Futeng is one of the dozens of property developers that have sprung up in Chinese cities over the past decade, as entrepreneurs parlayed contacts with local government officials into lucrative real estate deals.

(Futeng不動産は、過去十年の間に中国の都心部で急増した不動産業者のうちの一つである。多くの起業家が地元の公務員とのコネを利用して有利な不動産案件を得ることに成功した。)

(1) parlay

賭け事をする方ならピンとくるかもしれません。賭け事で「パーレイ法」とは、賭けをして勝った場合、元金ともうけたお金を次の賭けにつぎこむことを言うそうです。
一般的には「資金や才能などを富や成功を得るために利用する」という意味で使います。

He parlayed his intuitive salesmanship into an important post in his company.
(彼は鋭い直感による販売手腕を活用して会社で重要な地位を得た。)


(2) lucrative(=profitable)

「儲かる」、「利益が出る」という意味です。

Yet while pig-breeding seemed a smart move a year ago, it does not appear quite so lucrative now.
(肉豚生産への参入は数年前であれば賢い選択と思われただろうが、現在ではあまり儲かる商売には思えない。)



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China’s developers have pig of a year
Published: November 4 2008

Trains carry China growth hopes
Published: November 5 2008


中国の都心部で土地バブルが弾け、多くの不動産業者が廃業に追いやられました。ところが、南京の不動産業者の多くは既に次のビジネスチャンスを狙って転身をはかっています。

新しいビジネスチャンスとは何かといえば、、

それが、「養豚場」なのです。

Futeng不動産の重役の話では、今後政府が積極的に推進するのは地方の農村での政策。豚に投資すれば、政府を味方につけることができると言います。Futeng不動産の創業者はCheng Junlingさん(女性)で、不動産業の前は製鉄会社のオーナーでした。不動産業に参入して初めてのプロジェクトは’Women’s Street‘で大きな成功を収めたそうです。その後カラオケバーなどのプロジェクトをいくつも手掛けたのですが、外資が参入してきたため、業績は下火になり、地価が高騰したために難しい局面に立たされました。そこで、地価の安い地方で農業を始めます。南京から4時間ほど離れた農村地帯に280ヘクタールもの土地を購入し、今年の3月から豚を2万頭育てています。Yufa不動産も同様に来月から養豚場を始めます。これらの不動産会社は、昨年9月ころに中国の地価がピークを迎えたころには既に農業への投資を始めていたそうです。

ところが、FTの記者は首をかしげます。昨年は、’blue-ear disease’と呼ばれる豚の疫病が流行したことで一時的に豚肉の供給不足に陥り、価格が高騰しています。しかし、今はそれほど需要があるわけではない。では、なぜ養豚場なのか?

答えは、養豚場に隣接する土地で建設中の鉄道駅にあるようです。北京と上海をつなぐ高速列車が停泊する予定の鉄道駅です。究極の狙いは、将来見込める不動産収入ということのようです。

中国政府がその景気刺激策でもっとも力を入れているのが鉄道建設です。2010年から2020年までの期間で建設予定だったプロジェクトを前倒しして積極的に公共投資を行う方針です。そのチャンスに乗り遅れまいと昨年から準備をしている不動産業者の逞しさに驚きます。


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Ethanol hangover
Published: November 4 2008

VeraSun files for protection
Published: November 2 2008


ついに、米国大統領選の投票が開始しました。

圧倒的に民主党のオバマ議員が有利と言われていますが、米国のみならず世界経済が下降を続けるなかで、着任後に果たして有効な政策を打ち出し不況を克服することができるのかどうか不安が残ります。

米国経済の急速な落ち込みを前に、楽観的な声はほとんど聞かれないのですが、少し前まではオバマ議員と言えば「エタノール」というキーワードが浮かびました。オバマ議員の地元はトウモロコシ生産第二位のアイオワ州。ロビイストからの影響は受けないと言われている一方で、共和党のマケイン議員の公約内容と比較すると、明らかにエタノール推進派といえます。

