声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話 -5ページ目

声、語り、歌、ヴォイストレーニング1日1話

歌手、声優、俳優、芸人、ビジネス、一般、声に関心のある人に。
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◯語りとフレージングのトレーニング

 

 大きな声で読み、少しずつ小さくしていく、そのうち、語る力がしっかりとついてきます。

すると、フレーズが感情を伴って処理できるようになります。

 ことばを読んで、それにメロディをつけて、

早め、強めに言い切るトレーニングをしましょう。

 

しっかりとことばを言い切れるようになると、

ことばのなかにフレーズができて、

メロディをうまく処理できるようになってきます。

 

そこのメロディの音のなかで一番高い音で読むとよいでしょう。

ことばと感情、それにメロディ、つまりは、心身と歌との一致をめざしてください。

 

 

◯フレージングでメロディを動かす

 

 フレージングというのを、私は、息と声の一致した線の動かし方と捉えています。

歌えるということは、ことばでも、そこに深い息がミックスされていて、

シャウトもピアニッシモの表現でも、感情のおもむくまま自由にできるということです。

 

 歌っているときに、しっかりと一本の線が描けていなくてはいけません。

その線を感じさせてくれるのが、声の深さ、声の芯です。

その深さや芯がないと、歌の線がしぜんとは出てきません。

エコーのかかりすぎたカラオケの歌のように表現力がやわに弱くなってしまうのです。

 

 それをメロディで自在に動かして、自分がその歌をより自分らしく、

より大きく伝えられるために歌い込んでいく、これがトレーニングなのです。

それが充分にできたら楽譜に戻って合わせてみるとよいのです。

 

ヴォーカルは楽譜を歌うのでなく、歌を歌うのです。自分なりの表現で歌の心をつかんでから、歌わなくてはいけないのです。

表現者である限り、イメージとして感じても、

その感じを声で表現できないのでは意味がないからです。

 

自分が表現するのだから、

自分にしかできないところ、自分ならできるといったところで打ち出していくのです。

それはイメージと体との相克であり、イメージに伴うだけの体づくり、

声づくりをするということです。

その上で、限界となれば、イメージを変えるか、

体、声で足らない分、他のことで補うのです。

 

 

[フレージングのトレーニング] 

 

 次のことばでフレーズにしてみましょう。

 

1)「つめたい」(レミファミ)

「つーめたい」

「つめーたい」

「つめたーい」

「つめたいー」

 

2)しっている(レミファミレ)

「しっている」

「しってーいる」

「しっていーる」

「しっているー」

 

3)わたしは(レミファファ)

「わーたしは」

「わたーしは」

「わたしーは」

「わたしはー」

「わーたーしは」

 

◯体から声を出すことのキープ

 

 高い声を出すのに、体をより使って声をつかんでいないと、

ヴォリュームはダウンします。高く割れたり細くカン高くなります。

声の芯をしっかりと維持していると、しぜんにひびきが出てきます。

ひびかせた声は使えません。ひびいた声を求めることです。

 

 低音域や中音域で体を使うことのできる範囲を広くすることです。

高い声にあてている人は多いのですが、

実際に芯を捉えて使えている人は少ないのです。

 

使えるとは、体からしっかりと声を出せているということです。

日常会話で話している声域と、そこからかけ離れた高い声域では、

どちらが大変であるかは誰でもおわかりでしょう。

実際は、高いところになるほど体や息が使われていないのです。

 

声を体でしっかりとキャッチできていないから、

やや高くすると体がはずれてしまうわけです。

高いところの方が体の力も息の力も要るはずです。

もちろん、高音は、息や体の力で出すのではありません。

小さく弱い高音は、脱力だけでも出せます。

ここでは、トレーニングにおいては、その方向で体を使って、

声をつくることを目指しているのです。

 

 

[使えている声域のチェック]

 

1)声の出やすいところの音(高さ)を見つけます。

2)その音を「ハイ」「ラララ」で出します。

3)半音ずつ下げていき、のど声や息になってしまったら、

その前の最下音を確認します。(a)

