ほたるいかの書きつけ -55ページ目

メーカーにとってのマイナスイオン(2)

 前回のエントリ、Yahooの掲示板で色々な方に言及していただき、ありがとうございます。
 その中で、legal_guardian01さんが、マイナスイオン掃除機に関する特許について調べてらっしゃいます 。それに関して補足というか追加でコメントをしたいと思います(YahooのIDを持っていないので。すいません)。

【マイナスイオン掃除機のメカニズム】
 たいていのホコリは帯電しているそうです。なので、電気を帯びた物体を近づければ、異符号電荷を帯びた物体を吸着させることができます。
 legal_guardian01さんもコメントされているように、おそらく、この「マイナスイオン掃除機」は効果があるのでしょう(正確に言えば、効果があってもおかしくはない、ですね)。
 たとえばPanasonicのウェブサイトには、掃除機のノズルについての開発秘話のような話が載っています。「指令2 フローリングのザラつきを取れ」 。開発にかける技術者の努力が伝わってきます。
 この中に、「マイナスイオン掃除機」の話が出てきます。住宅事情が変化し、フローリング化が進行することで、従来の掃除機では吸いきれなかった細かいホコリが気になるようになって来た。それをなんとかうまく吸い込めないか…と。

 簡単に要約します。ホコリは正負それぞれに帯電しているものがあります。一方、フローリングの床は通常は負に帯電しているそうです。そのため、負に帯電したホコリは床と反撥するため掃除機で吸い込みやすいのですが、正に帯電したホコリは床に吸着するため、なかなか掃除機では吸い取れません。
 そこで、掃除機からホコリに負電荷を与えれば、掃除機でも簡単に吸い取れるようになると考えられます。Panasonicでは、「マイナスイオン」を発生させ、それで正に帯電したホコリをくるみ、床から離れやすくして掃除機で吸い取りやすくしたということです。

 その具体的なメカニズムですが、これはlegal_guardian01さんが説明されたものとおそらく同一です。つまり、掃除機のノズルにフッ素樹脂のプレートをおき、ナイロン製ブラシと常にこすれるようにしておきます。すると、帯電序列からフッ素樹脂プレートは負に、ナイロン製ブラシは正に帯電します。これにより、「マイナスイオン」が発生し、正に帯電したホコリに吸着させて吸い取りやすくするのだそうです。
 legal_guardian01さんが指摘されているように、これは摩擦による帯電ですから、プレートが負に、ブラシが正に帯電するのは実際そうなのでしょう。
 ただし、ホコリに吸着するとされる「マイナスイオン」が何者なのか、どういう成分なのか、フッ素樹脂プレートからどのようにして放出されているのか、あるいは単にブラシとこすれて負に帯電した細かいフッ素樹脂のカケラが飛散しホコリに吸着しているのか、といったようなあたりは疑問として残ります。とはいえ、電気的にホコリを吸着させているのであれば、それは実際効果はあるのだろうと思います。
 無論、そのウェブページはあくまでも一般向けの解説ですし、それをもって「検証」とは到底いえるものではありません。おそらく、論文なり技報なり、文書の形で効果を説明しているものはあるのでしょう(あると信じたい)。

【「マイナスイオン」という名前の問題】
 さて、『パリティ』編集委員会が原稿を依頼したメーカーがどこなのか、それはわかりません。が、とにかくメーカーから「説明できるものがおりません」という実に情けない返答を引き出しました。またlegal_guardian01さんは、上記掲示板にて「『帯電順位』を知っている技術者が摩擦帯電を知らないのはどうかと思う」と述べておられます。私も、本当に知らないのであれば、どうかと思います。

 ここからは私の想像です。
 本当は知っているんじゃないでしょうか?
 『パリティ』からの依頼は、単に掃除機の原理の説明だけではありませんでした。「マイナスイオン掃除機はどんな仕組みか、またなぜマイナスイオンが体によいのか解説してほしい」というものでした。つまり、前半の「仕組み」についての原稿依頼であれば、メーカーは喜んで執筆を引き受けたのではないか、ということです。
 ところが、こういう依頼であれば、「マイナスイオンが体によい」ということについても触れざるを得ません。あるいは全く触れない原稿が受理されたとしても、その件についてのコメントがなかった、と編集委員会からの注釈がつくでしょう。いずれにしても、それは「マイナスイオンが体にいい」という「神話」をメーカーが自ら否定することになります(「否定」というのは、「体にいい」ということが実証されていないということを明言する、という意味です)。これは、付加価値として有効な「マイナスイオン」のブランドイメージを傷つけるものであり、メーカーとしては絶対に避けなければならないことでしょう。

