(関連記事)
Biotech company to quit UK
Published: October 21 2008
Gates Foundation gives $10.4m to research
Published: October 22 2008
Cash-rich big pharma set for takeover deals
Published: October 19 2008
The banking crisis and collapse of investor confidence has helped strengthen the relative performance of the large quoted companies, turning them into the “defensive stocks” they had long ceased to be.
(金融危機と投資家の自信喪失で、大手製薬会社のパフォーマンスが相対的に向上し、一時奪われた「ディフェンシブ株」の地位を挽回してきた。)
以前に「コングロマリット・モデルの復活」というテーマを取り上げました(独M.A.N.グループのCEOへのインタビュー)が、医薬品業界でもこれまで苦しんできた大手製薬会社に追い風が吹いているようです。
ヘッジファンドが活躍していた一昔前までは、大手の医薬品業界のビジネスモデルは高コストの割に収益が上がらない(=生産性が低い)として敬遠されていました。その背景には、新しい薬を発明することが技術的に困難になってきている事実に加えて、安価なジェネリック医薬品が登場したことでパテントが切れた瞬間に収益源がなくなってしまうという問題がありました。
しかし、金融危機によってこの「ビッグ・ファーマ」の経営体質がプラスに働き始めています。まずは、その豊富な資金源でジェネリック医薬品会社やバイオテック会社の買収をさらに積極的に進めることが可能になります。さらに、他が手掛けられないようなニッチな事業、例えば途上国向けのマラリア予防薬の開発事業、がリスクを分散する効果を持ち始めているのです。これに一役買っているのがフィラントロピストで、ビル・ゲイツが発足した財団が総額一千万ドル(約十億円)を寄付しています。何よりも長期的な視野で経営に臨むことができるのが大手の強みです。
一方で、バイオテックを扱う中小企業については、激しい動きが出始めています。英国のApitope社はベルギーに、国内第三位の製薬会社Shire社はアイルランドに拠点を移しました。大学機関などから資金を調達できる上、税金面で優遇措置があるためです。
“England has a history of letting its brains go elsewhere,” he said. “It’s a shame”
日本でよく問題にされる「頭脳流出」ですが、英国でも同じ悩みを抱えているようです。
医薬品ビジネスは、何よりも研究者の優秀な頭脳にかかっているといいます。医薬品の開発が成功する確立は100万分の1という話を聞いたことがあります。(註1)
以上のように、再編の動きが加速化しそうな欧米の医薬品業界ですが、現段階で注目が集まっている背景には、米国の大統領選挙があると思います。景気動向に関わらず、どの国にとっても少子高齢化は避けられない事実です。政府がローコストで安全な医療を国民に約束する中で、具体的にどのような方針をとっていくのかが経営に大きく影響します。同様の理由で注目を浴びているのが「エタノール」です。金融危機が収まれば、政治のビジネスへの影響力は過去十年に比して大きくなることは免れ得ず、これまで以上に「環境・医療」というテーマが重要になってくるのではないかと考えています。
●View from the Topに英GlaxoSmithKline社CEOのAndrew Witty氏が招かれました。
特に「ビッグ・ファーマ」のビジネスモデルについての考え方が印象的でした。
→ビデオ
・「ビッグ・ファーマ」のビジネスモデルは、社会が求めている医薬品を開発するために不可欠なR&D(Research&Development)への投資を維持するためには必要である。新薬を創ることが製薬会社の目的であり、それを成し遂げるためになるべく効率的な方法を考えなければならない。2007年1月から米国で新しく登録された分子(molecule)28種のうち6種がGSKからのもので、成果は出始めている。
・組織の“decentralization”(脱中心化)と指摘されることがあるが、”decoupling”、”repersonilization”という表現の方があっていると思う。新薬の開発は「人間的なアクティビティ」で、芸術と科学を混ぜ合わせたような分野だ。一千人もの人間が同じ場所で働くような大企業からは、新しい発明は生まれにくい。二十~三十人くらいのラボが限界だと思う。
Witty氏が新薬の開発をアートと比較して「研究者が何かにひらめく瞬間」について語るとき、本当にいきいきしているのが印象に残りました。現場にいる人間を第一に考えるリーダーは、必ず危機を乗り越えていくだろうと思います。
(註1)関連書籍をご紹介します。
新薬誕生―100万分の1に挑む科学者たち/ロバート・L.シュック

