神童 キーシンの記録 | geezenstacの森

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神童 キーシンのデビュー盤

「ショパン/ピアノ協奏曲第2番

 

曲目/ショパン
1.ピアノ協奏曲第2番ヘ短調Op.21
2.マズルカ第40番ヘ短調Op.68-4
3.マズルカ第51番ヘ短調Op.68-4
4.ワルツ第14番ホ短調
ピアノ/エフゲニー・キーシン
指揮/ドミトリー・キタエンコ
演奏/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
録音 1984/03/27,モスクワ音楽院大ホール ライブ
P:ニ.スレプネフ
E:P.コンドラシン

 

メロディア VDC1168

 

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 音楽の世界では、しばしば神童が現れます。古典的にはモーツァルトやメンデルスゾーン、現代では、ヴァイオリン奏者のユーディ・メニューイン、ヤッシャ・ハイフェッツや五嶋みどり、最近ではみどりの弟の五嶋龍が有名ですね。指揮者でもけっこういます。ロリン・マゼール、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー、ジョージ・セルなんかもそうでしたし、カラヤンも昔はそう呼ばれていたんですねえ。が、歳とともに普通の人になっている人もいます。

 

神童には2つのパターンがあります。生まれながらにしての天才、そして努力を重ねた結果の天才。モーツァルトを前者とすれば、キーシンはどうなんでしょう。「十で神童、十五で才子、二十歳過ぎれば並の人」という言葉があますが、1973年生まれのキーシンは今では30代に突入しています。はたして、天才なのでしょうか。
 
 このディスクは若干12歳のときのコンサートのライブ録音ですが、まさに神童の名声をほしいままにする快演です。十全とはいえないオーケストラのサポートですが、華麗なタッチの音色といいすでに完成されたテクニックといい申し分のない演奏です。

 

 第1楽章、オーケストラは柔らかい調べで入ります。これがメロディアの録音とは信じられない響きです。やや遅めのテンポで入り、そこにキーシンのピアノがきらびやかに乗っかります。多分、覆面でこの演奏を聴かされたらとても12歳の少年の演奏とは思えないでしょう。ダイナミックな中に微妙なテンポの変化を織り込んで多彩な音色を聴かせます。比較にエラートに録音したマリア・ジョアオ・ピリスの演奏を聴きましたが、はるかに抜きん出た演奏です。

 

 感心するのはすでに歌心を持っている事です。第2楽章のラルゲットはその最たるもので、こぼれんばかりの詩情があふれています。テクニックも申し分無く、第3楽章のホルンの信号の後は全く難しさを感じさせる事なく早いパッセージを素晴らしい演奏で弾ききります。

 

 ジャケットの写真を最初見たときは、少女と見まごうべき出で立ちで我が目を疑ったものです。それにしても、こんな可憐な少年が、かくも華麗にショパンを弾くとは・・・・驚愕でした。

 

 こんなデビューを飾ったキーシンは、コンクールとは無縁でその後も華々しい活躍をしています。チャイコフスキー・コンクールはオープニングセレモニーで演奏するとか、カラヤンとも録音するとかして着実に実績を積み重ねています。神童は若くして、大家の道を歩んでいるようです。

 小生の所有するディスクは、今は廃盤で発売元もBMGに変わっています。

 

 

 さて、神童をインターネットで検索していて日本にも神童がもう一人いたことを発見しました。渡辺茂夫、その人です。昭和20年代後半に若干10歳を少し越えて国内の演奏家として確固たる評価を受け、14歳で世界を睨んで、米国のジュリアード音楽院に留学した渡辺茂夫です。残念ながら彼は留学中の昭和32年に自殺未遂をおこしその輝ける才能は16歳にして終焉をむかえます。しばらく前にテレビのドキュメント番組で取り上げられていましたからご覧に成った方も多いのではないでしょうか。詳しくはこちらのサイトに記載されています。
http://mozartant.blog4.fc2.com/blog-entry-1.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/渡辺茂夫