 SSFSさん(ssfs2007さん)は、体にいいかどうかは問題ではない、と言うかも知れません。しかし、そこはマイナスイオン問題の本質の一つであり、ニセ科学という観点からは絶対に外せないところです。
 実際、googleで「マイナスイオン掃除機」で検索をかけて1位に来るサイトを見てください(2位が上記panasonicのサイト)。「マイナスイオン掃除機トップ」 というサイトが引っかかると思います。どういうサイトかよくわかりませんが(「HEALTH GOODS 美し」という販売店のようですが)、このページの下に「マイナスイオンの効果」とあります。このページを開くと、真っ先に出てくるのがマイナスイオンの人体への影響です。
 「マイナスイオン」といえば「体にいい」。こういうイメージが、メーカーにとっては大変に利用価値のあるものとなっているのです。
 「マイナスイオン問題の本質はその名前である」ともよく言われますが、それはつまり、「マイナスイオン」という言葉を出すことによって、本来の効果以上に価値があるものだと消費者に思わせることが問題だ、ということなのです。「効果はあってもニセ科学」というのも、そういうことです。仮に「マイナスイオン掃除機」が優れた製品であり、ノズルで発生させた帯電物質がホコリを集める機能が十分にあったとしても、「マイナスイオン」がニセ科学だ、ということにはなんら影響を与えないのです。

【マイナスイオン問題に決着をつけるには】
 これは私見ですが、もし、「マイナスイオンは体にいい」というイメージがはびこっていなかったら、マイナスイオンという名称は「アリ」だったかもしれません。つまり、なかなか一般人には理解しづらい複雑なメカニズムを持つ製品について、その仕組みを端的に表す名前として「アリ」だったかもしれない、という意味です。
 ところが、この社会では、既に「マイナスイオンは体にいい」ということが認知を受けてしまいました。それに貢献し、またそれを利用してきた企業(特に大企業)は、真剣に反省する必要があります。
 「マイナスイオン」という名称を使わない、というのは最低限ですが、私はそれだけでは企業倫理としては不十分だと考えています。大企業の責任としては、「マイナスイオンは体にいい」という言説には根拠がない、ときっちり言うべきだと思うのです。
 「効果はあってもニセ科学」と言われないためには、企業が自ら正しい認識を広げていく必要があります。何が検証されていて何が未検証なのか、それを自ら明らかにしていくことが企業の社会的責任ではないでしょうか。
 マイナスイオン問題にケリをつけたければ、ちゃんと「マイナスイオン」がもたらしている問題と向き合う必要があります。個別の製品のメカニズムの問題ではないのです。

***

「掲示板のほうで書け」と言うのでしょうけど、YahooのID持ってないので、自分のブログに書きました。
もっとも、散々「自分のブログを作ってそこで自説を開陳せよ」と言われ続けたSSFSさんが未だにそれをしていないのですから、言われる筋合いではないだろう、という気もしますけどね。
 紹介していただいた、legal_guardian01さんやyokoyamahotchillipeppersさんをはじめとする皆様には不都合をおかけして申し訳ありません。どうもありがとうございました。


メーカーにとってのマイナスイオン(追記あり)

---
(追記)Yahooの掲示板で色々取り上げていただいたので、関連してもう一つエントリを上げました。「メーカーにとってのマイナスイオン(2)」 です。こちらもよろしく。
---

 『パリティ』2008年5月号の、大槻義彦さんのエッセイ「essay パリティのココロ」は、マイナスイオンの話であった(いろいろ事情があって、やっと5月号が読めた)。
 マイナスイオン製品を作っている大手家電メーカーに、マイナスイオンについての記事の執筆を依頼したところ、丁重に断りの返事が来たらしい(断られるだろうと思って依頼したとしか思えんけど、依頼するところが偉いよね)。
 途中の部分を引用する。
 これらのばかばかしいオカルトまがいの商品(引用者注:マイナスイオンの腕輪やネックレス、車の燃費向上グッズなど)は公正取引委員会にまかせるとして、れっきとした日本有数の大企業が”マイナスイオン掃除機”では捨ておけない。
 わが『パリティ』の編集委員会はこれを議論、さる大手の家電メーカーに対して執筆依頼をすることにした。「マイナスイオン掃除機はどんな仕組みか、またなぜマイナスイオンが体によいのか解説してほしい」と。
 さっそくこのメーカーからていねいな返答をいただいた。「あいにく当社にはこれに関し、説明ができる者がおりません」というものだったのだ(笑)。解説できる人がいないだと?それならこのメーカーの誰が、この”マイナスイオン掃除機”を設計したのか?
 ホント、技術者の人々は可哀想だなあ、と思う。原理もよくわからんものを搭載しなきゃいけないんだから(上から言われて仕方なく付けてると想定してますが、もしかしたら違うかも)。

