声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -13ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
プロ、トレーナーも含め、トップレベルのヴォイトレ論を展開します。

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声の芯をつける

 

 「日本人の声には芯がない」と言ってきました。ひびいても根っこがないのです。

くせがついていて浅く、通らないのです。

カラオケのうまい人の声でも、大半は、その典型といえます。

しっかりと胸に入る声があるから、上に楽々とひびいてくる響きを自由に使えるのです。

 

アマチュアは、音の高さによって共鳴が微妙にずれます。

これをすぐに直そうとするのでなく、より広げよう、伸ばそうとしていけばよいのです。

 声になるところを捉えることができれば、少しの力でかなりのパワーを持てます。

芯を捉えなくては、いくら力を入れてもパワーを発揮できません。

そういう意味ではスポーツにも似ています。

 

 声の芯をつかむことと、それを離さないでコントロールできることが大切なのです。

声の芯をつけることから始めます。タイミングをつかみ、体の力を声に変換するのです。

その準備として、息を深く吐いたり、体=呼吸に関する筋肉群をうまく使えるトレーニングが必要なのです。

 

 

[声と体のフィット感]

 確実に声のポジションが捉えられるようにしていく、そこで、体と声とが一体化している感覚を捉えることができます。

 

体をチューブとすると、チューブを下から絞った分だけ声が出るといったイメージです。そのチューブの上の方だけを押したのでは、全体が使われずもったいないばかりか、すぐ途切れます。声と体との関係はそれに似ています。

体にフィットする息と声を、肌着のように身にまとっているというイメージをもつとよいでしょう。

 

 

[声の芯]

 尾てい骨から、胸の中心に向けて、一本の線が通っているとイメージしてください。

その線上に声があるつもりで行います。

 胸のまんなかに口があると考えてみましょう。

そこで大声でことばを叫ぶトレーニングをしてください。

 次にハミングのトレーニングでクールダウンします。

 

声のメイクアップ

 

 詩でもコラムでも、何でも構いません。大きな声でしっかりと読んでみましょう。

そして、録音して聞いてみます。自分の声やくせを知ることです。

再生すると、他人が聞いている声とは、やや異なりますが、大体は合っています。

そこから聞こえる声が自分がそのときに出した声と思ってもよいでしょう。

 

 1.自分の声を知ること

 2.自分の声と、その発声時の感覚の関係を知ること

 3.ことばや声のチェックをすること

 

 これを毎日続けると、随分と変わります。

1回にわずか2~3分、歯磨きをしたり、髪を整えたりするのと同じです。

習慣づけるのです。

 

あなたは自分の声を皆の前に裸でさらしているわけです。

声のメイクアップが必要です。誰も服を着る手間は惜しみません。

声を使って何かをやっていこうという人には、声のメイクアップは必修のことでしょう。

 

[自分の朗読を再生して聞く]

 ここでは、詞を読んでみましょう。

 

言語習得からのトレーニング

 

「ブレスヴォイストレーニング」では、まず、下のドの50を100に近づけさせます。しぜんと少し高いソの30も80くらいに近づいていきます。

最初は、1オクターブ上のドを上限としてもよいでしょう(女性はラくらい)。そこまでの1オクターブすべてが50に出るまで、それより先の高い音に進みません。それができた時点で少なくとも50の声量で1オクターブ動かせるわけです。その1オクターブで充分に聞かせられます。

そこから、その1オクターブを100に近づけていくのです。

 

ここまでは、トレーニングといっても、俳優や外国人がしぜんに深い言語声を習得していく段階を踏んでいるわけです。

ヴォイストレーニングでは、声域だけを考え、他の要素を顧みない人がほとんどで、トレーナーもそこだけを目的にしているのが、一般的になってきました。

 

○歌えない声域よりも、歌える声量を先に

 

たとえば、自分の話している高さの音、これをまんなかのドとします。このときに、50の声量があったとします。すると、素人は、その上のソが30くらい、1オクターブ上のドになると、10ぐらいの声量となります(例えです)。

一般的な発声練習では、上のドの上にあるミが8ぐらい、ソが5ぐらいとなっても、そのままギリギリ声の届く線で伸ばして、声域を広げていきます。

(ステージとしては、マイクのあるおかげで整えられます。しかし、トレーニングとしては、マイクはごまかせる分、弊害が多いといえます。)

 

歌になると、一番弱い線でラインがでますから、上のミやソを使う限り、すべて10以下の声量でしか歌えないわけです。下のドだけなら、50も出るはずなのに、その音でさえ、歌のときには10になってしまいます。こうして、今の歌い手は、声が鍛えられないどころか、声量を失っていくのです。

歌は声の線(の変化)でみせていくものなのだから、もつことはもちます。これが日本人の多くの歌う人が、話す声より小さくしか歌わない理由の一つです。(特にカラオケでは、それが普通です。そういう声で歌が成り立つような装置だからです)

 

感情表現に対して、音響技術の発展が、より小さな声の変化を伝えられるようになったことです。それで、身体からの声を使い切れない人は、小さな声でていねいに表情をつけることになり、身体と結びつきにくくなりました。つながりはしますが、歌全体からみると、こま切れでバラバラであるのは否めません。

今、最大に出せる声をまったく使わず、出にくい音の声量に合わせていくトレーニングで、どうして声量がつくのでしょう。これでは、いくら声域が広がったとしても、歌としての器がとれないという結果になります。

○声量とは、変化量のこと

 

さて、声量と歌の良しあしは、無関係とはいいませんが、声が大きく出せることよりも、声が大きく聞かせられることの方が大切です。というのは、声をいくら大きく出せても、喉声だったり、ひびかない生声では、うまくマイクに入りません。頭のてっぺんから出るようなキンキン声で、マイクにキーンと鳴りひびくようでは、聞き苦しいです。大きく出すことで、あなたがスッキリしても、聞く人がそうだとは限りません。

 

聞く人が耳で感じる声量とは、声がどれほど大きいかということでなく、どれだけ変化がつけられるかということです。声の大小の差、つまりメリハリの方が声の大きさよりも大切なのです。

声量でいうと、出だしが小さく、だんだん盛り上がって最後に80ぐらいの力で歌うと、迫力ある声に聞こえるのです。さらに、声での切り込みの鋭さやドライブ感などにより、同じ声でも、ヴォリューム感がまったく違ってきます。そうして、のりや表現の自由度を獲得していきます。

 

素人はある声量の範囲でしか歌うことができません。いきなり、60ぐらいのレベルで歌い出し、盛り上げるにも必要以上の力が入るため、マイクがうまくひろわなくなり、70ぐらいのレベルに聞こえるわけです。その結果、単調な感じになります。大きな声を出せても、変化をつけられなくては、無意味です。一本調子で飽きられるゆえんです。

プロは、5ぐらいから80ぐらいの自分の確実にコントロールできる声量で歌い、メリハリを見せます。100の声があることを匂わせます。聞く人は声量ではなく、声の変化を聞くのです。その小さな変化を大きく聞かせるために、声の安定性が不可欠なのです。

 

声量とは、きちんと息が流れている声を自在にコントロールすることにより、メリハリを表現できることです。自由自在にコントロールするとは、同じ声を強くしても弱くしても使えるということです。

きちんとお腹から出した声であれば、吐く息を調節するだけで、大きくも小さくもできるはずです。

発声にかなった声の出し方であれば、マイクに吸いこまれるように効率よく声になり、しぜんな盛り上がりをみせるでしょう。それ以上に、大きな声を使うのは、タブーです。

声量については、まず深い息を流す。それを深い声にする。その共鳴を妨げない。これらが基本です。