声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -14ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
プロ、トレーナーも含め、トップレベルのヴォイトレ論を展開します。

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○お腹から大きな声を出すようにしよう

 

大きな声で歌えば、歌が盛り上がると思っている人は多いし、確かに大きな声は出た方がよいと思います。それは音楽的な表現においてだけではなく、大きな声を出すための支えが、重要な役割を果たすからです。

 

最初から小さな声でまとめている人よりも、大きな声で歌っている人の方が、将来性が高いといえるのは、器が大きく変わる、可能性があるからです。要は、トレーニングの最大の目的である大化けの可能性が高いからです。

 

お腹に結びついた声は大きくなります。大きな声を出せるということは、誤解を恐れずに言うなら、お腹を使っているということで、変わっていく可能性が大きくなるのです。

 

少しでも身体から声が出ていれば、鍛えられるにつれ、条件が変わっていきます。調整能力もついてきます。ですから、最初はある程度以上の声量をめざすことを、将来的にみて、お勧めします。

 

○叫べる声、シャウトできる声

 

叫べる声、シャウトできる声は、口先に出るのでなく、深く身体に根ざして胸についているのです。少なくとも、他の人にシャウトしているように聞こえる声にはしっかりとした支えがあります。シャウトとは身体を使って声を出すことです。喉に力をいれて大声を出すのは、がなっているだけでシャウトしているのではありません。これを間違えないことです。浅い声で大きく出すのは、危険です。

 

私が思うに、シャウトするというのは、外へ声を出すのではなく、ひびきは前に出すけれども、喉を大きく開けて身体のなかの声を充分音色に使うようにすることです。声も息も身体へ入れるような感じでとらえるとよいと思います。(シャウトには、いろんなものがあります。ここでは、トレーニングとしての考え方で、本来、応用にあたるのです。基本トレーニングのメニュからは、はずしています)

 

○高音を出すときのイメージング(中高音域)

 

ここでは、高い音というのは、話す声の半オクターブから1オクターブぐらいで、ハイトーンのことではありません。そこで高い声を出すというのは、お腹の力をより多く使うことと考えてください(もちろん、歌にしか使わないハイトーンについては範囲外です。多くの場合、このまま使うことはありませんし、使えません。

とはいえ、使える人もまれにいます。

(相手の声を聞かないで述べる本では限界があり、また危険もあるので、私は、ハイトーンについては最低限の言及にしています。適性、必要性や可能性についても、個人差が大きいからです)

 

ギターで例えると、高くするにもいろいろとあります。

1.指で押さえるところを変える、つまり、弦の長さを短くする(声帯の長さ)。

2.細い弦を使う(声帯の質量。もって生まれたもので、簡単には変えられません)

3.強く弦を張る(声帯の緊張度、固くする)

弦を強くはじいても音の高さは変わりません。つまり、息だけを強くしてもムリだということです。ただ、声帯は、ギターの弦のように固定されていないし、生なので複雑です。もともと、声帯をギターの弦に例えるのはムリがあります。よくオーボエに例えられるのは、2枚のリートが声帯の役割にあたるからです。

 

ギターは、あまり強く弾くと弦が切れます。仮に切れない弦があったとしても、それを使っていると、今度はギターのボディが反ってくるでしょう。しかし、人間の身体は、自らに要求される力に耐えうるように力がついていくのです。これを利用しない手はありません。つまり、身体の力で「声のポジション」を維持できるようにしてやることです。

このとき、あごで抑えたり首に力を入れてはいけません。上から押しつけるのではなく、身体で下に保ってやることです。

 

発声においては、高い音になるほど、意識としては下へ引っ張られているように感じるようにすること、少なくとも階段を昇るイメージよりも降りるイメージを思い浮かべるようにしてください。つまり、高い音ほど低くイメージを浮かべることが大切なのです。(高くイメージして、高く声がでるのはあたりまえで、それがあたりまえにできたら、トレーニングなど不要でしょう)

大抵は強く声を出したら高くなります。発声する方だけでなく、聞き手の感じ方(耳)も考えなくては、片手落ちでしょう。

 

○高い音ほど、喉をさげておくこと

 

かつては、多くの人が、高い音になると息を抜いて、キンキンとした声をがなりたてるようにしていました。あるいは、身体を使っていても、喉に直接あてたり、喉をしめたりしています。共に、声に息をミックスさせていないからです。

また、高い音になるにつれ、声にするポジションを変えていき、ぶつけて音をとっている人も少なくありません。ともに身体よりも、喉に疲れが残るという点でよくありません。

音のとり方についても、高い音は、五線譜のおたまじゃくしの位置のように、喉がだんだんと上がってくるかのように誤解しています。喉が上がってしまっては、お腹から声は出ません。お腹を動かしても声になりにくいのです。

 

そうではなく、俳優のように身体からの声を出すことを考えてみましょう。話している声で歌えますか。 そこで叫んでみましょう。このときに、きちんとお腹から声が出ているようでしたら、なかなかのものです。なぜならこのときの声は、かなり高い音だからです。

 

ということで、高い音をとる、もしくは音をとるというイメージを次のように考えてください。

1.声にするポジションは変えない

2.そこで息を充分、流して強く出す

3.お腹の力によりおわせる

 

○出せる声を使いこなすことで、しぜんに広げていく

 

声が声帯から出るものである以上、おのずと声量、声域とも限界はあります。そこには、個人差も、男女差もあります。しかし、使い方やトレーニングによって、多くの場合、本当に使える声域も声量も伸びるのです。

ただ、そのまえに私が強調したいのは、まず、自分の歌っている一オクターブを、充分に聞くに値する声にするということです。

 

ハイトーン(高音域)のコピーから入るやり方は、生来、相当に高い声をもった人以外にはお勧めできません。

外国人のそういうヴォーカリストは、生まれつき高い声をもっているだけでなく、声を出すための身体ができあがっていることが多いからです。

日本人においても、高い声で成功した人は、十代でハイトーンの出ていた人がほとんどです。自己流のトレーニングで高い声をマスターした人はいますが、あまり参考にはならないことの方が多いです。

 

コピーをしたければ、まずきっちりとお腹から声の出せる自分の発声を身につけてから、高音を確実に一音ずつ身につけていくことです。いくら自己流でくせをつけて声域を広げたつもりでも、人に聞かせられる声でなくては意味がありません。

 

声域を伸ばす前に、あなたの今持っている(つもり)の声域内での発声を完全にすることです。それをしっかりとやれば、しぜんに声域は拡がっていきます。

 

トレーナーには、自分が行ってきたことを、誰にでも同じように、すぐにそのままやらせる愚を犯しているように思えることが少なくありません。身体も歌唱も一人ひとり違うのですから、一つの方法が、万人にあてはまるようなことはありえません。