声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -6ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
プロ、トレーナーも含め、トップレベルのヴォイトレ論を展開します。

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◯ハミングのトレーニング

 

 ハミングのトレーニングは、ファルセットや共鳴など、

高音のひびきの統一に使われています。

眉間や頬骨に音を集める感じで集約していくとよいでしょう。

 

ここでは、低いところで息と声をしっかりと

ミックスするために使ってみましょう。

これを私は、胸のハミングと言っています。

 

 首の後ろあたりに、息が振動しているように感じ、

耳や鼻がくすぐったくなる人もいます。

呼気の保持と、声が均等に揃うことを念頭におくように行なってください。

 

 1)ンー ラーー

 2)ンー ラー ンー 

 3)ンー ラララ

 4)ンラー ンラー ンラー

 

 それぞれの課題が、一つの線でつながった声で聞こえるかどうかをチェックしてください。

不自然につくった声では、ハミングからことばにスムーズにつながりません。

のどにかかり、ビリビリとなるようではよくありません。

 

それを回避するのに、口先に浮かした声でひびきをまとめる方向にする人もいます。

これは、マイクを使えばつながっているように聞こえるのですが、

それだけではヴォリューム感や魅力に乏しく、

体の線、声の芯と共鳴がしっかりと一本通って見えてきません。

相手にしっかりと働きかけないということになります。

 

 ハミングは、ことばを使わない分、力が分散せず集まりやすいのです。そこで共鳴の調整によく使われます。

のどが疲れているときや、発声トレーニングの終わりに行なうのも効果的です。無理してあまり広い音域を取らないようにしましょう。

ハミングは、口のなかで音を加工しにくいため、最初は少し声が出にくいです。ごまかしがきかないのです。その負担が体にくるようにしたいものです。そこで私は、頭部でなく、胸部のハミングを優先しています。

行っているトレーニングが、本当に有効になっているのかをチェックしてください。腹式呼吸がしぜんに行なわれないとか、呼気が大きく出ているのに声に結びついていないということがあってはいけません。確実に声を支えるものとして、息と体を捉え直すことです。

 

◯ことばのフレーズのトレーニング

 

 ことばを体から一つのフレーズとして捉えるトレーニングをします。

 母音は、口内ですでにアイウエオと発音されています。

それをヴィジュアルとして明瞭に示すとともに、

調整するために、口型をつくるのです。

 

口の形を整えることによって、声のヴォリュームを損なわないことです。

外国語のAIUEOは、日本語より強く、息も共鳴も使います。

そのAIUEOの感覚を捉えて欲しいわけです。

アオイでなくAOIであって欲しいのです。

 

これを一音ずつ(難しいときは半音でもよい)

ベース音を上げていくのです。

3連のときは、少し強く、強く、より強く

という3パターンを繰り返していくとよいでしょう。

◯1オクターブからの方針

 

 1オクターブが同じ発声で体から出せるようになったら、表現を中心に考えていきましょう。

しかし、このときに、先の二つの練習のことを考えてみてください。

 

 ひとつは、これを同質を第一にして声域を広げていくこと、つまり器づくりの継続です。より強い体、強い息、強い声、そして強い結びつき、コントロール力をつけていきます。オペラ歌手なら、この方向を維持することでしょう。

 

 もうひとつは、このまま、自由に表現して、歌い込んでみるということです。

その人のオリジナリティ、味、作品に直接、結びつくもの、個性を優先します。

体がしっかりと支えられていたら、どのようになっても声としてのベースは失われないはずです。

 

 練習としては、次のようになります。

 1)その日の声のベストを出すこと。

 2)それをフレーズに応用してみること。

 3)それを歌に応用してみること。

(うまくいかなくなったら、戻ってやり直す)

 

◯1オクターブあればよい理由

 

 なぜ1オクターブにこだわるかというと、1オクターブをしっかり出せるようになれば安定するからです。安定すると、それでよいのでなく、そこからトレーニングが身につく土台になるからです。