FTが先週エタノールを特集として取り上げているのは偶然ではなく、原油と共に急落してしまったバイオ燃料やエネルギー関連産業の回復によって実需が生まれるのではないかと淡い期待が寄せられているからでしょう。


エタノールは発展途上国で食糧危機を招いたとされ、批判的な声も聞かれます。実際にエタノールが食糧危機の引き金になったかどうかについては様々な議論がありますが、今年に入って価格が急落したのは、政策によるものではなく、エタノールの精製業者が増えすぎて供給過剰になっているところに、トウモロコシの原価が急騰したからだと言えます。既に競争が激化していたエタノール業界で、今度は金融危機で大打撃を受け、破綻してしまった企業もあります。トウモロコシの原価が下がったとは言え、エタノール自体の価格も下がっているためマージンは得られず、苦しい状況が続いています。

2005年にブッシュ大統領のもとでエネルギー政策法(Energy Policy Act 2005)が成立したのち、急激に膨らみ一気に吹き飛んだエタノール・ブームを象徴しているのが、11月2日に破産申告をした米VeraSun Energy社です。2001年にエタノール生産を手掛ける会社として設立されたのち急成長を遂げ、2006年に上場した際には株価が34%跳ね上がり話題になりました。年間約16.4億ガロン(世界の年間消費量が約96.4億ガロン)のエタノールを生産し、国内16州に工場を持っています。ところが、同社の株価は上場した時期から98%も下落し、破綻に追い込まれました。

しかし、長期的な視野に立てば、エネルギー政策法はまだ有効であり、この法律に従えば2022年までにガソリンのエタノール混合率は現在の4倍になっている計算になります。米国におけるエタノールの総売上高は年間200億ドル(約2兆円)なので、需給が緩めばまたビジネスが成り立つはずです。ただ、参入障壁が低いだけに収益は挙げにくく、投資家はあまり期待ができないというのが引用記事の内容です。

オバマ議員が演説で「環境技術について欧州や日本に頼る必要はない。米国の産業として育成することこそ大事だ。」といった内容で聴衆を鼓舞していたのが印象に残りました。エタノール産業と言っても、トウモロコシに限らず食品とは無関係な藻類(Algae)を利用する技術開発や、ハイブリッド車などエタノールを使った自動車、飛行機、機械など様々な分野での技術革新への波及効果があります。現在の経済の状況でどこまで積極的に推進していけるのかは未知数ですが、新たな産業を育成するのであれば、「エタノール」というキーワードが再び浮上してくる可能性が極めて高いと考えられます。


それにしても、一昔前の雑誌を引っ張りだして見てみると、猛烈なスピードで世界経済の歯車が逆回転したことを改めて実感します。8月11号のエコノミスト誌は穀物と原油の特集で、今年の原油価格は140~170ドルで推移するという予測もありました。ちょうどオリンピックの最中でしたが、あれからまだ3ヶ月です。今から3ヶ月後、少しでも安心できる環境にいられるよう、新大統領の活躍に期待したいと思います。




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Blink and you miss a competitive advantage
Published: October 20 2008

Banks in global race to woo key Lehman staff
Published: October 29 2008

Questions emerge on Lehman’s ‘dark pool’ project
Published: October 29 2008


なんだか、スパイ映画に出てくる怪しいプロジェクトのコードネームのようですが、ロンドン証券取引所(LSE)が6月に始めた”dark-pool”プロジェクトのコードネームであると聞くとますます怪しげです。そしてこのプロジェクト、実は野村HDの手中にあるのです。

この一つ前のブログ記事でMTF(Multilateral Trading Facilities)を気軽に引用してしまいましたが、日本で言えばPTS、つまり電子取引市場のことです。日本でPTSが解禁されたのは2000年、電子取引が盛んになったのは2004年の証券取引法改正後ですが、この分野ではEUよりも先輩格のようです。昨年の11月に欧州連合(EU)がMifid(Markets in Financial Instruments Directive 金融商品市場指令)を施行し、各国間で自由に取引ができるようにすると同時に、MTFを解禁しました。その後、Chi-X、Turquoise、NasdaqOMXが取引市場に参入し、みるみるシェアを伸ばしています。Chi-XはFTSE100での取引のうち14%のシェアを確保し、今の所最大の電子取引所になっているのですが、Chi-Xを管理しているInstinet社は、野村HDの100%出資会社です。つまり、日本が先陣を切っていることになります。

