声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -9ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
プロ、トレーナーも含め、トップレベルのヴォイトレ論を展開します。

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○声楽っぽい発声を誤って使わないこと

 

頭部共鳴を学ぶ日本人のほとんどが、

地声でしっかりした声を身につけるのをなおざりにしています。

そのため、人並みの声も出ないうちに、

いかにも口先でつくったような発声をつくりあげてしまいます。

頭部共鳴が身につかないでいるのに、うまく響いていると思っている人も案外と多いようです。

その音には届いているものの、喉を閉めたり、ひびきだけに抜いているため、

腹式呼吸も活かせず、声を高度にコントロールできません。

歌の表現にも発声からの限界が生じてきます。根っこのない響きだからです。

 

1.ロングトーンをキープできない(「声の芯」をつかんでキープできない)

2.メリハリ、シャウトができない(声を練り込んだり、放したり、戻したり、自由に扱えない)

3.鋭い語頭の入り方、やわらかい語尾処理ができない

 

こういう声を出している人は、声楽をやってきた人や合唱団出身者などにも多いです。

そういう人は、自分の声は、ポップスに向かないというように思っているようですが、

そんなに応用できない発声などというのでは、何にも通じません。

録音して比べてみてください。

基本的なことができている人は、何でもそれなりにこなせるのです。

発声は、根本ではジャンルを問わず同じだと私は思っています。

 

○共鳴のチェック

 

1.共鳴しているところで、「アイウエオ」がはっきりと同じようにいえること。また、そのほかのどんなことばでも聞き取りやすいうように言えることが目的です。

口の形をあまり変えなくとも言えるようにしてください。

とくに「ウ」と「イ」が難しくなっていないかをチェックしてください。

 

2.身体や息のコントロールによって、

どの音においても2、3倍に強くもできるし、

2分の1、3分の1の声量にもできること。

つまり、フォルテッシモやピアニッシモが自由につけられる。

 

3.マイクを15センチくらい離しておいて、

発声したとき、高音部において、声がカン高くキーンとひびいたり、

ひびきの不鮮明な声、かすれた声にならない。

 

4.1オクターブ(8度)の音程で急に音を下げたとき、

その音を同じフレージングの流れのなかでとれる。

イメージで問題を解決する

 

 私たちは、イメージができないと、ものごとを成し遂げられないものです。最も効果的なのは、よいお手本を見ることです。アーティストのコンサートは、発表作品として、いろいろと演出や振り付けがしてあります。

そこから、その人の基本の力を見るのには、適していません。無伴奏、マイクなしの歌なら、その違いはよくわかります。外国人のヴォーカルの同じような課題があれば、それも参考になります。

 

 理屈を超えて、音楽を体現している人を見本にすること、これが一番よいのです。動画などを見るときも、わかりやすい場面を見ておくとよいでしょう。

 

 もちろん、見ただけではだめで、自分のイメージのなかでそれがうまく消化できないと、自分の体ではできません。わかってもできないのでは価値がないのですが、どんどんわかっていけばよいし、わからなくてもできればよいのです。できるかできないか、問われるのはそれだけです。

 

 例えば、一つのフレーズを、ピアノで弾いた後、すぐに歌わせてみます。難しくないフレーズは、頭のなかではわかったつもりになっているのですが、実際にやってみると多くの人はできません。こういう人は、自分の力がわかっていない人です。

 

 ピアノで弾いたときに、声を出して、それを捉えると、間違えません。最初10回かかっていたのが1回でできるようになれば進歩です。イメージでとれたら声で表現できるなら、基本の力となります。

 

全身を使ってすることの素晴らしさ

 

 体の中心から動いていないものは、ものになりません。それでは、人に対して価値をもち得ないというのが、私の考えです。

 

 カラオケは自分と仲間内で楽しめばよいし、ここで比較する対象ではありません。ここに出したのは、歌というものが、カラオケの高得点で満足してしまうものではない、もっと深いもの、一生をかけて築いていくのに充分値するものということを知って欲しかったからです。

 

 体から変えることによって、そこには自分の体を媒介とした表現が成り立ちます。自分の我というものを抜かして、もっと大きな世界が表出します。

 

 たった一人のアーティストに何万人の人が感動するのは、人を超えた力が働くからです。天の声といえるかも知れません。インスピレーション-霊感を受け、皆の前に立つ、とでもいいましょうか。

体を一つにして声を一つにする感覚をしっかりと捉え、その上で表現していくことを捉えてください。

 

カラオケはなぜ感動させられない

 

 カラオケを歌うのがうまい人は、たくさんいます。しかし、その歌で人を感動させられる人はあまりいません。何曲も続けないうちに満足させられ、飽きられてしまうのです。

 ここに、表現を考える上で多くのヒントがあります。カラオケの上級者をめざす歌では、本当のトレーニングの成果とはいえないでしょう。

 

 感動を与えられないのは、こなしているからです。特に、口先で作為的に変化させているようなのは、あまりに見えすぎるのです。そして、自己満足、自己陶酔の世界として完結してしまうのです。

同人誌の私小説みたいなものです。他人に対し、パワーやエネルギーがない、生きることに強いモティベーションを与えるに到りません。

 

 カラオケの音楽業界や日本人の歌唱への貢献は認めないわけではありません。しかし、声そのものの魅力を引き出さず、安易に機械に頼ってしまうようになった分、マイナスも大きいといえましょう。