 

 日本人の発声は、歌を歌うとき、胸から離れて口先だけになっていることが多いのです。イメージとしては胸の声(A)です。「ハイ」と言えば、胸にひびくしっかりした声をもっている人でさえ、歌うと、その半分のヴォリュームもなくなってしまうのです。

声に芯をもっている人さえ、歌うときには、か細い線になってしまうわけです。そこは、頭の声(B)に切り替えてしまっているのです。

 

 これを、(A)で通じるのだから、(A)を中心に考えようとしたのが、ブレスヴォイストレーニングなのです。多くの人は、歌うために、高音域まで2オクターブ近く必要だから(B)の線を取るのです。私は、表現として(A)を優先したのです。それを1オクターブまで広げることを一つのトレーニングとしました。

 (B)の場合は、これが高低どちらに伸びても、もともと表現に足るところがないので弱いのです。口先では音域が伸びたりもとに戻ったりするだけです。

 (A)の場合は、少しずつでもその後に、確実に伸びていくのです。人によって1音からつくる人もいれば、1~2音はOKだから3音くらいからつくる人もいます。その人のレベルによってどこからでも入れるのです。

 このときに、最も大きな違いというのは、トレーニングによって、どこがどのように変わるかということです。

 

(B)では、さらにくせをつけて固めていくので、いつまでたっても自分の本当にしぜんな発声は出てきません。

この、しぜんな発声というもの自体に誤解が多すぎるのです。それは、生まれもった声であっても、それゆえ、そのまましぜんな声ではないのです。魅力的な声を出せていないとしたら、この勘違いです。

(A)の方は、体から出る声でつくっていくのですから、体が少しずつ強くなり使えると変わっていきます。プロの声を出すのにふさわしいプロの体と感覚になっていくのです。そこで出る声を、私はしぜんな声と言っています。つまり、潜在している能力を開発した上でのしぜんなのです。

 

 1オクターブできたときに、どのようにでも歌えばよいのです。体でしっかりと息が支えられ、声の芯があるなら、ひびきだけで歌っても(B)とは雲泥の差がつきます。

 

 低音域から中音域にかかるところをつくるプロセスは、そのまま、その先の体づくり、声づくりにも使えます。それを中音域でしっかりと覚えたら、調子を崩すことも稀になります。仮に不調になってもすぐに直せます。声に支障は出ません。いつでもどこでもベストを出せる、体調が悪くても声の力は落ちないので、活動を持続できるのです。

 

 1オクターブをつくるのは、日常の話声域から高い方へ半オクターブぐらいです。これで歌えるようになったら、歌いながらその中でヴォイストレーニングもできるのです。

 

 半オクターブくらいでは、歌うのはなかなか大変です。すぐに(B)の方へ移ってしまいます。もとに戻りません。1オクターブであると、その上の声域で(B)になっても、そういうサビの部分を持ちこたえればよいのです。

急に音が下がったときに(B)の線上で歌っていた人というのは、うまく声になりません。

ところが(A)のベースとなるところがしっかりとしている人には難なく歌えるのです。

 

 (A)のトレーニング方法は、表現を第一に考えると、そうなっていくものです。体と息と声を一体化させ、体を一つにして使えるようにしていくのです。中心は、日常の低い方の半オクターブの深化です。だから、毎日、少しずつですが着実に力がつくのです。

○感覚を大きめに読み込む

 

聞こえたのを拡大してみることです。

「少し伸ばしたのを、長く伸ばす」

「少し鋭く切ったのを、もっと鋭く切る」

「少し悲しそうなのを、ものすごく悲しそうにする」

こうして、感覚のコピーを目一杯、大げさにやってみてください。

どんなにやっても、まだまだ足らないはずです。

 

プロが変じたようにまねするだけでなく、それと同じ数ほどの動きを自分でそこに作ってみましょう。変化できる可能性を見いだすことです。曲の本質とその可能性を見抜くのです。