声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -7ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
プロ、トレーナーも含め、トップレベルのヴォイトレ論を展開します。

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○スタンダード曲を題材に比較しよう

 

最初の段階では、誰でも、アーティストの曲コピーから入るものでしょう。それならば、できるだけスタンダードな曲で、何人かのヴォーカリストがそれぞれ個性豊かに歌っているのを聞きましょう。比べるところからスタートすれば、とても学びやすくなります。オリジナリティや個性ということも、わかってくるからです。

 

歌を聞いたままに覚えていく人が多いようですが、これは必ずしもプラスになりません。アーティストにとって大切なのは、自分自身の作品をいかに創りあげるかです。誰かのまねをそっくりにできることではありません。もちろん、いろいろと参考にはなります。程度に応じて使い分けましょう。聞くだけ聞いて、よりすぐれたものを創ってみることです。

 

[ことばで感情を表現することのトレーニング]

 

自分の体験をふまえてでも、想像でも構いません。歌の中にあなたの表現世界が真実味をおびて出現することが大切です。表れ出たものが、リアリティをもっていること、つまり生命感にあふれ、立体的に働きかけてくるように、です。いくら自分の体験したことでも、声を通して訴えかけるものが何もないなら、意味がありません。

そこで、イメージづくりとその表現のトレーニングをしてみましょう。

 

1.歌詞からイメージをふくらませて、原稿用紙(200字)で5枚くらいのストーリーを書く。

なるべく具体的に書くこと。(5W、いつ、どこで、誰が、何を、どうした)

 

 たとえば、

(例)誰……どんな人、何を着ていて、髪の毛がどうで、どのような表情をしていて、どんな声で、何を話し、どのくらい会っていて、そのときどう思った、どう感じた、どうすればよかった、どうしたかった。

 月……どこの空、いつ頃、どんな形、どんな色、輝きは・・・など。

 

2.自分がそのストーリーのなかの1人になり切って、それを語ってみる。

(どうしても無理なときは第三者の立場で、そのストーリーを語ってみましょう。どちらでも構いません)

 ・読むだけで聞き手が感動するように

 ・ことばは、はっきりということ

 ・間をとること

 ・メリハリをつけ、感情を豊かに表現すること

 ・話しおわったあとに、何秒かの沈黙(感動)がその場に流れるようにめざしましょう。

 

 1つの歌詞でも、いくつか書き変えて、それに合わせて情景や心情描写ができるようになりたいものです。詩をつくるのも、よい勉強になります。

 

3.歌詞を読む。

1)素読 ゆっくりとていねいに正確に読む

2)速読 できるだけ早く間違えずに読む

3)大声でゆっくりと身体で読む

4)気持ちを充分、込めて読む

5)ことばの一つ一つが生き生きとするように、次々とつながるように読む

6)しぜんに読む

 

最初は、すべて発声に有利になるよう声をそろえてから、最終的に日本語らしく聞こえるようにしましょう。ここで、俳優の発声から、ヴォーカリストの発声への応用を行うわけです。

発声というよりは、日本語でのリアリティを保ちつつ、ことばから音楽への切り替えをするのです。

 

4.メロディを楽譜でとらえる。(譜読みする)

歌詞を読むときには、先程のストーリーがわずか1行、1語のなかに詰められているのですから、しっかりと、そのストーリーまで歌詞のもつ意味を失わず、イメージが広がるように読むことです。

 

メロディは、楽器でその音とリズムを正確にとることが望ましいでしょう。階名や「ラ」で読んでみましょう。足か手でリズムをとり、譜面を見なくとも、暗誦できるようにすることです。音がとれなければ、誰かにメロディ譜通りに、楽器で弾いてもらい、それで音とリズムを正確に覚えることです。

 

5.メロディにのせて、歌詞のことばを言ってみる。

 これは、次のような方法を勧めます。特に3を重点的にやってみることです。

1)リズム通りに歌詞を読む

2)メロディ通りに歌詞を読む

3)歌詞をきちんと伝わるように読み、それにメロディをまき込んでいく(「メロディ処理」)

 

6.ことばを活かすように処理しつつ、メロディの味わいの消えないように調整して仕上げる。

このときは、ワンフレーズずつことばを台詞として、やや大きな声で感情を入れて読み、そのことばを活かすようにメロディをつけていきます。このとき、音楽の流れを妨げないように注意します。

