今日8月25日は偉大な指揮者・作曲家・ピアニストであるレナード・バーンスタインの誕生日です。今年はレニーの生誕100周年。ちょうど100年前の今日、レニーが生まれた記念すべき日です。

 

 

今年はレニーの生誕100周年ということで、これまで国内外のさまざまなコンサートに参加し、盛り上がってまいりました。

 

GWにウィーンで聴いたダニエル・ハーディング/ウィーン・フィルのバーンスタイン&マーラー、そして佐渡裕/トーンキュンストラー管弦楽団のバーンスタイン&ショスタコーヴィチ。3月のパーヴォ・ヤルヴィ/N響のウエスト・サイド・ストーリー、そして何と言っても札幌へ飛んで参加してきた7月のPMFのバーンスタインのコンサートやイベント!

 

その他、レニーの曲が演奏された数々のコンサートも含め、どれも感動的な思い出深い出来事となりました。

 

 

 

どうして私がここまで熱心なレニーのファンになったのか?今日の誕生日の機会に、少しご紹介したいと思います。

 

 

それはまだ大学生の時でした。私はピアノのリサイタルは中学、高校と聴きに行く機会はありましたが、オケのコンサートを聴きに行き始めたのは大学生からです。チャイコフスキー/悲愴のコンサートがあったので、予習のためにCDを買いに行きました。

 

当時は指揮者について知識がなかったので、聞いたことのある名前の指揮者のCDを選びました。レナード・バーンスタイン。ウエスト・サイド・ストーリーの作曲家であることをかろうじて知っていた、ただそれだけの理由でした。

 

CDを買って、さっそく家で聴いてみたらびっくり!第4楽章が非常にゆっくりなんです!それもそのはず、通常の演奏の倍くらいの時間がかかって、途中で止まったりして、なかなか進まないんです(笑)。

 

最初なのでスタンダードな演奏のCDが欲しかった私は「失敗した!」「お〜い、どうしてくれるんだ〜!」と後悔しきり(笑)。お金に余裕のない大学生にとって、3,000円は大きいのです。それがレニーとの最初の出逢いでした。

 

 

しばらく経ってからのこと。当時NHKが衛星放送で、レニーが主にウィーン・フィルを振ったマーラーの交響曲全曲の放映をシリーズでやっていました。父親がビデオに録画したので、その映像を見る機会がありました。

 

何と情熱的で惹き込まれる指揮!!!

 

その音楽と一体化した魂を揺さぶられる指揮に大いに魅了されました!特に2番、3番、5番、8番、9番には圧倒的な感銘を受けました!なんだ、悲愴では懲りたけど(笑)、この指揮者は凄い人なんだ!

 

マーラーとともにベートーベンの交響曲全曲の放映もありました。ベートーベンも情熱的な指揮に大いに魅了されましたが、併せてレニーのインタビューも付いていて、その惹き込まれる語りにも大いに唸りました。

 

 

そして、これらの映像を何度も繰り返し見て、レニーに完全にはまってしまった私は、その後、買う買うCD、ほとんどレニーが指揮したものになりました。マーラー(新盤)、ブラームス、シューマン、シベリウス、ショスタコーヴィチなどなど。

 

特にマーラーの新盤は、ちょうど1曲1曲、CDを録音するごとに出ていた時期なので、新しいCDが出たら即座に買って、何度も繰り返して聴いたのを、よく覚えています。3番が出た時には、作曲家かつマーラー研究家の第一人者の柴田南雄さんが「遂にパルナッソス山の頂点に立った」と絶賛していました。

 

びっくりさせられた悲愴もよくよく聴いてみると、テンポは非常にゆっくりですが、深い悲しみの息遣いに満ちた演奏に感動を覚えるようになりました。そして、このような途方もない演奏はライヴでこそ聴きたい。ライヴで聴いたらどれだけ感動するんだろう?そもそもライヴのためにある演奏。そんな思いに至りました。レニーの演奏は特にウィーン・フィルとのものは、ほとんどがパッションに溢れたライヴ録音です。

 

 

いわゆるクラオタの方というのは、同じ曲を複数のCDで聴いて、それこそ20枚とか持っている方がいて、中には100枚とか(笑)持っている強者もいるそうです。私の場合、ブルックナー7番やシベリウス5番など、そこそこ枚数を持っている曲もありますが、多くはレニーのCDのみ(笑)。

 

私はそもそもアマチュアながらもピアノの演奏が本分で、そこまで熱心なクラオタではないこともありますが(もしかすると正直な話、そもそもクラオタですらないかも知れません?)、レニーのCDさえあれば、他の指揮者のCDを買う必要はないように思っていました。他の指揮者のCDを聴くよりも、むしろライヴを聴く方が楽しい。演奏は生きものだ。それを教えてくれたのもレニーの演奏でした。

 

 

私はオーケストラやピアノの生の演奏に正確さを求めることはしません。他の方のブログやツイッターだと、やれミスをしただとか、音程が悪いだとか、そんなことばっかり言ってる人たちがいますが、私はほとんど感心ありません。

 

そもそも、自分でもピアノを弾くので、演奏という行為がいかに難しいのか、日々体感しているので、そんなこと軽々しく書いたりできません。そんなに不満があるなら、自分でやってみてはいかがですか?

