ほたるいかの書きつけ -75ページ目

「Hado」2月号(3)「歴史的に肉食を禁じていた国」って…

太田龍と江本勝の対談の続き。三回目。
「歴史的に肉食を禁じていた国」
だそうです、日本は。大陸から様々な文化や技術が持ち込まれた際に、家畜も導入された。しかし、天武天皇が「肉食禁断の詔勅」を発布、食肉用家畜の飼育が禁じられた。一回の詔勅では伝わらないので、その後の天皇も、何度か詔勅を出し、桓武天皇以降は完全に殺生肉食は禁止された、と。
…完全に殺生肉食は禁止されました。こういう民族は世界中にどこを探してもいないでしょうね。
と。私はこのあたり詳しくないので間違っていたら指摘していただけると有難いのだが、表向き禁止されたとはいえイノシシを始めとして狩猟による肉食文化はずっと生き続けたのではなかったのか?それにそもそも禁止したのは仏教の影響で、民族云々ということではないだろう。表向きにせよ定着したのが特殊だと言うにしても、そこに至る様々な歴史的過程を無視し、特殊性だけを強調するのは問題だろう。

 この太田の発言を受けて、江本はまずこう答える:
古代から肉食を禁じているということは、今の時代、子孫として狂牛病や鳥インフルエンザで大騒ぎしていることは、恥ずかしいかぎりです。
まず一つ確認しておきたいのは(江本の意図がどこにあるかは別として)、江本によれば、明治の「文明開化」は恥の第一歩だったのですね、ということである。肉食を禁じたことが良いことだと言うのだから。安倍晋三に代表される自民党・民主党内の右翼勢力を始めとする安易に南京事件や従軍慰安婦を否定するような人々は、江戸以前を無視し、とかく明治以降の戦前の体制を賛美する傾向が強いが、江本の論理によれば、明治はダメな時代であったと、そういうことになる。
 次の発言がまた凄い。
肉食を禁じた古代の天皇たちは、エコロジーとともに霊的な意味でも、日本人の魂を守るという意味をご存知だったのですね。
…言葉が見つからん。何をどう考えたら、どう論理をつないだら、この発言が出てくるのか。まず、肉食を禁じたということとエコロジーの関連がよくわからん。そして唐突に「霊的な意味でも」と出てくるが、どういう意味かわからん。次の「魂」に対する枕詞以上の意味があるのだろうか。で、さらに、肉食を禁じると言うことがどうして日本人の魂を守ることにつながるのかがまったくわからん。つまり、この文章には理解できるところがない。

 この唐突な意味の分からない文章を受けて、次の節に移る。続きはまた明日。


「Hado」2月号(2) 「人類の運命転換の使命を持つ民族」ってなあ…

太田龍と江本勝の対談の続き。
「人類の運命転換の使命を持つ民族」
 まずは太田がベンジャミン・フルフォードとの共著の新しい本について紹介する。つづいて、日本の先史時代についてコメントが入る。曰く、縄文土器時代に対応する時代が西洋には存在しない、縄文人はとても野蛮で、弥生人が入ってきて滅びたとされる、縄文人はお互いを殺しあったり争うことをしたという記録がほとんどなかった、と。ここでの「野蛮」の意味が不明。殺しあったり争ったりしたことがない、というのと野蛮とはどう整合しているのか?
 つぎに、豊臣秀吉が天下統一をし、刀狩りという「武装解除」をした結果、250年間、戦争をしていない、と。このようなことは他国では考えられない、と。島原の乱とかはどうなるの?という素人ツッコミはおいておく。
 これら太田のコメントに対し、江本が受ける:
元来、日本人には平和を愛する血が流れている、特別の民族だということですね。
これ、南京事件否定の論理でもよく出てくる。平和を愛するのにどの民族だって関係ないし、置かれた状況によってはどんな民族だって虐殺したりする。史実に基づいて南京事件について述べれば「日本人は虐殺をするようなDNAを持つ民族だと言うのか!」とムチャクチャな反論をするのはネット上ではよく見られる。とにかく、このような形で特定の民族を特徴づけるのはとても危険だ。