 さてマイナスイオンといえば、Yahooの掲示板で活躍されているSSFSさん(ssfs2007さん)ですが、この投稿 にはびっくり。
「水分を高電圧で微細に分解することで発生するnanoe(ナノイー)を野菜室いっぱいに拡散させ、おいしく新鮮なまま野菜を保存します」って書いてあるでしょう。野菜が簡単にしなびてしまえば、ナノイーは効果なしという判断につながります。tsunchan_samaさんはここの古株なんだから、もっとしっかりしてくださいな。
「ナノイー」で指しているものがかなり広い概念のようなので幾らでも言い抜けができそうな気はするけれども、それはともかく、野菜がなかなかしなびないのが「ナノイー」の効果なのか、冷蔵庫の基本性能の効果なのか、単純に湿度を上げたからなのか、原因の切り分けが出来ているんですかね?
 ソレっぽいメカニズムがメーカーサイトには書いてあるけど、ビタミンやポリフェノールが増えるのが「ナノイー」の効果だ、って、検証されているのかな。
 メーカーの宣伝に書いてあるからそうなんだ、って態度(そうとしか見えませんが)はちょっといかがなものかと思いますが。

 『パリティ』には、マイナスイオンドライヤーについても原稿執筆依頼を出して欲しいと思います。「技報」だって出してるんだし、あのメーカーなら引き受けてくれるんじゃないかしらん。(^^)


JR採用差別事件のJR側の本音

 重大発言だと思うのだけれど、その割にはほとんど話題になっていないようなので、ここで取り上げておく。
 国鉄分割民営化の際に、民営化に賛成した鉄労や動労の組合員はほぼ全員がJRに採用されたのに、民営化に最後まで反対していた国労・全動労(現在は建交労の一部)の組合員の多くが採用されなかった事件は覚えておられる方も多いと思う。一種の偽装倒産を行い、新会社には従順な労働者だけを採用しようとしたわけだ。
 当然ながら、これは現在でも続く長期の闘争になっており、裁判も行われている。
 分割民営化については、建交労のサイトに詳しい。

 今回取り上げるのは、「鉄建公団訴訟」における、東京高裁でのJR東海会長・葛西敬之氏の証人尋問の中での発言。なお、葛西氏は分割民営化を主導したメンバーの一人。これも建交労のサイト内のニュース「鉄建公団訴訟でJR東海・葛西会長を証人尋問」から。
葛西会長は法廷で、「JRへの採用は所属組合ではない」と組合差別を否定しながらも、採用の判断材料の一つとして「分割民営化に反対しているより、積極的に関わっていることは重要な要素」とのべ、分割民営化への賛否で採用差別をしたことを事実上認めました。
いやいや、これを組合差別と言わずしてなんと言おう。こういう不当労働行為を許していいのだろうか?もっとメディアが取り上げるべきニュースだと思うのだけれども…。

 資本の論理にまかせておけば、人間は人間らしく働けなくなる。実際、分割民営化に絡んで自殺した人は100名を越えるそうだ。この手の行為は金輪際できないよう、しっかり規制する必要がある。


天安門事件から19年

 今日(昨日になっちゃったけど)は、天安門事件から19年。もうそんなにたつんですね。毎日テレビに齧りついて、一体どうなるんだろうとハラハラしながら見ていました。その後の私の思想形成にかなり影響を与えたという気がしていて、今でも毎年この日になると思い出します。
 19年たって、もはや新聞でも報道もされなくなってきました。残念です。今の中国は、あの頃とは良くも悪くも大きく変わったんだろうな、と思います。

 もう10年ぐらい前だったか、3時間ぐらいの長尺のドキュメンタリー映画もありましたね。オールナイトで上映していて見に行きました。関係者へのインタビューが淡々と続き、リアルタイムで見ていた頃にはわからなかったことが色々あって驚きながら見たものです。
 国は違えど、ああいう状況ではやはり学生の一部はどんどん先鋭的になり、毎日を地道に暮らす労働者たちからどんどん乖離していった状況が、映画で初めてわかりました。日本でも、全共闘に代表されるような70年ごろまでの頭デッカチ(あえてそう言わせてもらいますが)な学生運動(学生運動の一部ではあるのでしょうが)が進んだ道と重なって見えたものです。
 一日も早く、政治的市民的自由が保障される日が来るといいなあ、と思いつつ、この日本では逆行するような動きがそこかしこにあるので、足元すくわれんようにせんとなあ、とも思っています。

