曲目
1.ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61*
2.バッハ/ヴァイオリン協奏曲ヘ長調 BWV.1042**
3.バッハ/ヴァイオリン協奏曲イ短調 BWV.1041**
4.バッハ/二つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV.1043***
5.ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77****
1.ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61*
2.バッハ/ヴァイオリン協奏曲ヘ長調 BWV.1042**
3.バッハ/ヴァイオリン協奏曲イ短調 BWV.1041**
4.バッハ/二つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV.1043***
5.ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77****
ヴァイオリン/ヘンリック・シェリング
ペーター・リバール***
指揮/ハンス・シュミット・イッセルシュテット*
アンタール・ドラティ****
ヘンリック・シェリング**,***
演奏/ロンドン交響楽団*,****
コレギウム・ムジクム・ウィンタートゥール**,***
録音 1965/07/08-10,ウェンブリー,ロンドン*
1965/05/27*28,ウィンタートゥール,スイス**,***
1962/07/18,ワトフォード・タウンホール,ロンドン
D:ウィルマ・コザート****
E:ロバート・ファイン****
日PHILIPS 25CD3202-3
ペーター・リバール***
指揮/ハンス・シュミット・イッセルシュテット*
アンタール・ドラティ****
ヘンリック・シェリング**,***
演奏/ロンドン交響楽団*,****
コレギウム・ムジクム・ウィンタートゥール**,***
録音 1965/07/08-10,ウェンブリー,ロンドン*
1965/05/27*28,ウィンタートゥール,スイス**,***
1962/07/18,ワトフォード・タウンホール,ロンドン
D:ウィルマ・コザート****
E:ロバート・ファイン****
日PHILIPS 25CD3202-3

3大ヴァイオリン協奏曲と言うと「ベートーヴェン」「メンデルスゾーン」「チャイコフスキー」と教えられ、学生時代の友人は「メンデルスゾーン」が好きという者が大半でしたが、小生は「ベートーヴェン」に一番親しみを持っていました。どうもその頃から、皆とはちょっと嗜好が違っていたのかもしれません。だいたい評論家の推すディスクはあまり気乗りがしないからです。
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を集め始めたときも、マイナーな演奏ばかりで、ヘルマン・クレバース、スザンネ、ラウテンバッハーやルジェーロ・リッチとかですこぶる地味なものでした。また、演奏会にも無い金をはたいて、海野義雄や前橋汀子などのコンサートに出かけた記憶があります。そんな中で、一番感銘したのはウィーンで聴いたレオニード・コーガンの演奏でした。その当時、卒業記念の旅行で、1ヶ月ほどバックパックでヨーロッパを旅しました。おおざっぱな日程だけ決め、気に入ればその国に長居をしました。そんな中、ウィーンはイギリスのロンドンについで何日も滞在し、その間にウィーン国立歌劇場で「トラヴィアータ」とこのコンサートが聴けました。指揮はイェルジー・セミコフ、演奏はウィーン交響楽団で会場はウィーンコンツェルトハウスでした。今となってはどうやってチケットを手に入れたか思い出せませんが、立ち見席で聴いたことは覚えています。3月の初めで寒い日でしたが、会場は大入り満員で、会場後方の立ち見席も背の低い小生はつま先立ちになりながらステージを覗き込んで聴いていたものです。
コーガンはこの実演を聴くまで、オイストラフとは対照的にどこか冷たくて堅物のイメージがあったのですが、それが見事に覆されてしまいました。非常に懐が深く、繊細で透き通るような音色が、一番後ろの立ち見席で聴いてもオーケストラに埋まること無くじつに朗々と響き渡りホールを満たしていました。
このコンサートにはハプニングがあり、第1楽章が終ったところで拍手が起こったこともあるのですが、それはままあることで、それとは別に、会場の熱気で立ち見で聴いていた女性(多分小生と同じバックパッカーで旅行に来ていたと思われます)が気を失って倒れてしまったのです。すぐに係の人が駆けつけて運び出してくれたのですが、この間10分ほど演奏は中断したままでした。しかし、再開後は何事も無かったかのような美しいベートーヴェンが続けられたのでした。
実を言うとこの日のコンサート、ヴァイオリン協奏曲以外何が演奏されたかさっぱり思い出せません。それだけコーガンのベートーヴェンがすばらしかったということでしょう。
追記 その後、コンサートのプログラムが出てきました。前半はベートーヴェンで後半はチャイコフスキーの交響曲第4番が演奏されていました。なお、演奏会は1977年3月5、6日に開かれてていいます。また、この3月にはウィーン交響楽団をカール・リヒターが指揮してヘンデル、バッハ、そしてブルックナーというプログラムを指揮していました。下旬にはウィーン・フィルの定期もありショルティがベートーヴェン、R,シュトラウスを振っています。
こんな思い出があるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲ですが、愛聴盤はシェリングの物です。この演奏は彼の古い65年のステレオ録音です。シェリングは生涯この曲を3度レコーディングしています。最初のティボーとの録音は残念ながら聴いたことが無いので除外します。基本的な解釈は後年のハイティンク盤と変わらないのですが、合わせ上手なイッセルシュテットの方が音のバランスが良いと言えます。カデンツァはヨアヒム&フレッシュのものを使用しています。フィリップスのウォームトーンに包まれてすこぶる美しいベートーヴェンか展開されます。シェリングの演奏には、ベートーヴェンの意図した音が全て過不足無く響いています。ハイフェツやムターなどのように気になる節回しには縁がないのでしょう。それでいて、聴かせるべきところはちゃんと心得ていて期待通りの演奏をしてくれます。この曲が聴きたいと思ったら10回中9回は真っ先に取り出して聴くディスクです。
このディスクは2枚組で3大ヴァイオリン協奏曲ではないですが、3大Bのヴァイオリン協奏曲が収められています。意外と3大Bのヴァイオリン協奏曲ってまとまった物が無いんですねえ。バッハは弾き振りによるもので、ゆったりとしたテンポで室内楽的な暖かみに包まれた演奏が繰り広げられます。シェリングの人となりが感じられる誠実な演奏です。
ブラームスはマーキュリー原盤の録音です。子会社の方が録音データがしっかりしています。ワン・ポイント・マイクによる録音ですがしっかりした音です。音の鮮度でいえばこのブラームスが一番でしょう。ただし、ブラームスに限っては後年のハイティンクのサポートによるディスクの方が一回り大きい演奏で充実しているような気がします。ここでも、シェリングはヨアヒムのカデンツァを使用しています。
なお、このディスクはシェリングの追悼盤として発売された物です。