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Published: October 22 2008
Future of clearing: Clearers step into limelight
Published: October 17 2008
Over the counter: Exchanges have their eyes on the next opportunity
Published: October 17 2008
先日の日本経済新聞に米インターコンチネンタル取引所(ICE)がクリアリング・コーポ社を買収し、ゴールドマンサックスと提携して、CDSの清算機関を設立するという記事が掲載されました。ICEは、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)と同じくエネルギーなどのコモディティ商品の先物取引を扱う取引所です。CMEはヘッジファンドのCitadelをバックにCDSの清算事業に参入しようとしていたのですが、先を越された形になりました。
CDSに限らず、株式や債券、コモディティ商品などの取引でカウンターパーティー(取引の相手方)となってリスクを低減する機関のことをCCP(Central Counter Party)と呼びます。債務不履行になった場合にはカウンターパーティーとして債務を引き受け、「清算機関」(clearing house)の役割を担います。
先日のブログ記事で米国ではCDSの清算はDTCCが行っていると説明しました。確かにこれまではICEやCMEを含め、ほとんどの取引所がCDSの清算業務をDTCCに委託していたのですが、近年MTF(multilateral trading facilities)の登場によって証券取引所間の競争が激化し、金融危機の影響でIPO(新規上場)や売買取引そのものが減少している中で、CCPは新たな収入源として期待が寄せられています。これまで外注していた業務を内製化し、差別化しようという戦略で、特にICEとCMEはコモディティ分野で蓄積した先物取引の技術と最先端の電子決済システムを使ってCDSの取引市場を透明化することを提唱しています。一方、DTCCは、CDSの清算業務については最も経験が長く、同じく伝統的な清算機関であるロンドンのLH.Clearnetと合併(事実上買収)することで欧州との連携を図ろうとしています。証券会社、取引所、MTF、清算・決済機関の間でCCPをめぐる競争が激化しているのです。
9月中旬にSWIFTが主催する国際会議Sibos2008が開催され、世界中から金融機関や金融サービスの関係者が集まりました。直前にリーマン・ブラザーズ破綻のニュースが飛び込み、出席できない関係者も出ていたそうですが、今後の金融業界のあり方について議論が白熱したことは容易に想像できます。その中で議題の一つとして挙がったのがCCPの問題です。野村総合研究所からSibos2008に関するレポートがネット上で公開されており、これを読むと清算・決済機関の最新動向についてとてもよくわかります。(素人でも面白いと思える内容でした。)
・「Sibos2008(ウィーン)について~欧州で本格化する清算・決済機関の競争~」(野村総研2008.9)
・「DTCCとLCH.Clearnetが合併へ~欧米清算機関の再編が加速~」(野村総研2008.10)
レポートによると、モルガン・スタンレーの関係者から次のような発言があったそうです。
「清算・決済業務への競争・新規参入促進政策が図られた結果、例えば、英国市場だけで、3つ以上のCCPに接続することになった。その上、今回のクレジット危機への対応を経て、それぞれのリスク管理モデルが異なることを改めて認識した。それに対応する我々バックオフィス部門の管理負荷も増えている。」これに対して、シティバンクの関係者は、「当社のサービスを活用してもらえれば、複数CCPへの接続業務はシンプルになる。」とコメントしていたそうです。いかにCCPが金融ビジネスの前線に出てきているのかがわかります。
CCPが複雑になってしまった原因として、売買取引をおこなうプラットフォームが多様化していることが挙げられます。欧州連合(EU)が証券取引業を自由化し競争原理を取り入れた結果、新たなMTFが次々に参入し、それに対応するFortis EMCFやEuroCCPなどのCCPも生まれたのです。MTFとそのCCPは、欧州全域を対象にしていますが、大型株に限定されてしまいます。一方で、従来型のCCPであるDTTCやLH.Clearnetは複数の証券取引所から委託された株式、債券、スワップ、コモディティ、デリバティブなどすべて取り扱っています。しかし、LH.Clearnetが対象としている取引所はイギリスとフランスに限られているのです。これらのCCPに加えて証券取引所が自前で開設しているCCPもあります。これでは、利用する側は大変です。
