよ」
「何言ってるんだよ、事務局って、結構面白いんだぜ」
「強がり言っちゃって」
「ま、見てなさいって。面白くなって、その仕事返して―――って泣きついたって遅いぞ」
「そうなることを祈ってるわ。まずは引き継ぎね、サッサッとね」

そうは言ってしまったが、本当に事務局って、おもしろくできるのだろうか・・・。

ワールドカフェで「川越胃腸病院」について話しました

全然知らなかったのですが、「川越胃腸病院」は、すごい理念経営らしいです。

今日は、集まった20人強のメンバーで一緒にまず、Do It!の「川越胃腸病院」ビデオを見て、そしてこの病院の理念理念・運営・行動規準などについて、「何が共感した?」「しなかった?」「どう自分に活かせる?」といった対話をしました。

病院なので特殊、と割り切ってしまう人も多いかもしれませんが、さすがにワールドカフェに集まる、超前向き、超よく考えている皆さんとの対話は、「院長の経営は究極の成果主義、それは愛だ」とか、「胃腸患者にセグメントを絞ることで最先端機器への投資もでき、ベッド一床あたりの医師数も多く、給与も高い状態を作り上げている」といった、経営センスの良さなどへと発展しました。

非常に面白いな――と思うのは、「病院もサービス業になる」と、これは病院がビジネスから学ぶ、という意味だと思うのですが、一方で、こと「理念経営」に関しては、やはりビジネスが病院などの社会セクターに、もっともっと学ばなければいけないんだ、ということです。

最後に、川越胃腸病院の望月院長は、何をやったのかという考察。あらゆるスタッフに、「裏方の価値観を徹底した」のではないでしょうか。
ワールドカフェの対話の中で出た意見ですが、「営業のような結果が数字で出る仕事であれば、トップが価値観を言わなくても、良いものが残るかもしれない。でも、結果が数字に出ない仕事だと、トップが言わないと、良いものが居心地悪くなって淘汰されてしまう」というのが印象的でした。
つまり、「患者様が喜ぶ」を継続的なCS調査で数字化しようという努力に加え、「患者様が喜ぶ顔を見れば、その人がいい仕事をやっていることはわかる」という価値観、文化を時間をかけて植え付けたのでしょう。

ビデオを一緒に見てからワールドカフェをやる、というのは、なかなかいいですね。本を読んでくるというのとくらべて、俄然イメージが共有されているので、話がずれません。近いうちに、ビデオをとりいれた対話セッションというものを自分たちでも試してみたいと思いました。

社会を変える「ヴァーチャルな事務局」を開く

私たち一人ひとりは、自らの意志で社会を変えられるのだろうか

たとえば、「途上国の人たちの生活を改善する」ということは、国家や国連、世界銀行などが長期にわたり、必死にやってきても解決していない問題。こんな大きな問題に、立ち向かう勇気が、私たち一人ひとりに、どうやったら生まれるのだろうか?
もちろん、寄付をするとか、フェアトレード商品を買うとか、そういった小さな一歩も大きな意味があるだろう。しかし、そうしていても、大きな「有力感」(無力感の対語)を感じることは難しいと思う。

では、「裏方ほど!」で提起した、「事務局力」は、こういった大きな社会問題に対して、何か新しいアプローチがとれないのだろうか?―――それが、このところ私自身の個人的テーマとして、いつも頭の中にある問いだ。
「裏方ほど!」の中で、“社会を変える「ヴァーチャルな事務局」を開く”というアイデアを提示している。それは今、私自身の活動として、めざしていることの本質なのではないかと思う。

1. KDIというコンサルティング事業では、大企業の変革リーダーを集めて、「日本の未来」や「新たなイノベーション領域」について、つねにダイナミックな議論をしている。企業を超えた対話の場も活発に開いている。ビル
2. 国際大学GLOCOMというアカデミックな場では、プラカデミアサロンという、プライベートセクターとソーシャルセクターの人たちが本音で話し合う場をつくっている。学校
3. そして、これらの活動の内部のような、接点のような、あるいは大きく外れたところのような、いわば浮遊した領域で、今はコミュニティ・トレード事業を立ち上げられないかどうか、週末の度にフェアトレード・ショップを訪れたり、関係者と会ったりしている。走る人

こういう活動が、つながってくる感触を少しずつ感じ始めている。ぷつっと切れてしまうかもしれないが、たくさんの糸をたぐりよせていけば、どれかが引っ掛かって、スパイダーマンのように世界を変えられるかもしれない

