メロディを聞いて歌詞を読む
表現を知るために、魅力的なヴォーカルのオリジナリティ研究をします。一人のアーティストに引っ張られすぎないために、同じ曲を複数のヴォーカルで聴き比べてみるとよいでしょう。
そのなかで歌詞を読んでいるように聞こえるものがあれば参考になります。自分なりのイメージを構築して、あなたも何度も読んでみるのです。歌い切るくらい、しっかりと読んでみるのです。
BGMに流しながら、一フレーズごとに読んでいくと効果的です。これは歌詞を覚える上でも役立ちます。特にサビや高いところなど、強く表現されるところはそのようにします。語りかけるところや弱く表現されているところはそのように読んでみましょう。
すると歌一曲の感じ、成り立ち、構成が分かってきます。そういう感覚が大切なのです。
歌は3分間のドラマといいます。そのドラマをいかに演じるかがヴォーカルの仕事です。
多くの人の歌い方では、曲が3分でも5分でも同じような感じに私には受けとめられます。3分の曲なら3分で一つの世界を表現し切るのです。伝え切るというスタンスが大切です。
プロの体で一所懸命に集中して3分です。普通の人なら10秒とか20秒で精魂尽き果てるような感覚になります。そこにトレーニングが求められるのです。そうでなくては、おかしいのです。
汗一つかかず何十曲も歌い続けているとしたら、これは明らかに土俵、次元が違うのです。プロの世界をめざしている人の歌い方ではないのです。
そんなことに気づかないほど情熱が希薄になってしまったのかと考えさせられることがありました。かっこばかりつけて、動きばかり派手に、何を言っているのか伝わらずがなりたてている人を見るともったいなく思います。
緊張して、あがって、全身汗だらけになって、一心不乱に一曲を全力で歌い切っていた、かつてのカラオケ好きのオジさんに、私は拍手を送りたくなります。聞く人が思わず拍手をしたくなってしまうような何か、それをもっていることがスタートラインです。それを、いつでもどこでも発揮できるようになれば本物です。そうなるように努力しましょう。