今回ICEが開設するCCPが目指しているのは、’Global clearing solution’であると言います。しかし、あくまでも一つの取引所が相手方となって清算することになるので、売買取引が成立するのかどうか不安が残ります。その反面、電子取引システムによって情報を即時公開することができ、政府による監督、資金投入もやりやすくなります。また、ICEの会員にはゴールドマン・サックス、クレディ・スイス、ドイチェ・バンク、JPモルガン・チェースなど主要な国際金融機関の名が連なり、安心感もあります。一方で、従来型のDTTCやLH.Clearnetでは複数の取引所間、商品間の損益を通算して清算できるというメリットがあります。現にリーマン・ブラザーズの破綻処理ではLH.Clearnetが清算をおこない、成功を収めているのです。また、TurquoiseやSmartpoolなどいくつかのMTFの清算も引き受けるようになっています。
前者の垂直統合型(インハウス型)のシステムを’Vertical Silo model'と呼び、従来の水平連結型(アウトハウス型)'horizontal clearing model'と比べてメリット・デメリットが議論されています。EUは、これまで自由な競争によってCCPも発展させていくべきというスタンスでしたが、金融危機によるシステミック・リスクに対応するためには政府当局も情報を得て監督する必要があり、CCPを一つにまとめたいという考えがあります。いまの所、CCPを巡る状況は「ガラパゴス化」と呼ぶにふさわしいものです。
今回のICEのニュースで同取引所の株価が急騰しました。金融危機によって最先端の金融技術を駆使する場面が少なくなるのではないかという雰囲気がありますが、むしろ技術競争が加速している印象を受けます。金融業に対する規制がこれから厳格化していくと考えられますが、CCPを新たなビジネスチャンスと捉え、急速に再編している金融業界の活力はまったく衰えていないようです。
Sibos2008のプロモーションビデオのBGMが「ミッション・インポシボル」を彷彿とさせます。最後のコメントに、
"This is one of the most interesting places to be, and one of the most exciting, scary, and monumental times in the market."
どの辺りが'scary'なのでしょうか、、。(恐らく深い意味はないと思うのですが。)
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先日の日本経済新聞に米インターコンチネンタル取引所(ICE)がクリアリング・コーポ社を買収し、ゴールドマンサックスと提携して、CDSの清算機関を設立するという記事が掲載されました。ICEは、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)と同じくエネルギーなどのコモディティ商品の先物取引を扱う取引所です。CMEはヘッジファンドのCitadelをバックにCDSの清算事業に参入しようとしていたのですが、先を越された形になりました。
CDSに限らず、株式や債券、コモディティ商品などの取引でカウンターパーティー(取引の相手方)となってリスクを低減する機関のことをCCP(Central Counter Party)と呼びます。債務不履行になった場合にはカウンターパーティーとして債務を引き受け、「清算機関」(clearing house)の役割を担います。
先日のブログ記事で米国ではCDSの清算はDTCCが行っていると説明しました。確かにこれまではICEやCMEを含め、ほとんどの取引所がCDSの清算業務をDTCCに委託していたのですが、近年MTF(multilateral trading facilities)の登場によって証券取引所間の競争が激化し、金融危機の影響でIPO(新規上場)や売買取引そのものが減少している中で、CCPは新たな収入源として期待が寄せられています。これまで外注していた業務を内製化し、差別化しようという戦略で、特にICEとCMEはコモディティ分野で蓄積した先物取引の技術と最先端の電子決済システムを使ってCDSの取引市場を透明化することを提唱しています。一方、DTCCは、CDSの清算業務については最も経験が長く、同じく伝統的な清算機関であるロンドンのLH.Clearnetと合併(事実上買収)することで欧州との連携を図ろうとしています。証券会社、取引所、MTF、清算・決済機関の間でCCPをめぐる競争が激化しているのです。
