声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -8ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
プロ、トレーナーも含め、トップレベルのヴォイトレ論を展開します。

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[ひびきを調節するトレーニング]

 

マイクを20cmぐらい離して置いておきます。

理想的な発声では、マイクに入る声が均一になります。

それは、声をぶつけているのではなく、息の流れで効率よくマイクに音が集まるからです。エコーをつける必要はありません。

息が流れていれば、ヴィブラートはしぜんにつきます。

 

自分の声を知るのにエコーは邪魔になるので、練習中はつけないでください。

発声練習のときにマイクを使うのも、お勧めしません。最大の弊害は、自分の身体で自分の声を覚えにくいということです。

しかし、ここでは、自分の声のひびきを自覚するため、マイクの特性を利用してみます。

キーンと鳴りひびきすぎる声(金属的な高音)は、力だけでもっていって息が流れていないからです。必ず力は息に通して声に伝えるように持っていてください。

マイクを通すと声が割れて聞こえるようでしたら、

ハミングの練習を、ひびきの焦点のキープ息を流すことに気をつけてやってみてください。

○浅くひびく音は要注意

 

音を上げていく練習で、一番上の音が浅くひびくことがあります。

これは、今あなたの声のなかでは歌に使えると思われる声ですが、トレーニングでは、まだOKとはいえません。

この音を低い音と同じように身体から、広くひびかない、しっかりした音として出してください。

この音の次の高さの音をつくるのに、その音に低い音と同質の声の幅と強さが欲しいのです。

ポジションを変えて声を伸ばしていくのでなく、同質の音を同じポジションで少しでも上まで一音ずつ広げていくのが、ベースの声域を広げるための最良の方法です。

途中で高く聞こえる細い声となってしまっては、その先をつくっていけません。

 

欧米のヴォーカリストは、高音部をそれほど高く聞こえるように歌っていません。

合わせて歌ってみればわかるでしょう。(強弱、強い息、子音、音色、発声の違い)

高いところでも高いという感じを抱かさずに声を出しています。

また高低の音質の差は少なくとも使っている声域の中の何音かの間で変わることはありません。

その声のしぜんさは、言語表現に通じた、身体の使い方のしぜんさからくるものです。

 

身体や息を使わないのに、広く浅くひびきすぎる音は歌うときのも使いにくいものです。

そのために、声には必ず息をミックスさせておくことです。

息にやわらかく声のサックをかぶせてやるような感じで声を出すと良いでしょう。

原則としてかすれてはいけません。

 

息は身体で制御できます。そこで吐けるし、叫べるし、すぐに止められること、言い切れることの方が伸ばすことより大切なのです。

ブレーキが効くからこそ車は走れます。息の通っていない声は暴走車であり、曲という規律のなかをうまく走れません。

感情も心も、それには乗らないのです。

[ひびきの線と「声の芯」をつけるためのトレーニング]

 

実際に歌を歌うとき、プロの身体は無意識のなかで必要に応じて動いていますから、身体に負担などは、さほど感じていないでしょう。

だからといって、その声から歌い方を表面でまねるのではなくて、身体の感覚から捉えましょう。特に、息とメリハリの鋭さの違いを感じてください。

息と音色が大きなヒントです。

 

ここからは、例えとして聞いてください。

欧米人やプロは70ぐらい、頭部のひびきで歌っているようですが、きちんと胸部にも30のひびきがあるのです。

一般の日本人、特に若い人や女性の場合は、頭部に30、胸部に5くらいがよいところかもしれません。胸部は頭部の支えにもなりますから、ほとんどない胸部の上に頭部を伸ばすのは無理です。

素人の場合、胸部を意識しないで頭部を大きくしようとあせっています。

これでは、無理な発声のくせをつくる原因となります。

歌をコピーすることから始めると、どうしても頭部ばかりに目がいきます。頭部は応用、胸部は基礎とでも捉えてみたら、どうでしょう。

基礎のないところに応用は効きません。

 

歌うことは、主として、頭部の領域です。

「ブレスヴォイストレーニング」は、胸部の強化を、もくろむものといってもよいでしょう。

胸部が30になることを考えてトレーニングをしたら、頭部が70になっていた。こうなるのが、短期に大きな効果を出そうとするトレーニングの一つの方向性です。

(この短期とは、しぜんに10年たってかわらないことを、4年くらいで得ること)

主として胸部の部分は、声を出す深いポジション、

つまり、日本人の発声の苦手とするところです。

 

胸部を最初に強化します。

できれば胸部を50、頭部を50まで持っていってトータルで100の声にするのです。それができたら、歌うときには、自分で使いやすい比率でやればよいでしょう。

しかし、最初はかなり胸部に肩入れしてもよさそうです。

というのは、なまじ歌ったりしていると、すぐ頭部ばかりの声になってしまいがちだからです。

 

