ことばからメロディへ
ことばをしっかりと体から言い切れる、シャウトできるようになると、しぜんなひびきが出て、おのずとフレージングが生じてきます。音も高低、強弱、長短が変化して、歌のフレーズとなっていくと考えてください。そこに音楽性(調性も含め)を伴ったのが、メロディです。
それなのに、どうして、他の人の歌のフレーズをそのままコピーすることをめざすのでしょう。
ヴォリュームなし、迫力なし、インパクトなし、表現力なし、個性なし、魅力なし、つまり、価値なしとなります。うまく歌うほど、一本調子の退屈な歌になってしまうのです。
ことばを語りで完成することをめざしてください。そうでなくては、歌い出しても、メロディ処理で半分以下、歌になると3分の1のヴォリュームに満たなくなります。
まずは、声だけをしっかり出そうとしてみましょう。メロディ、リズム、音程、ことばという、音楽の諸要素に邪魔されないようにすると、随分と楽に発声は上達します。
ヴォーカリストとは、肉体労働者、スポーツ選手と同じく、自分の体で価値を創っていくのです。先に上げた諸々の要素よりも、体と結びついている声を出すことが、第一優先です。
私は、ことば+メロディ+歌となるにつれて、必要なパワーは増すのが当たり前だと思っています。エネルギーがより多く必要とされるのです。ことばの語りで100が必要というのでしたら、メロディ処理はその150パーセント、歌になればその200パーセントの力を求めるといえばよいでしょうか。
現状は、歌手であってさえ、歌より語らせた方がよく伝わる人が多いです。MCの力でステージをしているといわれるゆえんです。