声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -11ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
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ことばから「ラ」にすること

 

 発声のトレーニングによく使われている「ラ」は、日本人にとっては難しい音だと思います。「ラ」のスキャットで歌えれば一人前といってもよいでしょう。RAでもLAでもない「ラ」は、浅く薄っぺらく、のど声にもなりやすいので、なかなか音楽的に聞こえにくいのです。つまり、日本語の曖昧、かつ浅い「ア」の発声の問題でもあります。

 

 ですから、初心者が「ラーラー」と「ラ」で発声をつくっていく方法は、あまり効果的でないと思います。表面的に流れてしまいがちになるのです。

 そのままに、「アオイ」や「ハイ」と深めにことばで音をとって、そこから「ラララ」と繰り返す方が効果的です。

 

「ハイ、ラララ」は、私の基本メニューの一つです。最初は、「ラーララララ」と歌っても、ヴォリューム感はなかなか出ないようです。しかし、この「ラ」一音で相手に対して表現をすることを求めたいのです。少なくとも「ラララ…」で歌う曲というのもあるのですから、実力を試すのによい課題です。

(rf「さよならは、愛のことばさ」)

 

 1)ラーラララ ラララ、ラララ、ラーララ、ラララ、ラーララー

 2)アオイアーアオイアオイアオイアオイーアオイアオム

 

 「ラ」よりも「アオイ」で歌った方がメリハリもヴォリュームもつきやすい人は、ことばから「ラ」に変えていきましょう。

フレーズは高いところから

 

 これを、1オクターブで音と音が離れていると、なかなか一つのフレーズのなかにまとめきれません。高いところを先に体に入れて、その前に低いところをつけるとやりやすいです。

 大切なのは音高のキーの決定です。

 

 [例]

  はなしーたくない

  ドドドードシドラ

(最初の2つのドは低く、あとは1オクターブ高くなります。)

 

 次の順でトレーニングするとよいでしょう。

   1.しー

   2.しーたく

   3.なしー

   4.なしーたくない

   5.はなしーたくない

 

タッチ(感情表現)のトレーニング

 

 ピアノの練習などでは、難しいところや聴きどころとなる箇所を集中的にくり返し練習します。難しい曲の場合は、その中で弾ける箇所から始めます。最終的に一曲として仕上げればよいのです。その順序は、自分の表現にとって最も有利なようにすればよいわけです。

 

 そこを一人でいろいろと試行してみてください。人前に出たら、そういうことを確かめることはできないのです。作品の反応を受け止められますが、作品そのものの完成へのプロセスとしては、最終段階になります。

 

 ヴォーカルは、あまりこういう練習方法をとりません。最初から、順に覚えて、あとは繰り返す。それでは、もっともよい表現はできません。

 

 あなたが楽器を弾けるなら、一つのフレーズを10通りに弾き分けてみてください。音の高さやリズム、テンポ、和音など、少し変えるだけで随分と違ってきますね。声ならもっと自由に幅広い表現ができるはずでしょう。10パターンで一つのフレーズを歌うトレーニングをしてみましょう。

腰のねばりが表現の強さ

 

 日本人のなかで、比較的、大きなフレージングで歌っているヴォーカリストというと、尾崎紀世彦さんです。歌謡曲をイタリアのカンツォーネのような感覚で歌詞を処理しています。

(日本人のお客さんに合わせ、ことばでまとめているところもあります。原曲で鑑賞しましょう。)

 

 本当は、オリジナルの方がずっと歌いやすく、聴きやすいのです。フレーズを大きくとると、表現としての強さやメリハリがストレートに出てきます。どのような表現をするにも、不足分がわかり、処理しやすい状態になります。そのためには、体も息も、それに支えられた声も深くならなくては難しいのです。

 

