[ことばで感情を表現することのトレーニング]
自分の体験をふまえてでも、想像でも構いません。歌の中にあなたの表現世界が真実味をおびて出現することが大切です。表れ出たものが、リアリティをもっていること、つまり生命感にあふれ、立体的に働きかけてくるように、です。いくら自分の体験したことでも、声を通して訴えかけるものが何もないなら、意味がありません。
そこで、イメージづくりとその表現のトレーニングをしてみましょう。
1.歌詞からイメージをふくらませて、原稿用紙(200字)で5枚くらいのストーリーを書く。
なるべく具体的に書くこと。(5W、いつ、どこで、誰が、何を、どうした)
たとえば、
(例)誰……どんな人、何を着ていて、髪の毛がどうで、どのような表情をしていて、どんな声で、何を話し、どのくらい会っていて、そのときどう思った、どう感じた、どうすればよかった、どうしたかった。
月……どこの空、いつ頃、どんな形、どんな色、輝きは・・・など。
2.自分がそのストーリーのなかの1人になり切って、それを語ってみる。
(どうしても無理なときは第三者の立場で、そのストーリーを語ってみましょう。どちらでも構いません)
・読むだけで聞き手が感動するように
・ことばは、はっきりということ
・間をとること
・メリハリをつけ、感情を豊かに表現すること
・話しおわったあとに、何秒かの沈黙(感動)がその場に流れるようにめざしましょう。
1つの歌詞でも、いくつか書き変えて、それに合わせて情景や心情描写ができるようになりたいものです。詩をつくるのも、よい勉強になります。
3.歌詞を読む。
1)素読 ゆっくりとていねいに正確に読む
2)速読 できるだけ早く間違えずに読む
3)大声でゆっくりと身体で読む
4)気持ちを充分、込めて読む
5)ことばの一つ一つが生き生きとするように、次々とつながるように読む
6)しぜんに読む
最初は、すべて発声に有利になるよう声をそろえてから、最終的に日本語らしく聞こえるようにしましょう。ここで、俳優の発声から、ヴォーカリストの発声への応用を行うわけです。
発声というよりは、日本語でのリアリティを保ちつつ、ことばから音楽への切り替えをするのです。
4.メロディを楽譜でとらえる。(譜読みする)
歌詞を読むときには、先程のストーリーがわずか1行、1語のなかに詰められているのですから、しっかりと、そのストーリーまで歌詞のもつ意味を失わず、イメージが広がるように読むことです。
メロディは、楽器でその音とリズムを正確にとることが望ましいでしょう。階名や「ラ」で読んでみましょう。足か手でリズムをとり、譜面を見なくとも、暗誦できるようにすることです。音がとれなければ、誰かにメロディ譜通りに、楽器で弾いてもらい、それで音とリズムを正確に覚えることです。
5.メロディにのせて、歌詞のことばを言ってみる。
これは、次のような方法を勧めます。特に3を重点的にやってみることです。
1)リズム通りに歌詞を読む
2)メロディ通りに歌詞を読む
3)歌詞をきちんと伝わるように読み、それにメロディをまき込んでいく(「メロディ処理」)
6.ことばを活かすように処理しつつ、メロディの味わいの消えないように調整して仕上げる。
このときは、ワンフレーズずつことばを台詞として、やや大きな声で感情を入れて読み、そのことばを活かすようにメロディをつけていきます。このとき、音楽の流れを妨げないように注意します。
ワンフレーズずつできたら、4フレーズずつとしてみてください。最終的に1曲すべてを構成します。
全体の流れをつかんだら、トレーニングとしては、部分の完成に専念する時期があってもよいでしょう。
コードだけを弾いてもらって、そのなかでフレーズを処理する練習もよいでしょう。語るように、歌うことです。