¥2,520
Amazon.co.jp
世界で一番売れている薬/山内 喜美子

¥1,680
Amazon.co.jp
ビッグ・ファーマ―製薬会社の真実/マーシャ・エンジェル

¥2,415
Amazon.co.jp
不確実性のマネジメント 新薬創出のR&Dの「解」/桑嶋 健一

¥1,680
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The banking crisis and collapse of investor confidence has helped strengthen the relative performance of the large quoted companies, turning them into the “defensive stocks” they had long ceased to be.
(金融危機と投資家の自信喪失で、大手製薬会社のパフォーマンスが相対的に向上し、一時奪われた「ディフェンシブ株」の地位を挽回してきた。)
以前に「コングロマリット・モデルの復活」というテーマを取り上げました(独M.A.N.グループのCEOへのインタビュー)が、医薬品業界でもこれまで苦しんできた大手製薬会社に追い風が吹いているようです。
ヘッジファンドが活躍していた一昔前までは、大手の医薬品業界のビジネスモデルは高コストの割に収益が上がらない(=生産性が低い)として敬遠されていました。その背景には、新しい薬を発明することが技術的に困難になってきている事実に加えて、安価なジェネリック医薬品が登場したことでパテントが切れた瞬間に収益源がなくなってしまうという問題がありました。
しかし、金融危機によってこの「ビッグ・ファーマ」の経営体質がプラスに働き始めています。まずは、その豊富な資金源でジェネリック医薬品会社やバイオテック会社の買収をさらに積極的に進めることが可能になります。さらに、他が手掛けられないようなニッチな事業、例えば途上国向けのマラリア予防薬の開発事業、がリスクを分散する効果を持ち始めているのです。これに一役買っているのがフィラントロピストで、ビル・ゲイツが発足した財団が総額一千万ドル(約十億円)を寄付しています。何よりも長期的な視野で経営に臨むことができるのが大手の強みです。
一方で、バイオテックを扱う中小企業については、激しい動きが出始めています。英国のApitope社はベルギーに、国内第三位の製薬会社Shire社はアイルランドに拠点を移しました。大学機関などから資金を調達できる上、税金面で優遇措置があるためです。
“England has a history of letting its brains go elsewhere,” he said. “It’s a shame”
日本でよく問題にされる「頭脳流出」ですが、英国でも同じ悩みを抱えているようです。
医薬品ビジネスは、何よりも研究者の優秀な頭脳にかかっているといいます。医薬品の開発が成功する確立は100万分の1という話を聞いたことがあります。(註1)
以上のように、再編の動きが加速化しそうな欧米の医薬品業界ですが、現段階で注目が集まっている背景には、米国の大統領選挙があると思います。景気動向に関わらず、どの国にとっても少子高齢化は避けられない事実です。政府がローコストで安全な医療を国民に約束する中で、具体的にどのような方針をとっていくのかが経営に大きく影響します。同様の理由で注目を浴びているのが「エタノール」です。金融危機が収まれば、政治のビジネスへの影響力は過去十年に比して大きくなることは免れ得ず、これまで以上に「環境・医療」というテーマが重要になってくるのではないかと考えています。
●View from the Topに英GlaxoSmithKline社CEOのAndrew Witty氏が招かれました。
特に「ビッグ・ファーマ」のビジネスモデルについての考え方が印象的でした。
→ビデオ
・「ビッグ・ファーマ」のビジネスモデルは、社会が求めている医薬品を開発するために不可欠なR&D(Research&Development)への投資を維持するためには必要である。新薬を創ることが製薬会社の目的であり、それを成し遂げるためになるべく効率的な方法を考えなければならない。2007年1月から米国で新しく登録された分子(molecule)28種のうち6種がGSKからのもので、成果は出始めている。
・組織の“decentralization”(脱中心化)と指摘されることがあるが、”decoupling”、”repersonilization”という表現の方があっていると思う。新薬の開発は「人間的なアクティビティ」で、芸術と科学を混ぜ合わせたような分野だ。一千人もの人間が同じ場所で働くような大企業からは、新しい発明は生まれにくい。二十~三十人くらいのラボが限界だと思う。
Witty氏が新薬の開発をアートと比較して「研究者が何かにひらめく瞬間」について語るとき、本当にいきいきしているのが印象に残りました。現場にいる人間を第一に考えるリーダーは、必ず危機を乗り越えていくだろうと思います。
(註1)関連書籍をご紹介します。
新薬誕生―100万分の1に挑む科学者たち/ロバート・L.シュック

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