2019年、今年最初の芸術との出逢いは、通称MoMAとしてもおなじみのニューヨーク近代美術館です!
MoMAは10年くらい前のニューヨーク旅行でも行ったことがあり、その時にお土産で買った12色の色鉛筆は今でも愛用しています。久しぶりに観るMoMA、とても楽しみでしたが、素晴らしい絵の数々に大いに魅了されました!特に印象に残った絵は以下の通りです。
(写真)Vincent van Gogh/The Starry Night
※MoMAで購入した絵葉書より
MoMAで一番有名な絵です。何という素晴らしい絵!空を大きく取った構図、うねるようなダイナミックな星空、青と緑の暗めの色彩と星の黄色と白のコントラストが素晴らしい。右上は太陽でしょうか?木は教会のようで、星たちに呼応しているようにも見えます。昨年4月に観たベルリン・コーミッシェ・オーパーの来日公演のモーツァルト/魔笛で、タミーノが魔笛を吹くと星空で星座が動き出すダイナミックなシーンを思い出しました。
(写真)Vincent van Gogh/The Olive Trees
この絵も力強い作品。波打つ力強いオリーブの木、単純化された青い山と、極度に単純化された白い雲。緑と青と白のシンプルな色彩、バランスの良い構図です。白い大きな雲はまるで中央の山に降り立ったかのよう。間近で観ると、絵の質感も見事で、絵の力強さを大いに感じました!
(写真)Salvador Dali/The Persistence of Memory
これはサルヴァドーレ・ダリの有名な絵ですね。ダリのみならず、シュールレアリスムの代表作でしょう。溶ける時計、群がる蟻、まぶたのような、生きもののような不思議な物体、印象的な風景。本当に素晴らしい!以前によく観たダリの映画「アンダルシアの犬」を思い出しました。
(写真)Gustav Klimt/Hope, II
見ていて、心からホッとする絵です。大きなお腹と豊かな乳房。文字通り、希望を感じます。構図的に、やはりクリムトの有名なTod und Lebenの絵との対比を思いますが、あのガイコツがいないことにどれだけホッとすることか。
(参考)Gustav Klimt/Tod und Leben
※ウィーンのレオポルト美術館で購入した絵葉書より
ここからはアメリカの画家の絵画となります。
(写真)Andrew Wyeth/Christina's World
草原で地面に寝そべって家を見つめる娘の絵。この絵はMoMAの5Fに上がると、まず出てくる絵ですが、本当に惹き付けられました。アメリカらしい風景。アンドリュー・ワイエスのクリスティーナに対する想いを感じました。
(写真)Jasper Johns/Flag(1954-55)
アメリカのコンテンポラリー・アートの代表作です。ジャスパー・ジョーンズによるアメリカ国旗の絵、新聞のコラージュ、古ぼけた質感が素晴らしい。古き良きアメリカを思わせます。
(写真)Jackson Pollock/One: Number 31(1950)
ジャクソン・ポロックの代表作。私はアメリカのコンテンポラリー・アートでは後述するマーク・ロスコの作品が好きで、ポロックの作品やコンセプトにはそんなに面白さを感じませんが、この巨大で色合いのバランスの良い作品には、もはや古典的な美しさを感じます。ベージュの背景に白、黒、緑、金色が絶妙に混ざり合い、絵の具の散り具合も力強く、見事です。
(写真)ニューヨーク近代美術館。セントラルパークの500mくらい南、5番街のすぐそばにあります。東京で言えば、銀座に大きな美術館がある感じです。
MoMAは名前の通り、近代美術館。シュールレアリスムや表現主義、コンテンポラリー・アートの作品が多く、私の好みにちょうど合うので、どの絵にも大いに惹かれました!その他、絵葉書はありませんでしたが、以下の絵が特に印象に残りました。
◯Rune Magritte/The Lovers
有名な男女が顔に覆いを被ってキスをしている絵です。いろいろな取り方ができる絵ですが、やはり悲しい接吻、という印象を持ちます。男女の愛の不毛を描いているのでしょうか?DNAに支配された存在なのでしょか?マグリットで最も魂を揺さぶる絵です。
◯Yves Tanguy/He Did What He Wanted
大好きなイヴ・タンギーの絵。深海の生きもののようなパーツ!キリストを思わせる絵。手前のテーブルの文字は何?クリスマス・ツリーにカラフルな数字、ペガサスのような白い網、奥に手を広げているような人物、手前にナマコのような物体、全体が雲の上のよう。これぞシュールレアリスム!
◯Yves Tanguy/Extinction of Useless Lights
この絵もタンギーらしい不思議な世界。左のトーテムポールのような物体の手から雲に一筋の光が。中央に石を持った白い鳩のような生きもの。これは受胎告知を表わしているのでしょうか?相変わらず深海の底のような地平、白い海藻のような木々、めちゃめちゃタンギー・ワールド!
◯Georges Braque/The Large Trees
明るい色調、木々の情景で、何と豊かな空間!カンディンスキーに似ています。赤と金に近い黄色が効果的。ブラックは例の有名なキュビスムの絵もありましたが、私はこの絵に惹かれました。木の下に恋人と思われる男女、とてもロマンティックな絵です。
◯James Ensor/Tribulations of Saint Anthony
私の好きな聖アントニウスもの、「聖アントニウスの苦難」です!色遣いや構図が独特でアンソールらしい絵。白と水色の空間はまるで地底湖のよう。その上に魑魅魍魎がいっぱいに展開します。魔物たちはボスやブリューゲルとはまた違った魅力です。手前の赤い法衣を着て祈る人物が聖アントニウスですね。
◯Edvard Munch/The Storm
年始に東京都美術館に観に行って、大いに魅了されたムンクの絵です。暗い色調で、嵐に固まる人々。白い服の女性が一人だけ人々から離れて、髪を風に吹かれているのが印象的。暗い雰囲気と明るい窓の対比で、まるでマグリットのだまし絵のよう。嵐というタイトルは自然現象でなく、人々の心の叫びのよう。やはりムンクの絵は何かを持っています。
(参考)2019.1.19 ムンク展-共鳴する魂の叫び(東京都美術館)
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12434168641.html
◯Marcel Duchamp/The Passage from Virgin to Bride
デュシャンのキュビズム的な絵。ピカソやブラックのキュビスムの絵と一味違って具象的、キリコのヘクトールとアンドロマルケの絵を思わせます。学生時代にデュシャンとマン・レイのアートにはまったことを懐かしく思い出しながら観ました。
◯Mark Rothko/No.16(Red, Brown and Black)
大好きなマーク・ロスコの絵。ロスコ独特の細胞のような箱形の絵。上から黒→赤→茶で背景は紫。何とも言えない色と構図のバランス。それぞれの四角の絶妙なにじみ具合もいい。全く抽象的な絵ですが、どこかしら人の人生を感じる絵。個人的に非常に落ち着く絵でした。
久しぶりに観に行ったニューヨーク近代美術館、めちゃめちゃ良かったです!置いてある絵が好みとドンピシャで合うので、観る絵、観る絵、本当に魅了されました。新年最初の芸術との出逢いはとても豊かなものとなりました。
そして、そもそもお正月に美術館が開いていることだけでもありがたいのですが、ニューヨークでは何とお正月に観劇もできるのです!ということで、この後、ホテルで少し休憩した後に観劇に行きました。さて、いったい何を観に行ったのでしょうか?次の記事で!