ロッシーニ没後150周年の今年、ロッシーニの音楽祭の威信をかけて、ペーザロ・ロッシーニ音楽祭が敢行する開幕公演、リッチャルドとゾライデを観に行きました。

 

 

ROSSINI OPERA FESTIVAL

ROSSINI

RICCIARDO E ZORAIDE

(Adriatic Arena)

 

Direttore: GIACOMO SAGRIPANTI

Regia: MARSHALL PYNKOSKI

Coreografie: JEANNETTE LAJEUNESSE ZINGG

Scene: GERARD GAUCI

Costumi: MICHAEL GIANFRANCESCO

Luci: MICHELLE RAMSAY

 

Agorante: SERGEY ROMANOVSKY

Zoraide: PRETTY YENDE

Ricciardo: JUAN DIEGO FLÓREZ

Ircano: NICOLA ULIVIERI

Zomira: VICTORIA YAROVAYA

Ernesto: XABIER ANDUAGA

Fatima: SOFIA MCHEDLISHVILI

Elmira: MARTINIANA ANTONIE

Zamorre: RUZIL GATIN

 

CORO DEL TEATRO VENTIDIO BASSO

Maestro del Coro: GIOVANNI FARINA

ORCHESTRA SINFONICA NAZIONALE DELLA RAI

 

 

 

(写真)リッチャルドとゾライデのプログラム

 

 

リッチャルドとゾライデ。おそらく余程のロッシーニ好きでもない限り馴染みのないタイトルだと思います。私もこれまでロッシーニのオペラの実演は10作品以上観てきていて、クラシック・ファンの中でもそこそこ親しんでいる方だと思いますが、観るのはもちろんのこと、作品自体も初めて知りました。

 

リッチャルドとゾライデのストーリーは複雑です。ごくごく簡単にご案内すると、十字軍の時代、アフリカのイスラム圏の国ヌビア。王様アゴランタはゾライデを求めるも拒否されます。ゾライデの恋人、十字軍の騎士リッチャルドは変装してゾライデ奪還を試みるも、アゴランタに捕まってしまいます。いよいよ死刑というところで、十字軍の軍勢が押し寄せてヌビアを制圧。リッチャルドはアゴランテを赦し、ゾライデと結ばれてメデタシメデタシ、という物語です。

 

詳しくは日本ロッシーニ協会のウェブサイトに丁寧な解説が出ています。今回このオペラを観るに当たり、このロッシーニ協会の解説が非常に参考になりました。この場を借りて感謝の気持ちを表したいと思います。

 

 

 

会場はペーザロのまちからバスで10分くらい離れた体育館、アドリアティック・アレーナ。ペーザロの東京体育館、と言った感じです。まちなかにもテアトロ・ロッシーニがありますが、小さな劇場なので、世界中から集まるロッシーニ好きを収容できないので、この体育館で公演が行われているんだと思います。体育館ですが、座席の上の空間をカバーしたり、音響的には問題なく観ることができます。

 

(写真)開演前のアドリアティック・アレーナ

 

 

(写真)ペーザロ・ロッシーニ音楽祭の幕

 

 

さすがは記念年のロッシーニ音楽祭の開幕公演。海沿いのバカンスのまちの音楽祭なので、比較的カジュアルなのかな?とも思いましたが、かなり正装率が高い印象でした。

 

 

 

席に着くと、幕にはアラビア語の文字が並べられた絵。昨年観たオットー・ネーベルの作品のように思いました。第1幕。序曲が始まりました。キビキビとした木管にこれこれっ!と。ロッシーニ音楽祭に参加できたことの喜びが沸々と湧いてきます。

 

舞台はイスラムの王様のカラフルで大きなテントがどんと中央に配置された美しいもの。バレエが王様アゴランテを讃える踊りで盛り上げます。 アゴランテのセルゲイ・ロマノフスキーさんによる挨拶代わりの歌。抜群のアジリタで、あれ!?フローレスさん?と思わせるほどの素晴らしさ。

 

このオペラのヒロイン、ゾライデと友人のファティマの2重唱にうっとり。ゾライデを目の敵にしているアゴランテの奥さんのゾミーラとゾライデの対決のやりとりも非常に聴き応えありました。プリティ・イェンデさんのゾライデがめちゃめちゃいい!アゴランテがゾライデを求めるシーンでの背景の女性合唱も綺麗。

 

続いて、アゴランテ、ゾライデ、ゾミーラがすれ違う想いを歌う3重唱。これです、これ!ロッシーニを聴く愉悦!ロッシーニ・クレシェンドきた~!ゾライデは2回目の歌を信じられないくらい旋律に変化を付けて、大いに引き込みます。

 

舞台は変わって十字軍側のリッチャルドたちの場面。部屋に仕立てた舞台から、その上部を引き上げて、今度は橋に見立てる美しい舞台。バレエダンサーたちが水色の大きな旗をブンブン振って魅せて、本当にセンスの良い舞台です。

 

橋の上に傘をかざした綺麗な女性が闊歩し、水色の布で波を表現する中、リッチャルド役のファン・ディエゴ・フローレスさんが船に乗って登場。高音の高速アジリタを駆使した素晴らしい歌!さらにはオケの前に出て歌って迫力も十分。拍手が鳴り止まなくて大変なことになりました。その後の4重唱、6重唱も聴き応えあり。ラストも盛り上がりました!

 

 

 

第2幕。リッチャルドとアゴランテの2重唱はゆっくりの歌も小気味の良い歌も素晴らしい!この2人、容姿も歌もよく似ています。リッチャルドとゾライデの場面。ゾライデは相手が生き別れになった恋人のリッチャルドと分かると打って変わって愛情豊かな表現になって可愛い。2人の愛の2重唱もそれはそれは素晴らしかったです
 

謎の騎士(イルカーノ)の登場は低音が見事。ニコラ・ウリヴィエリさんの迫力の歌でした。その後の4重唱もたっぷり聴かせました。ヴィクトリア・ヤローヴァヤさんのゾミーラの独白のアリアも魅せます。

 

最後、捕まったリッチャルドとゾライデ、イルカーノが処刑されそうになったところで、十字軍が救出に入ってきます。リッチャルドの友人エルネスト役、ザビエル・アンドゥアーガさんは見栄え良く、歌も本当に素晴らしい!アゴランテが成敗されそうになったところでリッチャルドはアゴランテに武器を返して赦しを与え、最後は大団円の歌!最高のロッシーニ!会場は大いに盛り上がりました!

 

 

 

さすがは開幕公演。おそらく世界中から最高のロッシーニ歌手が集まったと思われる、見事なまでの歌手!指揮者もオケも抜群、舞台や演出も非常にセンス良く、最高の公演となりました!リッチャルドとゾライデはどの歌も魅力的で、隠れた傑作、という印象です。ロッシーニ没後150周年の記念すべき開幕公演、参加できたことはロッシーニのファンとして、一生の思い出となりました。