コンサルティングの力を使って、大企業の長期戦略と、途上国でのビジネスの関係をつける。アカデミックな場を使って、CSRの新しいトレンドを発信する。そして、社会起業家たちとの人脈を使って、新しい発想でのビジネスモデルを構築する。そして、大企業も協力して、新しい社会イノベーションを皆で起こしていく。
その担い手となるヴァーチャルな事務局になれたら、こんなに嬉しいことはない。

アントレプレナーセンターの『国際救助隊』

たまげたビジネスがある。
福島正伸さんのアントレプレナーセンターがやっている、『国際救助隊』だ。

国際救助隊隊員になりたい人は、1,000円を払って入隊する。そして、次の十カ条を守るという。
人類の未来のための十カ条
【第 一 条】まずは私がやる、先頭に立って行動する
【第 二 条】ピンチはチャンス、前向きな言葉のみを使う
【第 三 条】問題あるところに生きがいを見出す
【第 四 条】手法は100万通り、あきらめない
【第 五 条】何気なくやらない、人類のためにやる
【第 六 条】人を信じ、夢を信じる
【第 七 条】最大の困難に、笑顔で挑む
【第 八 条】他人とは、感謝で付き合う
【第 九 条】人生のすべてを楽しむ
【第 十 条】最大の報酬は、感動の涙


さらに笑えるのは、『国際救助活動』を行っても、自分が国際救助隊員であることを明かしてはならない、という掟だ。その内容や成果は、国際救助隊専用サイトにのみ、他の隊員に公開し自慢することができるというのだ。

これは、「裏方ほどおいしい仕事はない!」(今日あたりから書店に並び始めているはずだ)
$「裏方ほどおいしい仕事はない!」―――― 「事務局力」で会社を動かす-urakata-hyoushi
で、何度も何度も強調している、
・「雪かき仕事」を見つけて率先してやる
・ほめてもらおうとせず、黙々とやる
・他人のために仕事をする

ことの重要性、それを明確な「世界観」として表したものだ。

福島正伸さんは、このビジネスを「世界観ビジネス」と呼んでいるそうだ。すごい先見性だ。
以前紹介したJOYWOW大使とあわせて、要注目のビジネスモデルである。

変革プロデューサ育成

国際大学GLOCOMのイノベーション行動科学プロジェクト。私自身が立ち上げた、イノベーションを「人の行動」で説明しよう、という学問分野だ。

この領域で今、企業の改革、組織横断の変革、新規事業の創造などといった、既存のやり方では実現し得ない新しい仕組みを構築するひと、いわば「変革プロデューサ」の行動原理を明らかにしよう、という研究を行っている。

今朝、そのプログラムのスポンサーシップをある企業にお願いに行った。ベテランの変革プロデューサたちを前に、彼ら自身の変革活動にヒントを与えられること、そして彼らの活動を暗黙知で終わらせずに、体系化された行動原理として残していくことによって、後輩たちに変革プロデューサとしてのノウハウを残していける、ということをアピールした。

さまざまな意見交換のあと、変革プロデューサの一人が言った。
「おれもあと会社にいるのは、8年くらい。この経験を後に残せるっていうのが、おれには一番うれしいよ」、と。

そう、人は自分の経験を残したい。得た知識を誰かに伝えたい。それは表の成果だけではなく、裏でどんな汗をかいたか、どんな苦労をしたか、どんな工夫をしたか、どんな小さなことに喜んだか、といった、まさに裏方仕事の喜びを残したいということなのだろ思う。

変革プロデューサの仕事のほとんどは、実は裏方である。そこに光を当てたい。

第三話: 社内で生きるか、社外で生きるか?

小池さん

メールをもらって、びっくりしました。
正直なところ、ユリが悩んでいるなんて、
*まったく*思ってもみませんでした。

ユリは仕事は早いし、大事な仕事も任されているし、
社外で人脈も築いていて、プロフェッショナル志向で、
自分のキャリアをきちんと描いていると思います。
本当に、うらやましいと思っています。

オレの問題は、社内の雑用係になってしまい、
その便利さ故に、経営企画部から出してもらえないが、
かといって期待されているわけではない、という微妙な
ポジションに、正直これでいいのかって迷ってます。

そう思っていたところに、ユリからこういうメールを
もらって、はたと閃きました。
もしかして、オレたちの「いいとこどり」をすれば、
うまく会社を動かせるんじゃないかって!

