声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -6ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
プロ、トレーナーも含め、トップレベルのヴォイトレ論を展開します。

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○声の成長と声域について

 

十代のうちは、自分の声域についてはあまり気にしなくてもよいでしょう。

身体という楽器自体が変わっていくのに、声の出る範囲を決めつける必要はありません。

声変わりしてからも、本当の大人の声として安定するには、何年か要するのです。

ですから、つねに柔軟に、自分の声の完成度を踏まえて無理のない声の使い方を心掛けたいものです。

 

変声期になると、男性の喉は、喉頭が「アダムのリンゴ」といわれるように前に突出します。そして、声帯が前後に長くなります。声帯が長くなると声は低くなり、男性特有の太い声になるのです。

変声期は、高音も低音も不安定で出にくくなります。

また、それまでと発声の感じが変わるので、うまく声を扱いにくくなります。徐々に自分の声に慣れるようにしてください。

 

変声期が終わったら、すぐに声が使えるのではなく、充分な訓練期間が必要です。

あわてて、無理な発声で、大切な喉を痛めないように注意してください。

女性にも変声期はありますが、男性ほど顕著な変化が表れません。

ともかく、声にパワーがついて、自由に使いこなせるまでには、時間がかかるのです。

あせらず基本的なトレーニングを充分にしておくことをお勧めします。

声帯の長さは、身長に比例するといわれます。低い声を出せる人は大体、背が高いのです。高い声は、声帯の使い方で伸ばすことができます。

 

○硬い声や息のもれる声の原因

 

発声とは、肺から気管を通って吐き出される息が、声帯を振動させて音(喉頭原音)を生じることです。

声を出すときには、左右の声帯はある緊張度を持って閉じます。吐く息がこれを開くときに声帯が振動し、声を生じます。

このとき、声帯が閉じた後に、呼気がでると硬い声になりますし、逆に息の方が先にもれると、気息音といって息の出る音がもれてしまいます。

 

吐く息の力が弱く、声帯が充分に振動しないと、細く、か弱い声となります。

逆に必要以上の声を声帯にぶつけると、荒っぽい声となります。

つまり、吐く息と声帯の声門の閉じるタイミングが合うと、効率のよい発声となります。

(イメージ)

このタイミングをうまくコントロールして、やわらかく疲れない声を出せるようにしてください。

もちろん、歌の表現においては硬い声や気息音も、ウィスパーヴォイスやハスキーヴォイスも効果的に使えることもあります。

しかし、ヴォイストレーニングのときには、あえて使わない方がよいでしょう。

 

○声の高低、音色とは何か(声のもとをつくる声帯のしくみ)

 

声帯を初めてみたのは、スペインの声楽家マヌエル・ガルシアという人で、1854年のことでした。

鼻腔、口腔につながる管状の部分を咽頭といいます。

長さは12~15cmぐらいです。

そこから分かれた気管の入り口にあるのが喉頭です。これは男性では4cm、女性が3cmぐらいです。

男性ではその外側をとり囲む軟骨部分が首の前面に隆起しています。

 

あごの下に手をあて、つばを飲んでみてください。

固いものが上がり下がりします。これが喉頭です。

咽頭は、空気の通る気管と食物の通る食道の分岐点です。

それに対し、喉頭は呼吸のための空気の通り道の広さの調節をしています。

 

この喉頭にVの字の尖った方を前にする声帯があります。

そこでは、咽頭原音といわれる声の元となる音をつくります。

声帯は、帯状ではなく唇のような厚いものです。

通常は、白い象牙色をしていますが、炎症時には赤く充血します。長さは男性で17~23mm、女性で12.5~17mmくらいです。

○よい声の条件とは

 

一般的に、よい声とは、どのような声をいうのでしょう。

まとめてみると、次のようなことになります。

 

1.息がしぜんに流れ、無理が感じられない

2.潤いとつや(音色)がある

3.太くて芯がある

4.声域が広く、声量がある

5.柔らかく、メリハリがきき、応用性に富む

6.長く出し続けても、大きく出しても、喉が疲れない

 

声が細く喉がすぐに疲れるという人や、声帯をすぐに痛める人もいます。

だからといって、俳優やヴォーカリストに向いていないとはいえません。

むしろ逆に、そういう人ほどよい声帯を持っている場合もあります。

もちろん、独自のトレーニングあってのものですが、

声が弱くても、自信をもってトレーニングに励むようにしてください。

 

○十人十色の声色

 

指紋と同様に、声にも、声紋というものがあります。

それをもとに個人の識別ができるので、犯罪捜査などに使われています。

(声の科学的分析については、私が、その第一人者と共著で出した本を参考にしてください)

これは、声がその人独自のものであるから可能なのです。

顔が似ている人や親子で声が似ているのは、共鳴のしかたが似ているからです。似た骨格をもつと似た声が出ます。

しかし、それをどう使うかで、せりふや歌は違ってくるのです。

自分だけの財産としての声も、そのままでは原石にすぎません。

丹念に磨き上げ、価値あるものにしていきましょう。