 つづいて道具の話に移る。太田は、道具が誕生すると、まず石器を機能的に使う、と言う。日本人も各種の石器を作った、と。ところが、
ところが石器に対して「何となく危険そうだ……」と直感的に感じた日本人の祖先は、石器を使用しませんでした。ですから、日本では、石器が武器として発展していません。
という。ええと、アレ?という感じですが…。「何となく危険そうだ」ってなんなんだよ。で、その代わりに土器が発達したのだ、と。土器には、食生活の独特な特徴がそこに示されているのです、と。平和な感じを醸し出そうとしているのだろうか。しかし、私の乏しい知識でも、日本の縄文時代については今もどんどん知見が更新されていること、中国はもとより世界的にも古くから土器の文化は見られたことなど挙げられる。ちょっと単純化しすぎではないか。

 というところで今日はここまで。
 歯切れは悪いですが、それは私の知識が乏しいせいです。それでもこれくらいはおかしなところがツッコめる、という例だと思っていただければ。


「Hado」2月号(1)

 「Hado」2月号(No.173)の紹介と批判をこれから少しづつやっていこうと思います。目に付く範囲で。
 しかし、ざっと見て見たのですが、(予想していたとはいえ)ツッコミどころ満載で、どこから手をつけたものやら…。とりあえず、一番スゴそうな太田龍との対談をこれから紹介したいと思います。何回かかるかわかりませんが。

 「平和のDNAをもつ日本民族が地球の危機を救う」(p.12)
 連載対談 [その1]
日本義塾塾長 太田龍 x 国際生命の水財団 名誉会長 江本勝
[その1]ですよ、[その1]。わたしゃこの雑誌毎月買わんといかんのだろうか。それはともかく、まずはリードを。
―― 人類がこれまで信じていた歴史、科学、文化、政治、経済などすべては、ごく一部の地球支配を目論む勢力によって情報統制されています。その実体(ママ)を暴く活動を精力的に行っている太田龍氏と、水の研究により、これまでの現代科学の常識に挑戦している江本所長が顔を揃え、熱き対談が実現しました。
白熱の討論のなかで日本民族が、地球の未来に対して課されている大いなる使命が浮かび上がってきます。
いや~これだけでもスゴイのですが。
 唐突に陰謀論が展開される。ま、太田龍だから、当然といえば当然なのだけれども。すでに情報統制を行っているなら「地球支配を目論む」どころかもう支配しているのではないか、と思うのだが、そのような矛盾を気にしていては陰謀論など開陳できないのであろう。「実体」も気になるところ。「実態」の誤植では、と思うのだが、もしかしたら「支配を目論む勢力」の実体を暴く、という意味なのかもしれない。フリーメーソンだのなんだの、というやつか。私は太田龍氏についてはほとんど知らないので、これについては判断を控えておく。ただ、この記事のプロフィールによると、
…1985年以降、エコロジー運動、食の革命(たべもの学)、家畜制度廃絶を土台とする日本原住民史、世界原住民史、天寿学体系構築に着手する。また。(句点はママ) 1992年以降、ユダヤ・フリーメーソンを中核とした超巨大勢力による新世界秩序(ニュー・ワールド・オーダー)構想の危険性を看破し、警鐘の乱打を続けている。…

とあるので、「実体」でよいのかもしれない。乱打?乱れすぎだわ。(^^;;
 ついでに、このプロフィールによると、
著書に『地球の支配者は爬虫類人的異星人である』『日本人が知らない「人類支配者」の正体』(船井幸雄氏と共著)『まもなく日本が世界を救います』(ベンジャミン・フルフォード氏との共著など。

とあり、そのトンデモぶりが伺える。さらについでにもう一言添えるならば、第4インター絡みの経歴はまったく省かれており、実態はともかく「右翼」的風潮に乗せられている読者から警戒されるような字面は注意深く取り除いた、ということなのだろう。

 さて、リードに戻ろう。2番目の文はまだツッコむべき点が残っている。それは、
水の研究により、これまでの現代科学の常識に挑戦している江本所長
というところだ。以前、「AERA」で「水伝はファンタジーだ」発言があったが、この紹介文は、明確に「水伝」は(
未来の、かなにかは知らんが)科学であると宣言しているのだ。現代科学との対立構造があるということを認めたことになり、ニセ科学批判の俎上に乗せられても仕方ないと言うことだ。
 最後の文は、トンデモ系ではよくお目にかかりそうな文章であるが、これについては本文を見ていく中で意味が明確になっていくと思う。