ワンフレーズずつできたら、4フレーズずつとしてみてください。最終的に1曲すべてを構成します。

全体の流れをつかんだら、トレーニングとしては、部分の完成に専念する時期があってもよいでしょう。

コードだけを弾いてもらって、そのなかでフレーズを処理する練習もよいでしょう。語るように、歌うことです。

 

○高低アクセントより強弱アクセントを意識する

 

日本人は、音のなかで高低には敏感ですが、強弱にはとても鈍いのです。日本語の言語感覚によるからです。

欧米は強弱の感覚が中心です。ことばの強弱がそのままリズムグルーヴとなり、歌になったのが、ロックやゴスペル、ジャズを中心とするポピュラーミュージックといえましょう。

 

たとえば、皆さんに、「作曲してみなさい」というと、何個かの音を高低に散りばめませんか。そして、次に音の長短をつけるでしょう。それで、完成だと言う人が大部分です。これで楽譜の形にはできます。

でも、まだ強拍、弱拍がついていません。心臓が「ドッ」「クン」と強弱に打つような拍がないのです。

リズムグルーヴ感は、音楽にとって、もっとも大切なものなのですが、日本人には、あまり身についているとはいえません。日本人の英語が、英語らしく聞こえない大きな要因のひとつが、この強弱リズム、特に強拍で、強く息を吐かないからです。

 

音の長短より強弱が大切な要素なのです。そのために、この切り替えのトレーニングをしましょう。

同じ歌を、英語やイタリア語と日本語で聞き比べてみましょう。

欧米の言語を音源を聞きながらリズム中心に習得していくのも有効です。

○アフタビートの感覚を身につけること

 

日本人は強弱をはっきりさせずに歌いがちです。強弱をつけるにも、決まって頭に強拍をおいていました。

たとえば「Baby」を「ベービー」と歌うので、日本人ぽく(音楽らしくなく)聞こえます。これを「ベエイビイ」と歌うだけでなんとなくそれらしく聞こえます。そんなところから始めてみてください。

 

向こうのプレイヤーの弾き方は感覚的にもアフタビートです。音が後からグーンと伸びるようです。すると、ヴォーカリストものりがよくなります。心地よいし、歌いやすく、うまくしぜんにフレージングがつながります。

 

日本人は、元来、農耕民族で、鍬を入れるリズム、「いちにい」の2拍子、頭打ちのリズムが身体の中に根強くあるわけです。

一方、向こうはワルツなどの均等でない三拍のリズムが中心です。騎馬民族の馬に乗っているときの感覚です。ダンスミュージックなどをたくさん聞いてみるとよいでしょう。空を舞っていくような跳躍感覚を身につけてください。(このあたりは、拙書「ヴォーカルの達人 音程・リズム編」を参照のこと)

 

[リズムのトレーニング]

1.縄跳びをする(トント、トント、トント、トント・・・)

2.歩くときに、右手で拍を割って右足の太股を叩く

1)右足が地面についたとき1回、左足が地面についたとき1回

2)右足、左足の2歩のなかで4回、等しい間隔で

3)右足、左足の2歩のなかで3回、等しい間隔で

3.いろいろな音楽をかけて、そのリズムで手足をバラバラに動かしてみる

4.ドラムを叩いてみる

 

○歌のなかにリズム感が出るように

 

身体の中にも、リズムは脈打っています。1分間におよそ60拍が心臓、脈拍です。呼吸も吐いて吸ってでひとつのリズムをもっています。

これがBPM(Beat Per Minute)=60(アダージョ BPM50~63)です。

 

歩くテンポにもリズムがあります。普通の速度で、アンダンテ(BPM:72くらい、63~76)、やや早く歩くとアレグロ(BPM:132くらい、120~152)となります。

ゆっくりと歩きながら片手で腰を打ったり、口でリズムの拍をとってみましょう。慣れたら、少しずつ速くしていきます。一歩のなかを2拍、3拍と刻んでいきます。

 

リズムをとれるのは当たり前、本当はあなたの歌の中に、リズムの躍動感が感じられるようでなくてはなりません。伴奏なしに歌っても、歌っている声の中にリズムが感じられるようになるところまで、がんばりましょう。