日本語との問題でいうと、日本語の「アイウエオ」は、浅い息の上でかなり頭部寄りのことばです。

外国語には、胸部のところまでくる深い発音もあるのですから、歌うということに関する基礎づくりとしては、深い声の「AEIOU」、つまり、胸部をつくっていく方が有利でしょう。

ドレミのスケールで三音、半音ずつ上昇させたとき、最後の高い音に頭部のひびきがつくところがあります。ここが、あなたの胸部から頭部へ移るところなのです。

 

これは、スタッカートかレガートかでも、母音によっても変わります。

ここで意図的に頭部に変わらず胸部のままのポジションで同じ音質の音、同じ発声をするようにトレーニングするのです。

(発声では、一時バランスを失い、間違いと思われかねないのですが。)

それは、同じお腹の使い方ではできません。

 

最初は高い音ほど身体の支えを使わなくてはいけません。

音が低いところから高いところへ行くにしたがって、ポジションが胸から喉の方へ上がるのはその差の分だけ、身体を使っていないからです。

多くの人は1オクターブ下での低い音を、胸部で出すことができ、音質も同じようにそろっています。お腹を使うことで1オクターブ低いラから高いラまで同じように出せるようにしてください。

 

このように述べると、かなり特別な方法のように思われてしまうのですが、「ブレスヴォイストレーニング」は、欧米人や俳優の言語、声習得のプロセスを後追いしているだけです。

個人差の大きいヴォーカリストの、自分にしか通じない技術メニュとは異なります。

個人メニュ(特にプロのもの)は、そう簡単に他人が使えるものではありません。

 

○共鳴について

 

共鳴とは、空洞に音があたって、音が増幅されることです。

声帯が振動して出た音声が体内の共鳴腔(声道)で変化するとされてきました。

 

欧米人は、目のまわりがくぼんでおり、全体的に凹凸が激しく、日本人は、眉間から後頭部までの巾が短いです。これが発声に影響を及ぼすため、

「眉間にひびかせるよりも、意識はそこに集中させて、顔のほお骨あたりにひびかす発声の方が日本人向きだ」という人もいます。

私は、欧米人をまねるのでなく、自分の身体と音楽のなかで、声を考えていく方がよいと思っています。

 

なかには、呼気を共鳴腔にあてるように指導するトレーナーがいますが、しぜんに共鳴するのを無理に行うことは必ずしもよいとはいえません。

「軟口蓋をひきあげて声を出すように」といわれても、出ている声が弱々しいだけであれば、どうしようもないでしょう。もちろん、そのアプローチが効果的な人もいます。

すべては、さまざまなアプローチの一つなのです。

常に、「その声を使ってどうやっていくのか」で判断すべきでしょう。

 

日本人も、声帯や喉から下の身体に関しては、呼吸、腹筋、なども含めて、欧米人と比べても、それほど違いがあるわけではありません。

姿勢やスタイルもよくなったし、体格も見劣りしないようになってきました。しかし、言語の特徴と、育つ環境、とくに実社会での声の扱われ方には大きなギャップがあります。

音声ではっきりと自分の思うことを主張しないこと、社会や家庭での声への無関心など、

そういった言語レベルからして、声の問題は山積みです。

 

ヴォーカリストをめざすのなら、ここから声そのものを音として扱い、音楽にしていくことです。

歌いたい衝動が、声を介して、どのようにあなたの音楽になっていくのかが問われていきます。

今一度、声楽だけでなく、日本人の好んできた音楽、民謡や演歌をも含めて、

私たちは声を根本から考えていかなくてはならないのではないでしょうか。

 

 

○声楽っぽい発声を誤って使わないこと

 

頭部共鳴を学ぶ日本人のほとんどが、

地声でしっかりした声を身につけるのをなおざりにしています。

そのため、人並みの声も出ないうちに、

いかにも口先でつくったような発声をつくりあげてしまいます。

頭部共鳴が身につかないでいるのに、うまく響いていると思っている人も案外と多いようです。

その音には届いているものの、喉を閉めたり、ひびきだけに抜いているため、

腹式呼吸も活かせず、声を高度にコントロールできません。

歌の表現にも発声からの限界が生じてきます。根っこのない響きだからです。

 

1.ロングトーンをキープできない(「声の芯」をつかんでキープできない)

2.メリハリ、シャウトができない(声を練り込んだり、放したり、戻したり、自由に扱えない)

3.鋭い語頭の入り方、やわらかい語尾処理ができない

 

こういう声を出している人は、声楽をやってきた人や合唱団出身者などにも多いです。

そういう人は、自分の声は、ポップスに向かないというように思っているようですが、

そんなに応用できない発声などというのでは、何にも通じません。

録音して比べてみてください。

基本的なことができている人は、何でもそれなりにこなせるのです。

発声は、根本ではジャンルを問わず同じだと私は思っています。