 声というボールを体の中心でキャッチして、むんずとつかんで、全身のフォームで投げる。腰を入れて、構えて、投げて、ミットへ収まるまで、集中して一つの線を追っていく。2~3年もやれば、どんな球技でも、ボールが手を離れた瞬間、それがうまくいくかどうか分かるはずです。パスでもシュートでも、投球でも同じです。

 

 この体の感覚、一つの大きなモーション、体の線と球の線(球筋)との一致、こういうイメージは声を出して、コントロールするときとピッタリなのです。投げているだけで、うまくフォームが完成されていく人が1万人に1人くらいいますが、あとは矯正をくり返さないと、どこかで行き詰まってしまうのです。

 

 誰かに教えられても、その教え方自体、常に矯正が必要です。教えられたために行き詰まったり伸び悩む人がほとんどです。でも、勝負はそこからなのです。

 100本ノックも、100球の投げ込みも、時間を費やすだけでは何のためにもなりません。正しいフォーム、ため、間、タイミング、集中力、全てがうまく使えるようになるまで、繰り返し考えながら組み立てていくのです。この繰り返しのなかから、体がそれに最も適するように、いつでも使えるようになるような形に鍛えられていくようにするのです。100パーセント、わずかな狂いも感知できるための基本、それをフォームというのです。 

 

[例]「さよならをもう一度」

 

 1.このままーいると  はなれそうなーふたりーだから

   ソラシドードシド  ドレドミーシーミシラーラソラ

 

 2.はなれそうな

   ドレドミーシ

 

 3.さよならは あい の こと ばさ

   ミミドミレ ミファミ ミファソファ

 

 4.たがいに きずつき  すべてをなくすから

   ミミミミ ミミファソ ソソララシシドレド

 

 

 日本人のなかで、比較的、大きなフレージングで歌っているヴォーカリストというと、尾崎紀世彦さんです。歌謡曲をイタリアのカンツォーネのような感覚で歌詞を処理しています。

メロディを聞いて歌詞を読む

 

 表現を知るために、魅力的なヴォーカルのオリジナリティ研究をします。一人のアーティストに引っ張られすぎないために、同じ曲を複数のヴォーカルで聴き比べてみるとよいでしょう。

そのなかで歌詞を読んでいるように聞こえるものがあれば参考になります。自分なりのイメージを構築して、あなたも何度も読んでみるのです。歌い切るくらい、しっかりと読んでみるのです。

 

 BGMに流しながら、一フレーズごとに読んでいくと効果的です。これは歌詞を覚える上でも役立ちます。特にサビや高いところなど、強く表現されるところはそのようにします。語りかけるところや弱く表現されているところはそのように読んでみましょう。

 

すると歌一曲の感じ、成り立ち、構成が分かってきます。そういう感覚が大切なのです。  

 歌は3分間のドラマといいます。そのドラマをいかに演じるかがヴォーカルの仕事です。

多くの人の歌い方では、曲が3分でも5分でも同じような感じに私には受けとめられます。3分の曲なら3分で一つの世界を表現し切るのです。伝え切るというスタンスが大切です。

 

 プロの体で一所懸命に集中して3分です。普通の人なら10秒とか20秒で精魂尽き果てるような感覚になります。そこにトレーニングが求められるのです。そうでなくては、おかしいのです。

汗一つかかず何十曲も歌い続けているとしたら、これは明らかに土俵、次元が違うのです。プロの世界をめざしている人の歌い方ではないのです。

 

そんなことに気づかないほど情熱が希薄になってしまったのかと考えさせられることがありました。かっこばかりつけて、動きばかり派手に、何を言っているのか伝わらずがなりたてている人を見るともったいなく思います。

 

 緊張して、あがって、全身汗だらけになって、一心不乱に一曲を全力で歌い切っていた、かつてのカラオケ好きのオジさんに、私は拍手を送りたくなります。聞く人が思わず拍手をしたくなってしまうような何か、それをもっていることがスタートラインです。それを、いつでもどこでも発揮できるようになれば本物です。そうなるように努力しましょう。