ただ、米国で高シェアを獲得しているBATSが欧州市場に参入することで競争が激化してきています。MTFの競争優位性は取引のスピードと手数料にあり、今のところ、ヘッジファンドや金融機関のブローカーは全ての取引所(trading venue)にアカウントを持ち、一番有利な取引を選択しているという状況です。

このような通常のMTFの他に冒頭に挙げた‘dark pool’(⇔’light pool’)と呼ばれる匿名性の取引所が最近注目を集めています。特に旧来の証券取引所がMTFとの競争に打ち勝つため、積極的にプロジェクトを推進し、NYSE Euronextは’Octupus’というコードネームでプロジェクトを立ち上げ、HSBC、BNPパリバス、JPモルガンとの共同プロジェクトであるSmartPoolは今月から稼動する予定で、欧州初の’dark pool’になります。


冒頭に挙げた、’Baikal’は、LSEが旧リーマン・ブラザーズとのジョイント・ベンチャーで6月に立ち上げたばかりのプロジェクトだったそうです。旧リーマン欧州事業の中核を担うはずだったプロジェクトで、700名のチームが組まれているそうです。そのチームの90%が野村HDに吸収されています。現在、旧リーマンの欧州スタッフをめぐってバークレーズ・キャピタルと野村HDの間で人材争奪戦が繰り広げられているというニュースもあり、このBaikalプロジェクトは特に重要のようです。このプロジェクトで成功できれば、世界トップの金融機関として堂々と胸を張れるような気がします。




ところで、The View from the MarketsにChi-Xのライバルとなる米BATS社のCEOマーク・ヘムズリー氏が招かれています。

→ビデオはこちら

MTFで差がつくのは、コストとスピードとサービス。
コストという面では、BATSは米国と欧州全域を対象とするサービスに100人で対応しており、LSEの十分の一ということです。スピードの面では、一取引を行うのに400マイクロ秒(人間の瞬きは300マイクロ秒)で一秒に2,500取引実行。キャパシティについては1秒で180,000取引まで処理が可能ということ。現在は一日平均850,000,000件の注文を処理しているそうです。
BATS Europe → http://www.batstrading.co.uk/home/
Chi-X Europe → http://www.chi-x.com/
ちなみに、Chi-Xはオーストラリアにも進出予定です。




(1)状況をさらに悪化させること、問題を助長すること

Bank’s inability to quantify their exposure through credit default swaps(CDSs) aggravated the crisis, while swings in the CDS market exacerbated the plunge in bank stocks.
(銀行がCDSを利用した取引についてエクスポージャーを正確に測ることができないという実体が金融危機を悪化させ、CDS市場の激しい値動きが金融関連株の下落を加速化した。)

簡単な言葉に置き換えれば、’worsen’ になります。

Opec's actions could aggravate the economic crisis.
(Opecの行動は経済危機を悪化させるかもしれない。)

The surging yen threatened to aggravate an already worsening economic climate.
(急速な円高は既に悪化しつつある景況に追い討ちをかけた。)


The contraction in consumer spending will exacerbate the problem for businesses in the retail and leisure sectors.
(消費支出の減少はリテール・レジャー部門のビジネスが抱える問題をさらに悪化させるだろう。)

Basel I and Basel II banking regulation and mark-to-market accounting have conspired to exacerbate the boom in credit markets over the past few years and the busts in the current crisis.
(バーゼルⅠ、バーゼルⅡのBIS規制と時価会計方式が一緒になって、ここ数年のクレジット市場のブームを支え、今回の金融危機を引き起こした。)




