声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -10ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
プロ、トレーナーも含め、トップレベルのヴォイトレ論を展開します。

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基本と応用

 

 ヴォーカルにとっての基本は、声です。それに対して、応用は歌、そしてステージです。声にも、声をしっかりと出していくという基本と、それで表現していくという応用があります。

 ヴォイトレの段階は、考え方によって、どのようにでも分けられます。忘れてはいけないのは、基本にたどりつき、基本に深く入っていくことです。そこから応用できる範囲が広がっていくことになります。

 

 簡単なことに思われる基本を、しっかりと人の何倍もやって、何倍も厳しくマスターすることができて、初めて人並み以上に応用できる力がついてくるのです。

 

 最初からステージや歌ばかりやっている人は、いろいろと応用ができているように思えます。しかし、器用さだけでは、やがては行き詰まることが多いものです。そういう人を見ると、早く脚光を浴びたために、基本の力を身につけられる時間がとれないで、もっと伸びたはずの才能を活かせないで終わる、もったいなく思います。

 

 そこでも本能的に基本をつかめ、それを固めていく人もいるようです。さらなる応用を必要とするために、基本の大切さが、体としてわかり、実践になっている場合ですが、日本では、なかなか難しいのが現状です。

 

 トレーニングは、応用よりも基本を固めることをめざします。基本の方が根本的に大切なことをより深く突き詰めていきやすいからです。

 応用というのは、いろいろな形があり、判断基準が定まりにくいので、なかなか身につきません。しかし、基本の足らなさを知るのに必要です。

 

 最初に基本ありき、歌やステージの構成をイメージします。本当にうまくなりたいのでしたら、トレーニングは、ステージのことよりも声やその使い方からシンプルに始めるべきなのです。そs、そのプロセスで応用と行き来することです。

感受性を高める

 

 一芸に秀でた人の神経の細やかさは、よく話題になります。

自分のやっていること、あるいは作品に対して、ある意味では完全主義者として立ち向かっているのです。ヴォーカルであれば、それが声に対しての神経の使い方に表れます。

 

 一声をどのくらい集中して出せているかということになります。

日常生活のなかでの声の管理や声の使い方は言うまでもありません。

 

 常に自分の声を考えるようにしましょう。何の問題意識もなく、緊張感もなく声を出して、それでトレーニングしたと思ってはなりません。

 

 一所懸命に出しながら楽しむことです。そこから表現が生まれてきます。

自分の出す声、声を取り巻く状況に無神経であってはなりません。声の感受性を高めましょう。

 

 

 間が悪い、間抜けなど、間というのは、日本人にはとても馴染みのあることばです。

 昔、ラジオを通じて、語りの第一人者に徳川夢声という名人がいました。氏は、話術の秘訣を、間を効果的におくことだと看過しました。彼の語り口は、間の芸術としても知られています。間を充分に取り、絶妙な間で語るわけです。

 

 歌もメリハリが大切ですが、最大のメリハリとは、間をとることです。そこから、静かに出る、あるいは勢いよく出て聴いている人をぐいっと引っぱり込むのです。歌がほぼ三分間で終わり、その中に一番、二番とあるのも、間というものをつくり出すためと考えてもよいでしょう。

 

 

[チェックポイント]

 

□無理に高い声で行わないようにする。

□のどにひっかからないようにする。

□首、肩、のどに力が入らないようにリラックスする。

□ひびきが広がらないように集約する。

□声はできるだけ太く強く大きくとイメージする。

□音がバラつかないように流れをつかむ。

□胸に声の支えがあるように感じる。

□できるだけ大きな声にしてみる。そのときに高くならないようにする。

 

フレーズでの拡大、たたみかけ

 

 歌を聴かせるのには、少しずつ語りからメリハリを大きくきかせて、たたみかけていくのが一般的な表現方法です。聞き手に迫っていくときのように、少しずつ表現を大きくしていくのです。

人は、同じことを何度も繰り返されると飽きます。先が読めてしまうからです。気持ちのよいフレーズなら、何度でも聴きたいものですが、効果的な変化が必要です。このコンビネーションで創っていきます。表現の隔たりを埋めるのです。トレーニングでは、いつも大きめにということを意識しましょう。 