 さて、リードにツッコむだけでこれだけの文章を要してしまった。本文を相手にしだしたら一体どれだけかかるのだろう。もっとも、私も歴史関係については素人なので、どう考えてもおかしいという点以外は触れないつもり。それでもスゴイところはいっぱいあるのだが…。

 最後に、今回の対談(その1)の小見出しだけを掲げておこう。
人類の運命転換の使命を持つ民族
歴史的に肉食を禁じていた国
武装解除で平和を守るDNA
水は地球外から到来した
水の研究は現代科学を転倒する
…スゴイですね。小見出しを引っ張るのに一瞬目に入った本文にもスゴイキーワードが散りばめられているのですが、それはまあおいおい、ということで。

ちなみにこの対談の次のページは七田眞の宣伝です。「『右脳開発』を年間購読して楽しく、すばやく、右脳習慣を!」だって。年間購読すると、今ならもれなく「運を呼び込む右脳開運術」<七田眞の吹き込みCD>がプレゼントされるそうです。うーむ。(^^;;
 この手の雑誌は広告もまた読み応えがあって大変面白いのだが、ウェブに載せるには、一人じゃ手が回らんですな。(^^;;

 あ、よく考えたら「Hado」が何物か書いてなかった。これは株式会社IHM(江本勝の会社、水伝もここから発行)の月刊誌。定価680円です。「世界の水に愛と感謝を! Hado Life Magazine "Love and Thanks"」だそうです。

精神世界コーナー

 出張のついでに新宿に寄って来た。

 紀伊国屋本店とジュンク堂の精神世界コーナーの充実度は凄い。行く度に、並んだ本のタイトルを眺めてニヤニヤしてしまう。ちょっと変なヒト、と思われそうだ。いや、ちょっとじゃなくて、素で変なヒトだ。(^^;;
 紀伊国屋のほうは月刊「Hado」を置いているので買ってきた。ここに来れば立ち読みできるというわけなので、「興味」のある人は一度見て見たらいいのではないだろうか。私は資料として購入しましたが(実生活のほうで使うのです)。
 中身についてはおいおい紹介したいと思うが、パラパラと見るだけでもう頭がクラクラしてくる。太田龍と江本勝の対談は凄そうだ。「ゼロポイント・フィールドが宇宙の謎を解く」なんて記事もある。「スペイン語版『竹内文書』ついにメキシコでデビュー!」って…。「第一回『江本賞』受賞者決定!」なんてのもありますよ。うーむ。

 他にも(買わなかったけど)、「すぐそこにいる宇宙人」なんて本も欲しかったですねえ。だって、「『宇宙人の見分け方』袋とじ付!」だよ。袋とじの中をなんとか見ようと思ったけど、さすがにハズカシイのでやめました。

 それと「アセンション」関係の本がこの半年~1年ぐらいでやたらと増えている気がする。アセンションについては少し押さえていかないとと思っているのだけど、こう本が多いとどこから手をつけたものやら…。船井幸雄の次元上昇に関する本もあるけど、「誰某がこう言っている」的な書き方なので、イマイチよくわからん。

 こういった本たちが世の中に与える影響を考えなければ「トンデモさん」として楽しめるんですがねえ。

「道徳推進教師」

「40年ぶり総授業増 道徳教科化見送り 指導要領改訂案」 (『朝日』)

 道徳教科化見送りというのは喜ばしいが、以下の記述を見ると警戒しないわけにはいかない:
 道徳教育は「教科書検定で国が価値観を判断することは難しい」などの理由で教科化は見送る一方、各校に「道徳推進教師」を置き、学校全体で取り組むことにした。
「道徳推進教師」の力量と思想で内容が大きく左右されることが予想される。「修身」的なものにしてはならないことはもちろんだが、「道徳推進教師」によって「水伝」が広められることのないよう、注視していくことが必要だろう。