(2)曖昧でわかりにくいこと・不透明なこと

CDSの問題はその不透明さにありますが、これをopacityと言い、最近頻出しています。

The opacity of credit derivatives markets has contributed to problems.
(クレジット・デリバティブ市場の不透明さは多くの問題を引き起こす原因となった。)

While this opacity partly stems from the private nature of the derivatives world, it has been magnified as institutions have exploited accounting and regulatory loopholes to conceal both leverage and risk.
(この不透明性は、デリバティブのプライベートな性格から来るものであるが、金融機関がレバレッジとリスクを隠蔽するために法律や会計方式の抜け穴を探ることでこの性格が助長された。)


形容詞は、opaqueです。
the opacity of the market = the opaque nature of the market

It is important to reduce the risks of systemic failure in the opaque CDS market.
(不透明な市場のシステミックリスクを軽減することが肝要である。)



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Unglamorous industry made hot and sexy
Published: October 22 2008

Future of clearing: Clearers step into limelight
Published: October 17 2008

Over the counter: Exchanges have their eyes on the next opportunity
Published: October 17 2008


先日の日本経済新聞に米インターコンチネンタル取引所(ICE)がクリアリング・コーポ社を買収し、ゴールドマンサックスと提携して、CDSの清算機関を設立するという記事が掲載されました。ICEは、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)と同じくエネルギーなどのコモディティ商品の先物取引を扱う取引所です。CMEはヘッジファンドのCitadelをバックにCDSの清算事業に参入しようとしていたのですが、先を越された形になりました。

CDSに限らず、株式や債券、コモディティ商品などの取引でカウンターパーティー(取引の相手方)となってリスクを低減する機関のことをCCP(Central Counter Party)と呼びます。債務不履行になった場合にはカウンターパーティーとして債務を引き受け、「清算機関」(clearing house)の役割を担います。

先日のブログ記事で米国ではCDSの清算はDTCCが行っていると説明しました。確かにこれまではICEやCMEを含め、ほとんどの取引所がCDSの清算業務をDTCCに委託していたのですが、近年MTF(multilateral trading facilities)の登場によって証券取引所間の競争が激化し、金融危機の影響でIPO(新規上場)や売買取引そのものが減少している中で、CCPは新たな収入源として期待が寄せられています。これまで外注していた業務を内製化し、差別化しようという戦略で、特にICEとCMEはコモディティ分野で蓄積した先物取引の技術と最先端の電子決済システムを使ってCDSの取引市場を透明化することを提唱しています。一方、DTCCは、CDSの清算業務については最も経験が長く、同じく伝統的な清算機関であるロンドンのLH.Clearnetと合併(事実上買収)することで欧州との連携を図ろうとしています。証券会社、取引所、MTF、清算・決済機関の間でCCPをめぐる競争が激化しているのです。



9月中旬にSWIFTが主催する国際会議Sibos2008が開催され、世界中から金融機関や金融サービスの関係者が集まりました。直前にリーマン・ブラザーズ破綻のニュースが飛び込み、出席できない関係者も出ていたそうですが、今後の金融業界のあり方について議論が白熱したことは容易に想像できます。その中で議題の一つとして挙がったのがCCPの問題です。野村総合研究所からSibos2008に関するレポートがネット上で公開されており、これを読むと清算・決済機関の最新動向についてとてもよくわかります。(素人でも面白いと思える内容でした。)

「Sibos2008(ウィーン)について~欧州で本格化する清算・決済機関の競争~」(野村総研2008.9)
「DTCCとLCH.Clearnetが合併へ~欧米清算機関の再編が加速~」(野村総研2008.10)


レポートによると、モルガン・スタンレーの関係者から次のような発言があったそうです。
「清算・決済業務への競争・新規参入促進政策が図られた結果、例えば、英国市場だけで、3つ以上のCCPに接続することになった。その上、今回のクレジット危機への対応を経て、それぞれのリスク管理モデルが異なることを改めて認識した。それに対応する我々バックオフィス部門の管理負荷も増えている。」これに対して、シティバンクの関係者は、「当社のサービスを活用してもらえれば、複数CCPへの接続業務はシンプルになる。」とコメントしていたそうです。いかにCCPが金融ビジネスの前線に出てきているのかがわかります。