4)そのときのポジションをキープしながら、半音ずつ上げていきます。

「ハイ」に対して「ラララ」が言いにくくなったところ(ボリュームダウンして体が使えなくなったところ)を覚えておきます。(b)

5)高くして「ハイ」という音のヴォリュームが、

半音下の音よりも出せなくなったところを覚えておきます。(c)

6)高くして「ハイ」とストレートにいえなくなったところを覚えておきます。(d)

 

 体の声としてできているのは(a)、歌えるのが(b)まで、声として届くところは(d)、ということです。多くの人は、(d)よりもさらに高い音で歌を歌っています。

そこで、ヴォリューム感がでてこないのは、当然です。

 

※これは、ヴォイトレでのアプローチの一つとしてのプロセスです。息が強くないと高音が出ないのではありません。ここでの体とは、深い息でのコントロールを示しています。高音域まで、そのままにもっていくのは、ベルディングという方法です。声楽でもポップスでも、必ずしもすべての人に当てはまるわけではありません。個人差、のどと歌唱のスタイルにもよりますので、うまくいかない人は無理をしないでください。

 

◯高い声でのポジションの維持

 

 高い声になるにつれ、そこでの声の使い方、表現の仕方に大きな差が出せます。

高い声とは、より強く表現するパワーがあるのですから、

そのプロセスでは、より強く体や息や声を使うわけです。

結果としては、弱く小さな声を使うこともあるし、

それだけを使っている人もいます。

 

 低いところでしっかりと声を捉えて、高くなってもそのポジションを、

できる限りキープすることが肝心です。

 

キープするためには、ブレスや体の力と声のコントロールが必要です。

この必要性を与えて耐えられるようにしていくと力となります。

それを獲得して同じように使えることが、技術なのです。

 

大半のケースでは、急いで、キープよりも口内での共鳴を変えることで

高い音をとりに安易にいきます。

先述したA→B→Cが早すぎるということです。

 

しっかりした基本の上に伸ばしてきた高い声は、間違えません。

間違えたら、のどを壊してしまうからです。

そこまでに、体や息の力を少しずつ強くし、

コントロールの仕方を体で覚えてきたからです。

 

 

[ポジションをキープするトレーニング]

 

(1)ハオ、ラオ、ララ

(2)アオイ、トオイ、ラララ

 

 これを、半音ずつ上げたり下げたりして、大きな声で言ってみましょう。

音色が変わらないようにできるところまででよいです。

 

◯ひびき(共鳴)のトレーニング

 

 高音をひびきだけに頼っていると、メリハリ、パワーが伝えられません。

単に高い音を届かせるためだけに声をひびかせて、キンキンになっているか、

それを避けてこもらせていることが多いのです。

本来は、ひ弱すぎて使いものになりません。

低、中声のところでのベースがないから、ひびいているのでなく、

くせをつけてひびかせたり、ひずませたひびきを使っているわけです。

こんな高音では、聞いても快感や充実感は程遠いでしょう。

高いところというのは、相当のエネルギーが必要とされるのです。

 

 高音になるにつれ、のどが閉まって苦しくなる人も少なくありません。

原因の一つは、喉頭が上がってしまうことです。

のどを開ける方法としては、喉頭を下げるよりは、軟口蓋の上、

鼻腔など、ひびきを当てるところをうまくイメージすることです。

 

A)鎖骨の中央のくぼみ

B)鼻の上部、みけん

C)頭の上、てっぺん

 

 高音になるにしたがい、A、Bの順に、集めるイメージをもつとよいと思います。

何事であれ、1点に集中すると、他のところの筋肉などが弛緩し、余計な緊張、しめつけが取れやすいからです。

 そのときに胸が基本となることを忘れないでください。

 

これをマスターすると、生き生きとしたパワフルな声が出せます。

せりふや低、中声においてはこれでも充分なほどです。

やや暗い音色となります。

 

 その上で高音のひびきを捉え、それをコントロールできるようにしていくのです。

体を効率的に使って声域を広げていくのです。