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なんだか、スパイ映画に出てくる怪しいプロジェクトのコードネームのようですが、ロンドン証券取引所(LSE)が6月に始めた”dark-pool”プロジェクトのコードネームであると聞くとますます怪しげです。そしてこのプロジェクト、実は野村HDの手中にあるのです。

この一つ前のブログ記事でMTF(Multilateral Trading Facilities)を気軽に引用してしまいましたが、日本で言えばPTS、つまり電子取引市場のことです。日本でPTSが解禁されたのは2000年、電子取引が盛んになったのは2004年の証券取引法改正後ですが、この分野ではEUよりも先輩格のようです。昨年の11月に欧州連合(EU)がMifid(Markets in Financial Instruments Directive 金融商品市場指令)を施行し、各国間で自由に取引ができるようにすると同時に、MTFを解禁しました。その後、Chi-X、Turquoise、NasdaqOMXが取引市場に参入し、みるみるシェアを伸ばしています。Chi-XはFTSE100での取引のうち14%のシェアを確保し、今の所最大の電子取引所になっているのですが、Chi-Xを管理しているInstinet社は、野村HDの100%出資会社です。つまり、日本が先陣を切っていることになります。

ただ、米国で高シェアを獲得しているBATSが欧州市場に参入することで競争が激化してきています。MTFの競争優位性は取引のスピードと手数料にあり、今のところ、ヘッジファンドや金融機関のブローカーは全ての取引所(trading venue)にアカウントを持ち、一番有利な取引を選択しているという状況です。

このような通常のMTFの他に冒頭に挙げた‘dark pool’(⇔’light pool’)と呼ばれる匿名性の取引所が最近注目を集めています。特に旧来の証券取引所がMTFとの競争に打ち勝つため、積極的にプロジェクトを推進し、NYSE Euronextは’Octupus’というコードネームでプロジェクトを立ち上げ、HSBC、BNPパリバス、JPモルガンとの共同プロジェクトであるSmartPoolは今月から稼動する予定で、欧州初の’dark pool’になります。


冒頭に挙げた、’Baikal’は、LSEが旧リーマン・ブラザーズとのジョイント・ベンチャーで6月に立ち上げたばかりのプロジェクトだったそうです。旧リーマン欧州事業の中核を担うはずだったプロジェクトで、700名のチームが組まれているそうです。そのチームの90%が野村HDに吸収されています。現在、旧リーマンの欧州スタッフをめぐってバークレーズ・キャピタルと野村HDの間で人材争奪戦が繰り広げられているというニュースもあり、このBaikalプロジェクトは特に重要のようです。このプロジェクトで成功できれば、世界トップの金融機関として堂々と胸を張れるような気がします。




ところで、The View from the MarketsにChi-Xのライバルとなる米BATS社のCEOマーク・ヘムズリー氏が招かれています。

→ビデオはこちら

MTFで差がつくのは、コストとスピードとサービス。
コストという面では、BATSは米国と欧州全域を対象とするサービスに100人で対応しており、LSEの十分の一ということです。スピードの面では、一取引を行うのに400マイクロ秒(人間の瞬きは300マイクロ秒)で一秒に2,500取引実行。キャパシティについては1秒で180,000取引まで処理が可能ということ。現在は一日平均850,000,000件の注文を処理しているそうです。
BATS Europe → http://www.batstrading.co.uk/home/
Chi-X Europe → http://www.chi-x.com/
ちなみに、Chi-Xはオーストラリアにも進出予定です。