CCPが複雑になってしまった原因として、売買取引をおこなうプラットフォームが多様化していることが挙げられます。欧州連合(EU)が証券取引業を自由化し競争原理を取り入れた結果、新たなMTFが次々に参入し、それに対応するFortis EMCFやEuroCCPなどのCCPも生まれたのです。MTFとそのCCPは、欧州全域を対象にしていますが、大型株に限定されてしまいます。一方で、従来型のCCPであるDTTCやLH.Clearnetは複数の証券取引所から委託された株式、債券、スワップ、コモディティ、デリバティブなどすべて取り扱っています。しかし、LH.Clearnetが対象としている取引所はイギリスとフランスに限られているのです。これらのCCPに加えて証券取引所が自前で開設しているCCPもあります。これでは、利用する側は大変です。

今回ICEが開設するCCPが目指しているのは、’Global clearing solution’であると言います。しかし、あくまでも一つの取引所が相手方となって清算することになるので、売買取引が成立するのかどうか不安が残ります。その反面、電子取引システムによって情報を即時公開することができ、政府による監督、資金投入もやりやすくなります。また、ICEの会員にはゴールドマン・サックス、クレディ・スイス、ドイチェ・バンク、JPモルガン・チェースなど主要な国際金融機関の名が連なり、安心感もあります。一方で、従来型のDTTCやLH.Clearnetでは複数の取引所間、商品間の損益を通算して清算できるというメリットがあります。現にリーマン・ブラザーズの破綻処理ではLH.Clearnetが清算をおこない、成功を収めているのです。また、TurquoiseやSmartpoolなどいくつかのMTFの清算も引き受けるようになっています。

前者の垂直統合型(インハウス型)のシステムを’Vertical Silo model'と呼び、従来の水平連結型(アウトハウス型)'horizontal clearing model'と比べてメリット・デメリットが議論されています。EUは、これまで自由な競争によってCCPも発展させていくべきというスタンスでしたが、金融危機によるシステミック・リスクに対応するためには政府当局も情報を得て監督する必要があり、CCPを一つにまとめたいという考えがあります。いまの所、CCPを巡る状況は「ガラパゴス化」と呼ぶにふさわしいものです。

今回のICEのニュースで同取引所の株価が急騰しました。金融危機によって最先端の金融技術を駆使する場面が少なくなるのではないかという雰囲気がありますが、むしろ技術競争が加速している印象を受けます。金融業に対する規制がこれから厳格化していくと考えられますが、CCPを新たなビジネスチャンスと捉え、急速に再編している金融業界の活力はまったく衰えていないようです。



ICE



Sibos2008のプロモーションビデオのBGMが「ミッション・インポシボル」を彷彿とさせます。最後のコメントに、

"This is one of the most interesting places to be, and one of the most exciting, scary, and monumental times in the market."

どの辺りが'scary'なのでしょうか、、。(恐らく深い意味はないと思うのですが。)



円安バブルの崩壊

今週は、日経平均が7000円を割り込み、一時期6000円台に突入(最安値7162.90円/10月27日)。1982年来最低の水準まで落ち込みました。「ソニーショック」と「円キャリートレードの巻き戻し」。世界経済史に記録されるキーワードになりそうです。FTでは円安バブルの崩壊について、サブプライム問題を発端とする一連の金融危機の中で「最後の大バブルの崩壊」と位置づけています。

さらに、三菱UFJ、野村HD、三井住友が相次いで資本増強策と赤字決算を公表し、FTは、ついに日本も危機の大波に飲まれてしまったとコメントしています。なんとも皮肉なのが、竹中平蔵元財務大臣がFTに登場した日に邦銀が相次いでニュースを発表したことです。同日、野村HDのCOO柴田拓美氏がリーマン買収劇でいかに活躍したか、好意的な記事が出ていた矢先でした。その後、日本に対して期待をもつ声がぱったり止んでいます。


株価は大底をうったのか?