9月中旬にSWIFTが主催する国際会議Sibos2008が開催され、世界中から金融機関や金融サービスの関係者が集まりました。直前にリーマン・ブラザーズ破綻のニュースが飛び込み、出席できない関係者も出ていたそうですが、今後の金融業界のあり方について議論が白熱したことは容易に想像できます。その中で議題の一つとして挙がったのがCCPの問題です。野村総合研究所からSibos2008に関するレポートがネット上で公開されており、これを読むと清算・決済機関の最新動向についてとてもよくわかります。(素人でも面白いと思える内容でした。)
・「Sibos2008(ウィーン)について~欧州で本格化する清算・決済機関の競争~」(野村総研2008.9)
・「DTCCとLCH.Clearnetが合併へ~欧米清算機関の再編が加速~」(野村総研2008.10)
レポートによると、モルガン・スタンレーの関係者から次のような発言があったそうです。
「清算・決済業務への競争・新規参入促進政策が図られた結果、例えば、英国市場だけで、3つ以上のCCPに接続することになった。その上、今回のクレジット危機への対応を経て、それぞれのリスク管理モデルが異なることを改めて認識した。それに対応する我々バックオフィス部門の管理負荷も増えている。」これに対して、シティバンクの関係者は、「当社のサービスを活用してもらえれば、複数CCPへの接続業務はシンプルになる。」とコメントしていたそうです。いかにCCPが金融ビジネスの前線に出てきているのかがわかります。
CCPが複雑になってしまった原因として、売買取引をおこなうプラットフォームが多様化していることが挙げられます。欧州連合(EU)が証券取引業を自由化し競争原理を取り入れた結果、新たなMTFが次々に参入し、それに対応するFortis EMCFやEuroCCPなどのCCPも生まれたのです。MTFとそのCCPは、欧州全域を対象にしていますが、大型株に限定されてしまいます。一方で、従来型のCCPであるDTTCやLH.Clearnetは複数の証券取引所から委託された株式、債券、スワップ、コモディティ、デリバティブなどすべて取り扱っています。しかし、LH.Clearnetが対象としている取引所はイギリスとフランスに限られているのです。これらのCCPに加えて証券取引所が自前で開設しているCCPもあります。これでは、利用する側は大変です。
今回ICEが開設するCCPが目指しているのは、’Global clearing solution’であると言います。しかし、あくまでも一つの取引所が相手方となって清算することになるので、売買取引が成立するのかどうか不安が残ります。その反面、電子取引システムによって情報を即時公開することができ、政府による監督、資金投入もやりやすくなります。また、ICEの会員にはゴールドマン・サックス、クレディ・スイス、ドイチェ・バンク、JPモルガン・チェースなど主要な国際金融機関の名が連なり、安心感もあります。一方で、従来型のDTTCやLH.Clearnetでは複数の取引所間、商品間の損益を通算して清算できるというメリットがあります。現にリーマン・ブラザーズの破綻処理ではLH.Clearnetが清算をおこない、成功を収めているのです。また、TurquoiseやSmartpoolなどいくつかのMTFの清算も引き受けるようになっています。
前者の垂直統合型(インハウス型)のシステムを’Vertical Silo model'と呼び、従来の水平連結型(アウトハウス型)'horizontal clearing model'と比べてメリット・デメリットが議論されています。EUは、これまで自由な競争によってCCPも発展させていくべきというスタンスでしたが、金融危機によるシステミック・リスクに対応するためには政府当局も情報を得て監督する必要があり、CCPを一つにまとめたいという考えがあります。いまの所、CCPを巡る状況は「ガラパゴス化」と呼ぶにふさわしいものです。
今回のICEのニュースで同取引所の株価が急騰しました。金融危機によって最先端の金融技術を駆使する場面が少なくなるのではないかという雰囲気がありますが、むしろ技術競争が加速している印象を受けます。金融業に対する規制がこれから厳格化していくと考えられますが、CCPを新たなビジネスチャンスと捉え、急速に再編している金融業界の活力はまったく衰えていないようです。
Sibos2008のプロモーションビデオのBGMが「ミッション・インポシボル」を彷彿とさせます。最後のコメントに、
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