 

 

そんなことよりも、レニーの演奏ばかりず〜っと聴いてきた私には、その演奏がどういう表現をしたのか?目指しているのか?それはどうしてなのか?作曲家の楽譜から何を読み取ったのか?オリジナリティはどこにあるのか?そう言ったことに感心があります。

 

例え傷の多い演奏であっても、こんな解釈をしてくるのか!こういうことを目指しているのか!正確に演奏するよりは、情熱や雰囲気のある演奏、アマチュアの方の演奏も含め、私はそんな演奏を好みます。

 

 

レニーの愛弟子、佐渡裕さんの書籍は、その点をレニーがどう考えていたのか、よく分かるエピソードがふんだんにあって好きです。その一つにこんなものがあります。

 

佐渡さんがとある曲の変拍子が上手く振れなくて、振り方の練習していた時のこと。レニーからピシャっと手を叩かれて、「お前はそんなことをするために、あんな高いところ(注:指揮台のこと)に立っているのか?」と叱られたそうです(笑)。指揮の技法のことなんかよりも、楽譜に向き合って自分の音楽を深めろ、自分ならではの表現や解釈を探求しろ、そんなアドバイスだと思います。

 

以前にもブログで書きましたが、尾高忠明さんは過去のインタビューで、尊敬する指揮者としてレニーのことを挙げていて、「時々とんでもないテンポになったりもするけど、全て楽譜から出ている、嘘がない、読みが深い」というようなことをおっしゃっていました。

 

 

レニーは単なる指揮者ではなく、素晴らしい作曲家でもあります。自身が作曲をする、自分の想いを楽譜に書き連ねている。そして、その視点や技量を持って、指揮という行為にも当たる。楽譜の読みが深くなるのは自然なことだと思います。

 

その意味で、タイプこそ違えども、私はレニーと、かのヴィルヘルム・フルトヴェングラーは同じ範疇の指揮者と捉えています。フルトヴェングラーが交響曲を3曲残している素晴らしい作曲家であることは、残念ながらあまり知られていません(特に第1番は稀代の名曲だと思っていて愛聴しています)。またフルトヴェングラーがレニーの実演を聴いて、すっかり魅了されたと語ったと、以前、本で読んだこともあります。さらにその系譜を辿るとマーラーにつながることでしょう。

 

 

話をレニーに戻します。レニーのさまざまな教えや数限りないエピソードを通じて、人生をポジティブに生きること、情熱的に生きることも教わりました。また、お酒の逸話も数多く(笑)、人生たまには不健康に、お酒に揉まれて過ごした方が楽しいことも貴重な示唆でした。そしてレニーが大好きな私は、それを忠実に実行しました(笑)。

 

多くの苦労や苦難もありましたが、いまとても幸せな気持ちで、充実感も持ちつつ、引き続き人生を前向きに生きて行こうと思えるのは、ひとえにレニー(と家族と友人、ブロ友さん含め)のおかげだと思います。レニーに出逢えて本当に良かった!レニーとともにある人生で本当に良かった!感謝の気持ちでいっぱいです。

 

 

 

以上、レニーの100回目の誕生日に、私のレニーへの熱い想いの一端をお話しさせていただきました。レニーのことを語り始めると止まりません(笑)。長くなりました、お許しを。

 

 

最後に、もしすると、まだレニーの演奏を聴いたことのない方がいらっしゃるかも知れません。レニーの魅力を体感できる入口として、個人的にお勧めの演奏をいくつかご案内します。レニーのことを知るきっかけになれば嬉しいです。

 

 

マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調(ウィーン・フィル)

⇒レニーのマーラーは新盤も旧盤も、私が繰り返し見た映像も、どれも素晴らしいですが、入りやすいのはこの5番。妖しい美しさの第4楽章もいいですが、情念の塊のような激情の第2楽章をぜひ!

 

シューマン/交響曲第4番ニ短調(ウィーン・フィル)

⇒マーラー以外のドイツ・オーストリア系の作曲家もハイドン、モーツァルト、ベートーベン、ブラームスなど、みな素晴らしいですが、この演奏を。第1楽章の狂おしいような響き、第3楽章から第4楽章のたっぷりとした盛り上がり!

 

チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調(ニューヨーク・フィル新盤)

⇒4番は名演、6番は上記のように、とんでもない演奏(笑)ですが、ここは5番を。引きずったり、たっぷり盛り上がったり、非常に振幅の激しく感動的な演奏です。

 

シベリウス/交響曲第2番ニ長調(ウィーン・フィル)

⇒大好きな演奏で、マーラー以外で一番聴いたかも知れません。雄大な第4楽章もさすがレニーですが、圧倒的な表現力の第2楽章は唯一無二の存在だと思います。なにせ18分もかかるので(笑)。

 

ガーシュウィン/ラプソディ・イン・ブルー(ロサンジェルス・フィル)

⇒アメリカものからはこちらの弾き振りの1枚を。とにかくスウィングしまくりのレニーのピアノ!カップリングのガーシュウィン/前奏曲第2番も非常に雰囲気のある素晴らしいピアノです。