Short Viewのビデオはこちら

これだけ大変な思いをした一週間だっただけに、大底を打ったのではないかという意見も当然出てきています。本日のShort Viewでは、昨年のハロウィンに株価が天井を打っていることを指摘し、今月の株価暴落が歴史的な大底なのかどうか検証しています。昨年のハロウィンからFTSEワールドインデックスはドル建てで44%下落しています。ちなみに、日経平均が昨年天井を打ったのは7月で18261.98円でした。

まず、50日移動平均と株価の推移です。テクニカル分析では、50日移動平均から株価が大きく外れると必ず反発するとされています。S&P500と50日移動平均との乖離率は15%ということです。


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同じく、日経平均について見た場合、この数日の反発で50日移動平均とほとんど乖離していません。つまり、しばらく上昇余地がないということになります、、。

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さらに、三ヶ月物米国債のレートを見ると、大量のマネーがリスクを回避して安全資産に流れていることがわかり、短期的には株価が反発する余地が大きいことになります。

一方、LIBOR/FFレート(政策金利)のスプレッドを確認すると、確かに危機的な状況と言われたリーマン破綻後、欧米で公的資金が投入されたことで改善はしていますが、まだ異常に高いレベルで推移しています。このスプレッドが縮まらない限り、長期的に株価が回復するとは言えないというのがオーサーズ氏の結論です。

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リーマンの「次」と米国大統領選

現在は、リーマン破綻から生じた余波(パニック売り・パニック買い)が少しずつ収束してきた段階のようにも思えます。しかし、米国のモーゲージ・ローンを根源とする金融機関の問題が、今度は企業のデフォルトリスクの問題に波及していくと、再度株価が暴落する可能性が出てきます。特にGMやクライスラー、フォードなど大規模な負債を抱え、CDSを通じてシステミックリスクに繋がりそうな大手企業の倒産は、リーマン危機に匹敵するブローになります。

一方で、世界から期待が集まっているのは米国の大統領選です。デフォルトリスクが限界まで高まっているデトロイト3の救済、医療や環境分野での明確なヴィジョンの提示などが行われれば、プラスに働くはずです。日本株はあいかわらず「輸出関連株」のイメージが強いので、米国が保護主義に傾くことがマイナス要因になる可能性もありますが、米国の消費が回復する兆しが見えれば恩恵を受けるのではないでしょうか、、。
英国から他国に拠点を移した企業は他にも広告大手のWPP、保険会社の RSA Insuranceが挙げられ、リテール大手のKingfisherは検討中ということです。隣国のアイルランドが税金の面で競争力を持っているようです。アイルランドも金融立国として競争力をつけてきた国だけに、今回の金融危機から受けた打撃は英国と同様に大きかったはずですが、騒ぎが収まったとき "when the dust settles..." 英国よりも有利な立場にいる可能性がありますね、、。


税金対策で拠点を移すことを次のように表現します。

move/change/switch (its) tax domicile
move/change/switch (its) tax base
relocate/shift (its) headquarters for tax reasons



Many UK companies in UK including in the pharma-sector such as Shire have changed its tax domiciles recently.

Kingfisher, the owner of the B&Q home improvement chain and the UK’s second- biggest non-food retailer, is considering shifting its tax domicile overseas.

WPP is moving its tax domicile from the UK.

WPP would be the latest UK-based group to shift its domicile – or to consider doing so – because of complaints about the British tax system’s waning competitiveness.

PwC, auditor to Kingfisher, is reviewing the benefits of moving the tax base.

A fledgling British biotech company is to shift its headquarters to Belgium.
(fledgilingは、「駆け出しの」という意味です。)


ついでに、”-based”という使い方も覚えてしまいましょう!

UK-based company
Tokyo-based company





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Published: October 19 2008



The banking crisis and collapse of investor confidence has helped strengthen the relative performance of the large quoted companies, turning them into the “defensive stocks” they had long ceased to be.

