声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -12ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
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声の底

 

 私は、声の芯、声のポジションということばとともに、

声の底ということを使うことがあります。

これは、声の根元というようなイメージです。

根元=根本というイメージがあるのです。

 

できるだけ高い声まで深いところで同じ音質でとります。

といっても、話声域から半オクターブくらいです。

根太く威厳のある声を目指しましょう。

 

 これをトレーニングで習得していくのです。

声のポジションを低く保ち、そこで深い息を介して体から声として出します。

三つの条件が整うと、しっかりした声、安定した声、効率のよい声になるのです。

 

 

[声の底で声を感じるトレーニング]

 「イ」は、口先でつくらなければ、深く入り、ひびきやすい音です。

 

 なみいだ

 いいんだ

 あい

 

声を一本の線にしていく

 

 体でしっかりと声を支えて出しているとき声は一つ、

そして、ことばは一本の線にまとまっていきます。

拡散して飛び散っているようでは、よくありません。

遠くまで伝わりません。

 

一つにまとまっていないと本当には通らないのです。

一本にまとまっていたら、戻すことができます。

声が散らばっていると、

出たとこ勝負の声になってしまうものです。

 

[声を一本にするトレーニング]

 ことばの「ん」のところに、体を使って、ためます。

その次にくることばで離し、解放します。

メリハリをつけると声が体につく状態がわかります。

 

 なんて

 あんた

 とんだ

 おんだん

 かんだ

 

のどに声がひっかからない感覚

 

 のどを絞めて歌うのはよくありません。

そのために、腹式呼吸のトレーニングをしている人が多いようです。単に体や呼吸を強く使えるようにするのでは、逆に早くのどをつぶしてしまいかねません。体、呼吸をどのように声に結びつけるのかが重要なのです。

 

私は、「首はないものと思え」と言っています。

腹回りの筋肉を使うと、真っすぐに立っていられなくなるくらい疲れるときもあります。それはトレーニングであり、発声や歌として、よいものではありません。

しかし、結びついている、その感覚は離してはなりません。声楽家が、ときにピアノに片手をついて歌っているのは、体を安定させるためともいいます。全身が楽器になるイメージをもってください。

 

 

※声を揺らすこと

 ビブラートは、体からしっかりと声をコントロールできないと、不安定に揺れます。出した声が強弱やピッチとも不規則に揺れてはなりません。

音符に音をあてるように、点から点の移動としてことばをつなげ歌うのも、心地よいものにはなりません。

 音程をとるときも、大きな流れで、曲の線を流れとして捉えるように考えた方がよいでしょう。ことばを複数の音として捉えるのではなく、一つのひびきに捉えてから、音を置き直すというようなことです。

「青い」を「ア、オ、イ」と捉えず、「アオイ」と捉えます。

つまりブ、ル、ウではなくブルーと捉えるのです。

 

イメージを大切にして、一音一音に音がついてことばとなるのではなく、一つのメロディの一フレーズとして、1本の線の太さとしてのヴォリュームと動きをもつのです。

 よく、トレーニングに使われていることばをヴォリューム感もなく口の形の発音だけで切り離していくのは、ただの発音練習です。

 

[一音のキーを上下させるトレーニング]

 次の音を聞いて、同じ高さで言葉を発します。

同じ音色、同じポジションを保つようにしてください。

 

 1)ラ シ ド レ ミ フ ァ ソ ラ シ ド(一音ずつ「ハイ」で)

 2)ドド♯ ド♯レ レレ♯(半音ずつ「ララ」で二音)

 3)ドド♯レ ド♯レレ♯(半音ずつ「ラララ」で)

一音でのチェック

 

 トランペットの奏者は、一つの音を鳴らしたら、使えるかどうかのチェックをします。

ヴォーカルはどうしてやらないのでしょう。

声は、ことばがついてはいますが、音色としての声の魅力はどうなのでしょう。

 

トランペットは太いラッパ管(音の出口)のところが動きません。音をマウスピースで出し、それを共鳴させて調音します。口や顎でも固定してみましょう。

先に音色があって、それをよりよくトレーニングをするのです。

 

[一音でのチェック]

 短いことばを読んでみるとよいでしょう。

カ行、サ行、タ行は難しいので、あとまわしにして構いません。

ワンフレーズの感覚で読みます。発音でなく発声のチェックです。

 