 さて。
 天安門事件から半年ぐらいたったある夜。テレビをつけたら、あるバンドが天安門事件について歌っていました。THE NEWSというバンドの「もっと自由に!」という曲(公式サイトはこちら 。久々に見たら、新しいサイトができてるし、メンバーが増えてる…^^;;)。いやいや、衝撃でしたね。「それは 人民解放軍第27軍による 人民虐殺!」って歌ってるんだもん。あー、日本にも、こういうバンドがあるんだ、とビックリしました。そのころ、ANARCHYは活動停止してましたしね(たしか)。それに、内容がずっとストレートだし。ロックだ!と思いましたよ。
 活動再開してるようだし、新しいアルバム出ないかな。出たら真っ先に買いますよ、わたしゃ。ぜひ出してね。(^^)


リチャード・コシミズという人

 kikulogがなんか凄いことになってます。

 何を言われてもトートーと己の信ずる理論を語る人。
 (どうやら)物理屋なのに中身の物理は無茶苦茶。位相を揃えるって…。

 威勢だけはいいが人の言うことを全く聞かない人。
 とりあえずこの人は黒体輻射を理解していないということはよくわかった。「理科ねっとわーく」の画像まで持ち出してトンチンカンな主張をするあたり、JSTの人も可哀想だなあ。
 溶けた鉄だって?あれが溶けた鉄に見えるの?違うでしょう。あれは、溶けた鉄なんかじゃなくって、腐った巨神兵の身体の一部だよ!そうだ、そうに違いない!違うというなら、証拠を見せてみろ!(^o^)

 そしてそしてABOFAN氏まで湧いて出た。(^^;;
 何ヶ月も間があいているのがウソのようだ。まるでつい昨日まで議論してたかのよう。久々に電源が入ったという感じですねえ。電源切れてた間は内部時計が止まっている、と。
 どうやっても「血液型と性格には相関がある」という結論に持っていきたいんだろうけど、全体のロジックが不明なのに、「統計的に有意」かどうかだけ答えろと言われたってねえ。心理学者のロジックと同じなら、既存のデータからは血液型と性格に相関はない、ってことにならんといかんのだけどねえ(自己成就予言の効果は除いて)。
 「統計的に有意」を認めてもらうと、これこれこういう論理で血液型と性格に相関はあるってことが言えるのですが、いかがですか?と主張してもらえれば、まだしも話は進むんですがね(「これこれこういう論理」が間違っていることのメインのはずだから)。

 いやいや皆さんおつかれさまです。

 さて。
 その威勢のいい人がはってくれたリンク先、よくよく見るとリチャード・コシミズのウェブページであった。kikulogでのリンク先はこれ(「WTC小型水爆倒壊説の検証」) 。いやはや、妄想炸裂としか言いようがない(常温核融合の話も出てますね)。大勢の犠牲者がいなかったら、WTCの崩壊は小型水爆じゃなくてアンタの妄想が爆発したせいだよ、とでも言ってやりたいところだが。
 wikipediaなども見てみると、この方、ネット・ジャーナリストを名乗ってらっしゃるようですね。最初、ネットの現状について調べるジャーナリストかと思ったのだが、どうもそうではないようで。ネットを情報源とする「ジャーナリスト」、ってことみたいですね。
 いやいやいや、「ネットの情報だけに頼ってはいけません」という格好の実例だなあ。「ネットだけに頼ってると、リチャード・コシミズみたいになっちゃいますよ!」ってのはどうだろう。ネットリテラシーを教育する上で、いいスローガンになるんじゃなかろうか。(^^;;
 ちなみに彼のブログ もちょっと見てみたのだが、トップのエントリを見ただけで気分が悪くなった。差別と偏見のオンパレードではないの。こんな人の言う事真に受ける人がいるのが信じられない。支持する人は、よっぽど実生活でのフラストレーションがたまってるんですかね???
 彼はテクノトレード・エンタープライズ・ジャパン という会社の経営もしてるのかな?連絡先が彼の名前になってますね。本業はこっちか。

 しかしなあ。
 きくちゆみのブログからベンジャミン・フルフォードのブログにリンクがはってあるけど、そっからすぐにリチャード・コシミズにつながるんだもんなあ。
 きくちゆみさん、いいの?一度リチャード・コシミズのブログ読んだほうがいいよ。あなたの理想は、こんな人の主張と同じ方向なの?