(金融危機と投資家の自信喪失で、大手製薬会社のパフォーマンスが相対的に向上し、一時奪われた「ディフェンシブ株」の地位を挽回してきた。)


以前に「コングロマリット・モデルの復活」というテーマを取り上げました(独M.A.N.グループのCEOへのインタビュー)が、医薬品業界でもこれまで苦しんできた大手製薬会社に追い風が吹いているようです。



ヘッジファンドが活躍していた一昔前までは、大手の医薬品業界のビジネスモデルは高コストの割に収益が上がらない(=生産性が低い)として敬遠されていました。その背景には、新しい薬を発明することが技術的に困難になってきている事実に加えて、安価なジェネリック医薬品が登場したことでパテントが切れた瞬間に収益源がなくなってしまうという問題がありました。


しかし、金融危機によってこの「ビッグ・ファーマ」の経営体質がプラスに働き始めています。まずは、その豊富な資金源でジェネリック医薬品会社やバイオテック会社の買収をさらに積極的に進めることが可能になります。さらに、他が手掛けられないようなニッチな事業、例えば途上国向けのマラリア予防薬の開発事業、がリスクを分散する効果を持ち始めているのです。これに一役買っているのがフィラントロピストで、ビル・ゲイツが発足した財団が総額一千万ドル(約十億円)を寄付しています。何よりも長期的な視野で経営に臨むことができるのが大手の強みです。


一方で、バイオテックを扱う中小企業については、激しい動きが出始めています。英国のApitope社はベルギーに、国内第三位の製薬会社Shire社はアイルランドに拠点を移しました。大学機関などから資金を調達できる上、税金面で優遇措置があるためです。

“England has a history of letting its brains go elsewhere,” he said. “It’s a shame”

日本でよく問題にされる「頭脳流出」ですが、英国でも同じ悩みを抱えているようです。

医薬品ビジネスは、何よりも研究者の優秀な頭脳にかかっているといいます。医薬品の開発が成功する確立は100万分の1という話を聞いたことがあります。(註1)



以上のように、再編の動きが加速化しそうな欧米の医薬品業界ですが、現段階で注目が集まっている背景には、米国の大統領選挙があると思います。景気動向に関わらず、どの国にとっても少子高齢化は避けられない事実です。政府がローコストで安全な医療を国民に約束する中で、具体的にどのような方針をとっていくのかが経営に大きく影響します。同様の理由で注目を浴びているのが「エタノール」です。金融危機が収まれば、政治のビジネスへの影響力は過去十年に比して大きくなることは免れ得ず、これまで以上に「環境・医療」というテーマが重要になってくるのではないかと考えています。



●View from the Topに英GlaxoSmithKline社CEOのAndrew Witty氏が招かれました。



特に「ビッグ・ファーマ」のビジネスモデルについての考え方が印象的でした。

→ビデオ


・「ビッグ・ファーマ」のビジネスモデルは、社会が求めている医薬品を開発するために不可欠なR&D(Research&Development)への投資を維持するためには必要である。新薬を創ることが製薬会社の目的であり、それを成し遂げるためになるべく効率的な方法を考えなければならない。2007年1月から米国で新しく登録された分子(molecule)28種のうち6種がGSKからのもので、成果は出始めている。

・組織の“decentralization”(脱中心化)と指摘されることがあるが、”decoupling”、”repersonilization”という表現の方があっていると思う。新薬の開発は「人間的なアクティビティ」で、芸術と科学を混ぜ合わせたような分野だ。一千人もの人間が同じ場所で働くような大企業からは、新しい発明は生まれにくい。二十~三十人くらいのラボが限界だと思う。


Witty氏が新薬の開発をアートと比較して「研究者が何かにひらめく瞬間」について語るとき、本当にいきいきしているのが印象に残りました。現場にいる人間を第一に考えるリーダーは、必ず危機を乗り越えていくだろうと思います。



(註1)関連書籍をご紹介します。

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