声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -15ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
プロ、トレーナーも含め、トップレベルのヴォイトレ論を展開します。

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「ブレスヴォイスコントロール」

 

ここからは、歌唱に応用する声について述べます。

ヴォーカリストにとっては、よい声であること、声域が広いこと、声量があること、それらは、一要素にしかすぎません。声が大きく出ることよりも、どこまでその声を自分の心身に結びつけてコントロールし、表現できるかの方が大切です。

自分の思うままに、身体でコントロールして出せるようになるのは、曲にメリハリを、歌詞に心を込めて、歌に活かすためです。

そのときの大きな要素が息の流れ、フレージングなのです。少々、ハスキーであろうが声がついていかなくても、息が流れていれば、そこに生命が通い、歌が生きてくるのです。

 

それと反対に、美しい声で上手なのに、何も伝わらない歌も、ずいぶんとたくさんありますね。

人、それぞれ歌への思い、考え方は違うので、否定はしません。まずは、自分が歌いにくくては、伝わるものが半減してしまうことは、確かでしょう。

何にしても息を声に、声を歌に結びつけ、ことばとメロディに命を吹き込むための練り込みが必要です。

 

○「ブレスヴォイストレーニング」に共通する注意事項

 

当初は、トレーニング上の全ての音を同じ感覚で出せるようにすることが大切です。その上で、

1.最初の1音を尻あがりにとらないこと。ぴたっとその音にあわせること。

2.最初の音は、長く伸ばさないこと。

3.ブレスは1回ごとに充分にとること。(1回ごとに休みを入れてもよい)

4.口先で音を切らず、必ずお腹で息と一緒に切ること。

5.お腹を使わず、息も流れていないところで、声をつくらない、伸ばさないこと。(安易に共鳴に頼らない)

6.声を出すのに息を使い切らないこと。

特に音を上げていく練習のときは、一番高い音において、充分に、息の支えがあるように呼吸を配分しておくことです。

歌うポジションが変わってしまう場合の大半は、喉があがってしまう場合です。その第一の原因は、息をしっかりとお腹に維持していないからです。息があがったら、休んでください。

○レガートを使ってのトレーニングについて

 

レガートは、歌の発声のもっとも基本的なフレーズ練習です。声づくりから応用して使える声としていくのに欠かせません。

気をつけなくてはならないのは、身体を使わなくても出せる楽な声や芯のない声の方が声域も広くとりやすいので、そちらへ安易にいきやすいということです。

 

まずは、なるべく、どの音も同じ太さ、同じ質の声であるようにすることです。なめるように1つの音から次の音へゆっくりと、まったくスムーズにつないでいくのです。これはとても大変なことです。レガートのマスターは、最高級レベルでの課題といってよいほどです。

○スタッカートを使ってのトレーニングについて

 

スタッカートは、お腹を一瞬、動かすので、慣れていない人でも強い声を使えます。声を身体で出す感じをつかむのに、わかりやすいようです。また、早く広い声域を出せるようになります。一瞬、身体と息と声が結びつけばよいので、声になる効率もよいのです。

 

ただし、前腹をひっこめた勢いや力で押しつけただけでも、声は出せてしまいます。それでは、しぜんなひびきのついた発声にはなりません。喉を詰まらせた発声になると、逆効果です。喉を痛めかねません。そこで間違いやすいのです。

 

なるべく、腰全体の支えで、喉を解放するように心がけてください。響きのないブツ切れにならないように気をつけてください。

 

 

○使える声とトレーニングの声

 

声の表現、せりふや歌は、声の応用ですから、その選択と編集で決まってくるのです。そのために私はレッスンを応用デッサン(習作)の場と考えています。

人前で演じたり、歌うときには、身体の結びつきを意識して声を出すようなことはありません。というより、考えなくても、しぜんと声が出なくてはいけないのです。

調子の悪いときは、お腹の力をいかして使うようにして、カバーしてもよいのですが、ふだんは余り意識していないことです。

 

だからこそ、トレーニングでは、必ず声になるところ、いいかえると、そこですぐに思いっきり、ことばにできるところの声とその使い方を中心とします。声域、声量は気にせず、身体に声を出している重み「抵抗」が感じられるとよいと思います。

 

ですから、最初は使う声とトレーニングの声は、目的によって区別すべきです。

ただ、いつまでたっても、この2つが違うものでは困りものです。発声のための発声で実際に使えないようでは意味はないからです。「身体ができてきたら、声は一致してくるのですから、少し待ちなさい」ということです。そうなれば、話したり歌ったりしていることで、トレーニングになるのです。