ユリ→オレ
・社外勉強会、社外人脈を紹介してくれ
・社会・市場動向などの情報源を転送してくれ
・仕事のプライオリティの付け方など、ノウハウを教えてくれ

オレ→ユリ
・社内他部署のキーパーソンと、その人たちのクセや付き合い方を教える
・本部長や部長と飲みに行くときに誘う
・オレに回ってきた中で面白そうな仕事を「ユリと一緒にやる」と言うよ

ちょっとしばらく相互扶助の関係で、
お互いの強みを活かし合ってみないか?
うまくいけば、2人とも今までよりも、
グンと仕事ができるヤツって思われるかも。

今までは、オレのように社内で生きるか、
ユリのように社外で生きるか、という
二つに一つの選択肢があるって思っていたけど、
両方手に入れることができるかもしれないね。

今日から、やってみよう!
ジロー

yuri.koike@O-denki.co.jp wrote:
>
> 小沢ジローどの
>
> 毎日元気そうですね。今日はメールで相談です。
>
> ジローは社内人脈が豊かで、部長にも信頼が厚く、
> いつもうらやましく思っています。
> 私も仕事に自信がないわけではないのですが、
> どうしても自分の仕事だけはしっかりやろう、
> というところにとどまってしまいます。
> 周囲も、そんな私に遠慮してなのか、ジローみたいに、
> 面倒な仕事をどんどん頼まるなんてことは、なし!
>
> 効率的に仕事をすませて社外の勉強会で自分を磨く、
> というのもいいかなと思っていたのですが、
> 会社の中で自分をもっと磨く機会がたくさんできれば、
> もっといいんじゃないかなって迷っています。
>
> 同期のジローだからこそ聞ける、このプチ悩みに、
> アドバイスをお願いします。
>
> ユリ
> ♪=♪=♪=♪=♪=♪=♪=♪
> O電気株式会社
> 経営企画部
> 小池ユリ Yuri Koike

会社には結構『事務局』をやっている人が多い

コンサルティングの仕事でクライアントの会社に行った。打合せの終わりに、おもむろに「裏方ほどおいしい仕事はない!」を出して、「皆さんのような事務局が会社を動かしているんだ、という本ですよ」と紹介した。

「すごく勇気づけられるね、そういう話には」
と言ってもらって、こちらも勇気づけられた。

企業改革、組織変革、イノベーションといったテーマでプロジェクトを支援しているが、こういうプロジェクトには必ず、クライアント側に「事務局」が置かれる。
今日も彼らが言っていたのだが、
「事務局がシナリオを書いて会社を動かせるって本当だと思うけど、実際は、事務局って雑用が多くて、それで終わっちゃうことが多いんだよね」
というのも事実だ。

だが、はっきりしていることは、会社を動かすのは権限を持つ人ばかりではない、ということだ。いつでも「事務局まかせてください!」と手を挙げて、会社を動かす意志を持つことはできる

がんばれ、事務局の皆さん! がんばれ、裏方!

JOYWOW 「あり方」の教科書

JOYWOWの阪本さんに「裏方ほど!」をお送りして、早速メールをいただいた。
阪本さんは、最先端かつ本質に迫るマーケティングのオピニオンリーダの一人であるが、個人の生き方に対する関心が非常に高い。そんな彼に、「裏方ほど!」の「プロジェクトの最終報告会を祭り!にする」というところを気に入った、とコメントいただき、とてもうれしい。

逆に紹介いただいて、びっくりしたのが、JOYWOWが自主製作・販売をしている『「あり方」の教科書』だ。すごく面白いビジネスモデルで、「本を買う」という概念ではなく、「本を買ったときからJOYWO体験が始まる」という経験価値を買う

「経験価値(Experience Economy)」という本で、商品→サービス→経験→変身 と、最終段階は「顧客自身の変身が最大の価値になる」と書かれていたが、このJOYWOWの試みは、きわめてこの説に近い。
この本を買った人は、「JOYWOW大使」になって、毎日この本の指示に応じて「周囲をJOYとWOWの世界に巻き込まなければならない」という使命を持つ。ある意味で面倒くさくもあるが、JOYWOWの世界観とつながって生きていくことができる、というとんでもない喜びを感じられるかもしれない。

