○使える声とトレーニングの声
声の表現、せりふや歌は、声の応用ですから、その選択と編集で決まってくるのです。そのために私はレッスンを応用デッサン(習作)の場と考えています。
人前で演じたり、歌うときには、身体の結びつきを意識して声を出すようなことはありません。というより、考えなくても、しぜんと声が出なくてはいけないのです。
調子の悪いときは、お腹の力をいかして使うようにして、カバーしてもよいのですが、ふだんは余り意識していないことです。
だからこそ、トレーニングでは、必ず声になるところ、いいかえると、そこですぐに思いっきり、ことばにできるところの声とその使い方を中心とします。声域、声量は気にせず、身体に声を出している重み「抵抗」が感じられるとよいと思います。
ですから、最初は使う声とトレーニングの声は、目的によって区別すべきです。
ただ、いつまでたっても、この2つが違うものでは困りものです。発声のための発声で実際に使えないようでは意味はないからです。「身体ができてきたら、声は一致してくるのですから、少し待ちなさい」ということです。そうなれば、話したり歌ったりしていることで、トレーニングになるのです。