 

よく使われる詞のことばを何度も読んでみましょう。

 

[名詞] あなた、僕、私、きみ、俺、おまえ、心、太陽、月、星、空、海、人、町、日、恋、愛、夢、胸、こと、今、二人、女、涙、雨、風、花、歌、丘、誰、いつ、you、I、my、me

 

[動詞] love、行く、言う、来る、泣く、好き、忘れる、吹く、歌う、踊る、ない、する、ている、なる、いる、する

 

[副詞] この、もう、よう、あの、そう、ええ、ah、wow

 

どんな時代であっても、声を捉えていくようにした上で、その出口として、自分の心にあることばでチェックしながらトレーニングした方がよいでしょう。

 

日本語と外国語、インターナショナルによい声を

 

 ブレスヴォイストレーニングでの課題をこなすのに、

一般の人が使っているような浅い日本語では、すぐに行き詰まってしまいます。

普通の日本語からプロの声をつくり上げるのは、難しいのです。

日本語は、強い息を必要としないからです。

 

そこで、体や息という、外国人とも共通のボディまで戻って、そこから声を捉えていこうとしたのが、ブレスヴォイストレーニングです。

共通のボディでも息の強さ、それを支える筋力が違います。そのギャップから埋めていきます。

 

このように考えた方が効果があり、本人にもわかりやすく、習得しやすいのです。

ことばから発声を考えるより、インターナショナルに共通するよい声を理想とします。

そこから、ことばについて突き詰めていくのです。

 

日本との「アイウエオ」という母音以外にも、いくつもの母音があるのです。

ですから、日本語をローマ字表記にして、イタリア語に置き換え、ことばのワクを超えて、トレーニングに使っていくという方法を取り入れています。

 

 

[例]

(1) とおく はなれて

(2) TOKU HANARETE

 

(2)のイメージの方が言いやすいのではないでしょうか。実際の歌のなかでも、きっと(2)の方が楽に声が聞こえます。しかも美しい日本語として聞こえるのです。

 

 イタリア人が日本語で歌うときに、大半の日本人の日本語よりもきれいな日本語が聞こえます。歌の中でことばを処理できるからです。

これは、深いポジションの声でフレージングを活かした日本語です。

日本語が向うの音楽にのらないことからくる問題を解決できる方法の一つだと思います。日本語の歌詞に英語を入れてつくる人がシンガーソングライターに多いのは、こういう理由もあると思います。

音大では、イタリア歌曲から入る人が多いでしょう。

 

歌や音楽ということで声を学ぶことが大切です。声を開き、声をしっかりと使い、その声を聞く、そういう繰り返しを日課に組み入れることです。

よい声の音楽や芝居をたくさん聞いたり見たりすると、大切なものが深く身につくように思います。

ヴォイスシャワーとでも言いましょうか、今まで生きてきた間に使ってきた声よりも、たくさんの声をしっかりと聞いて使って、初めてその人の声は、しぜんに本物の声、通用する声に変じていくのではないのでしょうか。

 

[イタリア語講座の勧め]

 外国語のなかでも、イタリア語は音楽的であり、日本語でルビをふって言っても伝わるほど簡単です。声を感じ、声のもつ音楽性をつかむために、イタリア語を耳から聞き、口に出してみることをお薦めします。続けて聞いていくと、声に対するイメージも、あなたの声自身も魅力的に変わっていくでしょう。

 

[日本語を音楽的にする]

 ローマ字表記のイメージで、一音ごとに分けずに表現してみます。

1)愛-Ai

2)Amore

3)あなたなしには-Anata nashiniha

4)誰よりもきっと-Dareyorimo kitto 

5)Comme Primaコメプリマ

 

 日本語でも、「愛」や「恋」は、しっかりと歌っていくと深くなるようです(特に「い」のポジション)。日本語の母音は浅いので、深く使うと音楽的になります。

「い」「う」では、うまく歌えないとか高いところが出ないという問題をクリアできます。

むしろ、深い声なら「い」は、もっとも共鳴に向いています。

そうなっているかどうかは、歌詞のなかの「し」の音の共鳴でチェックできます。

歌い手の「い」は深いようですので、聞いてみてください。(尾崎紀世彦、弘田三枝子さんなど)