ルドルフ・ケンぺ
ツァラトゥストラはかく語りき
曲目/R.シュトラウス
ツァラトゥストラはかく語りき 33:12
指揮/ルドルフ・ケンペ
演奏/シュターツカペレ・ドレスデン
録音/1970、ドレスデン、聖ルカ教会
E: クラウス・シュトルーベン
P:タヴッド・モットレイ
独EMI 3445
1970年代にカラヤンとこのケンぺのR.シュトラウスの管弦楽曲師ュゥが発売されました。小生は当時はアンチ・カラヤンでしたから当然のようにこのケンぺを購入しました。ただし、日本では前週で出ましたが欧米では2-3枚づつの分売で発売されたのでそちらで購入しています。ただ、今では処分してしまい手元には残っていません。そこでCDで買い直しをしたものが手元には残っています。ただ、これも当初はレコードと同じ形で分売で発売されたものです。このレコードはジャケットに惚れて買い直したものです。面白いもので、後で調べてみると米セラフィムでも同じジャケットを使ったものがありました。ただし、こちらは「英雄の生涯」に使われたものでした。ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」は、「神は死んだ」„Gott ist tot“など、それまでの価値観に対する挑発的な記述によって幕を開け、ツァラトゥストラの口を通じて超人、永劫回帰の思想が論じられている四部作から成る「哲学的叙事詩」です。ですから、ツァラトゥストラの方がこのデザインにマッチするのではないでしょうか。
このドイツEMI盤はオリジナルは4チャンネル盤として発売されています。時代を感じますなぁ。SQ方式はソニーが提唱したマトリックス方式です。
さて、この録音EMIと東ドイツのシャルプラッテンの共同制作で実現したものです。この時代、他にはヨッフムのブルックナー交響曲全集も同じ枠組みで制作されています。プロデューサーはEMIのタヴッド・モットレイ、エンジニアはシャルプラッテンのクラウス・シュトルーベンという枠組みです。
この「ツァラトゥストラはかく語りき」はオーケストラにプラスしてオルガンが使用されていますからここでも音場の右手からその聖ルカ教会のオルガンの響きが十全に鳴っています。まあ、現在では4チャンネルのシステムは当方にはありませんが部屋全体に響き渡るオルガンサウンドはかなり効果的に響いたことでしょう。CD化された音源はそういう部分は2チャンネルにミックスダウンされていますから、そのままならレコードの方が原音に近いということはできます。
冒頭は遅めでじっくりと描いています。まあ、この曲の聞きどころは最初の1分40秒ほどのこの導入部ですからねぇ。大見えを切った方が得策でしょう。血を揺さぶるオルガンの重低音に独特のティンパニの響きが乗ります。まさに歌舞伎で大見えを切るがごとくの演出です。
この曲は交響詩ですから、一気に演奏されますが曲としては次の9つのパートからできています。
Einleitung(導入部)
Von den Hinterweltlern(世界の背後を説く者について)
Von der großen Sehnsucht(大いなる憧れについて)
Von den Freuden und Leidenschaften(喜びと情熱について)
Das Grablied(墓場の歌)
Von der Wissenschaft(学問について)
Der Genesende(病より癒え行く者)
Das Tanzlied(舞踏の歌)
Nachtwandlerlied(夜の流離い人の歌)
ただ、CDと違いレコードではインデックスもありません。一気に聴くだけです。
「世界の背後を説く者について」も遅めで、一音一音をアクセントをつけてに演奏するのがケンぺ/ドレスデンの流儀のようです。弦楽の美しい艶のある音色も嬉しいところです。この弦の響きはこのオケの1番の特色でしょう。「大いなる憧れについて」に入ると少しずつテンポが速くなっていきます。どちらかというとケンぺは旧タイプの指揮者で緩急をつけてドラマティックな組み立てをしています。
「喜びと情熱について」から次第に加速していきます。ここの加速は曲をよく盛り上げていて見せ場を作っています。ただ、「墓場の歌」ではまた遅くなり、フレーズをゆっくりしっかり演奏しています。「学問について」で更にテンポを落とし呻くような不気味な暗さの描出が良い感じになっています。ここから「病より癒え行く者」の最初の部分まで曲前半の最後を加速し昂揚感を煽ります。
曲後半にはやや大人しく入る。「舞踏の歌」ではヴァイオリンソロが小節を効かせ、少し洒落た雰囲気の舞踏の音楽が聴けます。その後の視界が開けるような部分は雰囲気がよく出ていますが、もう少し遅いとより効果的でしょう。曲頂点での音響はカラヤン盤などに比べればやや迫力に欠けます。この辺りが玄人好みの点で大衆的ではないのかもしれません。あっさりとした表現があったかと思うと激しく吠える金管もあったりと、とても多彩な表現になっています。さすがにR・シュトラウスを得意にしていたケンペらしい玄人好みの演奏です。「夜の流離い人の歌」で鐘の響きは大きなアクセントとなっています。最後は静かですがやや速めで終局を迎えます。
このケンぺ/ドレスデンのレコーディングの様子は当時のレコ芸で詳しく取り上げています。下の記事をご参照ください。



















