 

 

[歌詞に感情を入れて読むトレーニング]

 

 せりふや歌詞を読むときに、ことばのそれぞれの音がバラバラにならないようにすることです。大きな息の流れ、体の流れを感じ、声の流れのなかにことばを入れていく感じです。

 

   「わたしはしんじている」

 

 

※弱点は後回しでよい

 発声は、よいところと悪いところを混ぜて行うと、悪い方にそろうものです。弱点克服は必要なことですが、長所を伸ばすのを優先しましょう。トレーニングでは、短所も魅力的だと思わせるほどに長所を伸ばしましょう。そこで短所を長所に巻き込んでいくのです。実際のトレーニングのなかでは、「できることを何度もやることによってできないことまでしぜんとできるようになるまで待つ」、「できないことはやっても無駄か害になる」のです。そういうなかで少しずつ弱点を克服していくことが必要です。まわりからつぶしていけばよいのです。

 歌になると声が全く変わってしまうことなどは、トレーニングをしているときは、やむをえないケースもあります。声というのは、どうしても苦手な方へとそろいがちです。もともと日本人は、声を出すのが得意ではないのですから、すぐにうまくいかない方へともっていかれてしまうのです。

 そこで、ベスト・トレーニング(最もよい状態のとき、やや難しいことトレーニングする)と比較トレーニング(すでにできていることとまだできないことを交互にやり、できている方に合わせていく)を組み合わせます。

 アエイオウでウが出にくいとすれば、その人の歌のなかで使える最大の声量と声域はウで限定されます。それぞれのことばの発音を優先して発声を別々のつくり方にすると、そろうはずがありません。そこは、同じような発声(アやエに合わせたウ)にしていくのです。よい方に伸ばしていく、よい方にまとめていく、これがしぜんなプロセスなのです。

 

 

※ヴォイスシャワーを浴びよう

 私たちは、子供から大人になるとき、あるいは学校に通うようになったときに、大きな声を出すこと、遠くに声をひびかせることの快感、つまり声の力を失ったように思います。そこから今に到るまで、日本語は、毎日のように話してきたのですが、
大して声を使ってきていないのです。

 英語を学ぶために、イングリッシュ・シャワーといって、毎日、英語を浴びるほどに聞いていると、知らずと英語の感覚が体に入ってくるという方法があります。

 それと同じことをヴォイスでもやりましょう。よい声、よい歌を浴びるほど聞いてください。好きでも嫌いでも、とにかく一流のものをたくさん浴び、自分の細胞から変えていってください。

 弱点の多くは、入っていないもの、慣れていないものなのですから、まずは、量で補うことです。

 

ことばから「ラ」にすること

 

 発声のトレーニングによく使われている「ラ」は、日本人にとっては難しい音だと思います。「ラ」のスキャットで歌えれば一人前といってもよいでしょう。RAでもLAでもない「ラ」は、浅く薄っぺらく、のど声にもなりやすいので、なかなか音楽的に聞こえにくいのです。つまり、日本語の曖昧、かつ浅い「ア」の発声の問題でもあります。

 

 ですから、初心者が「ラーラー」と「ラ」で発声をつくっていく方法は、あまり効果的でないと思います。表面的に流れてしまいがちになるのです。

 そのままに、「アオイ」や「ハイ」と深めにことばで音をとって、そこから「ラララ」と繰り返す方が効果的です。

 

「ハイ、ラララ」は、私の基本メニューの一つです。最初は、「ラーララララ」と歌っても、ヴォリューム感はなかなか出ないようです。しかし、この「ラ」一音で相手に対して表現をすることを求めたいのです。少なくとも「ラララ…」で歌う曲というのもあるのですから、実力を試すのによい課題です。

(rf「さよならは、愛のことばさ」)

 

 1)ラーラララ ラララ、ラララ、ラーララ、ラララ、ラーララー

 2)アオイアーアオイアオイアオイアオイーアオイアオム

 

 「ラ」よりも「アオイ」で歌った方がメリハリもヴォリュームもつきやすい人は、ことばから「ラ」に変えていきましょう。