日本語と外国語、インターナショナルによい声を
ブレスヴォイストレーニングでの課題をこなすのに、
一般の人が使っているような浅い日本語では、すぐに行き詰まってしまいます。
普通の日本語からプロの声をつくり上げるのは、難しいのです。
日本語は、強い息を必要としないからです。
そこで、体や息という、外国人とも共通のボディまで戻って、そこから声を捉えていこうとしたのが、ブレスヴォイストレーニングです。
共通のボディでも息の強さ、それを支える筋力が違います。そのギャップから埋めていきます。
このように考えた方が効果があり、本人にもわかりやすく、習得しやすいのです。
ことばから発声を考えるより、インターナショナルに共通するよい声を理想とします。
そこから、ことばについて突き詰めていくのです。
日本との「アイウエオ」という母音以外にも、いくつもの母音があるのです。
ですから、日本語をローマ字表記にして、イタリア語に置き換え、ことばのワクを超えて、トレーニングに使っていくという方法を取り入れています。
[例]
(1) とおく はなれて
(2) TOKU HANARETE
(2)のイメージの方が言いやすいのではないでしょうか。実際の歌のなかでも、きっと(2)の方が楽に声が聞こえます。しかも美しい日本語として聞こえるのです。
イタリア人が日本語で歌うときに、大半の日本人の日本語よりもきれいな日本語が聞こえます。歌の中でことばを処理できるからです。
これは、深いポジションの声でフレージングを活かした日本語です。
日本語が向うの音楽にのらないことからくる問題を解決できる方法の一つだと思います。日本語の歌詞に英語を入れてつくる人がシンガーソングライターに多いのは、こういう理由もあると思います。
音大では、イタリア歌曲から入る人が多いでしょう。
歌や音楽ということで声を学ぶことが大切です。声を開き、声をしっかりと使い、その声を聞く、そういう繰り返しを日課に組み入れることです。
よい声の音楽や芝居をたくさん聞いたり見たりすると、大切なものが深く身につくように思います。
ヴォイスシャワーとでも言いましょうか、今まで生きてきた間に使ってきた声よりも、たくさんの声をしっかりと聞いて使って、初めてその人の声は、しぜんに本物の声、通用する声に変じていくのではないのでしょうか。
[イタリア語講座の勧め]
外国語のなかでも、イタリア語は音楽的であり、日本語でルビをふって言っても伝わるほど簡単です。声を感じ、声のもつ音楽性をつかむために、イタリア語を耳から聞き、口に出してみることをお薦めします。続けて聞いていくと、声に対するイメージも、あなたの声自身も魅力的に変わっていくでしょう。
[日本語を音楽的にする]
ローマ字表記のイメージで、一音ごとに分けずに表現してみます。
1)愛-Ai
2)Amore
3)あなたなしには-Anata nashiniha
4)誰よりもきっと-Dareyorimo kitto
5)Comme Primaコメプリマ
日本語でも、「愛」や「恋」は、しっかりと歌っていくと深くなるようです(特に「い」のポジション)。日本語の母音は浅いので、深く使うと音楽的になります。
「い」「う」では、うまく歌えないとか高いところが出ないという問題をクリアできます。
むしろ、深い声なら「い」は、もっとも共鳴に向いています。
そうなっているかどうかは、歌詞のなかの「し」の音の共鳴でチェックできます。
歌い手の「い」は深いようですので、聞いてみてください。(尾崎紀世彦、弘田三枝子さんなど)