このJOYWOW大使は、まさに裏方そのもの。周囲を楽しませ、ワクワクさせる。それが自分自身に喜びとして帰ってくる。

この本がビジネスとして成立するところまで行っているかどうかはわからないが、こういった「世界観を買う」というビジネスモデルは、確実に世の中に広まっていくに違いない。

ちなみに私は、この本が届くのを心から楽しみにしている。自分の世界観が広がることを夢想して。

社会イノベーションを支える裏方仕事

紛争解決学という言葉を聞いたことがありますか?
日本企業で働く人であれば、ほとんどの人が「自分とは関係のないもの」と考えるのではないでしょうか。

もちろん、メインには内戦とか地元住民とのいざこざとか、そういうリスクを抱えた企業が考慮すべきことについて、リスク分析であったりネゴシエーション・スキルについて体系化する学問なのですが、実はこういった視点が日本企業には必要なのではないかと思うわけです。

ディランさんという紛争解決コンサルタントと最近知り合いました。米国人なのですが、欧州で紛争解決学を学び、国連やユニセフで仕事をしていました。今は、日本に住んで、大学で教える傍ら、コンサルティングやトレーニングを提供しています。

彼のコンセプトは、「リスクのないところにビジネスチャンスはない」、「リスクには、ポジティブ・リスク(=機会)とネガティブ・リスク(脅威)の二種類がある」というものです。日本人は、リスクは最小化するもの、できれば避けるモノ、と考えがちなのですが、リスクを避けていると、いつまでたってもイノベーションは起こせない、ということでsる。

そして何より大事なことは、彼の提供している価値は、日本企業に対して「世界観を広げる」支援をしているところにあります。タコツボに入り込んだ組織にとって、仮説の幅を広げることは、何より重要で、かつ何より難しい。例えばグローバル戦略を考えるとき、日米欧、それからBRICSくらいは考えるかもしれませんが、なかなか紛争地域や貧困地域のことは考えに入れないと思います。もちろん、すぐにそういうところでビジネスができるとは限らないので、そこを考えないというのは効率的なのですが、そういった発想を持たないこと自体が世界観を小さくし、仮説や発想を貧困にしてしまっているのです。

これから日本企業にもっとも必要なモノは、広い世界観を持つことだと思います。これを実現する最大の近道は、「社会イノベーションへの関心」です。社会問題、リスクに着目することで、数多くの潜在ニーズや困難にぶつかります。そこで既存の枠組みを超えるためのアイデアが必要になります。つまり、新しいメカニズムを強制発想する、よい機会になるのです。

こういった発想で社会イノベーションに取り組む企業が増えると、日本はもっともっとエキサイティングになるでしょう。その仕掛け人は、「社内社会起業家」の皆さんです。社会イノベーションを社内に仕掛けて、裏方仕事・事務局力を発揮していきましょう!

マイレージやポイントを社会の公器にできるか?

上智大学の岡田先生の主宰しているCSRウォッチ研究会で、今日はサイモンズの斉川社長のお話を聞いた。斉川さんはJALでマイレージカードを立ち上げた本人だが、その頃からの問題意識である「もっとマイルを地域のために役立たせられないだろうか?」「使わなかったマイルをもっと有効に活かせないだろうか?」ということをベースに、新しいポイントカード会社を立ち上げた。

アイデアがすごく面白い。基本的には企業が一方的にメリットを享受してきたポイント制システムを社会に解放しよう、というアンチテーゼだ。
各コミュニティの専用カードをサイモンズカードにすると、顧客はそこで得たポイントをサイモンズ加盟店であればどこでも使える。サイモンズは、顧客情報を分析して店舗にフィードバックする。顧客が翌年末までに使わなかったポイントは、NPOや地域コミュニティに寄附される仕組みだ。カードを発行するコミュニティごとに、どこに寄附するかを選ぶことができる。

ツタヤのTカードなどと似た仕組みであるが、大きな違いは、「サイモンズは黒子であること」、それから「使わなかったポイントは企業に戻るのではなく、社会に還元される」ということである。
斉川さんは、いわゆる社会起業家ではない。れっきとしたビジネスパーソンである。しかし、大企業の都合で作られたポイントシステムに対抗し、地域コミュニティがネットワークすることで対抗する、という心意気はとても共感できる。

地域コミュニティ活性化のための裏方仕事であるが、ポイントカードという大企業にとって都合のよい仕組みを取り上げ、地域に戻してやる、というネズミ小僧的な活動は、企業を出し抜いているという意味で、たいへん痛快である。