ほたるいかの書きつけ -43ページ目

血液型と性格の話、または人は信じたいものを信じるということ

 アメーバブログは掲示板サービスもやっているようで、今朝、たまたま「血液型で性格がわかるの?」というスレッド がたっているのに気がついた。ちょっとコメントしたのだけど(72と156)、なんというか、議論をするのってスキルがいるよね、というのを実感してしまったというか。
 スレ主のまりあさんという方は、ごくごくまじめに疑問を呈されたようで、私のコメントにも反応してくださり、書いた甲斐があったかな、と喜んでいるのだが、結構なコメントが「だって関係あると思うもん」とか「科学より事実が大事」とか「科学で分かってないことだってある」とか、まあ典型的なのだ。もちろん、ちゃんとしたコメント、まじめに書かれたと思われるコメントも沢山あるのですが。

 声を大にして言いたいのは、科学ではまだわかっていないことはいっぱいあるし、だからこそプロの科学者がいるわけだけど、その一方で、わかってることだって一杯あるわけだ。プロの科学者になるために、なぜ大学行って大学院行って…と長い時間かけて勉強しなきゃいけないかと言えば、要するに、どこまでわかっているのかを理解するためだ(もちろん、どのように理解しているかを理解するのが大事なんですけど)。どこまでわかっているかをわかっていなければ、誰もわかっていないことが何なのかがわからない。つまりプロとして意味のある研究テーマを決められないことになる。
 それを無視して、「科学にだってわかってないことはあるんだから」というのは見当違いも甚だしい。もちろん、特定のテーマ(今の場合だったら血液型性格判断)についての「わかっていること」を知っている人というのはごく限られるだろうから、みんなが知ってなくちゃならないとは全然思わない。だけど、根拠を出して語っているのに、「科学にだってわからないことはある」と言われても、「はぁ?」としか言えないですよね。

 まあ何を書いても読まずに思い込みを語る人というのはどうしてもいるので、いちいち脱力しててもしょうがないよな、とは思うのだけど、こう目の当たりにすると、やっぱり何度も何度もクドクドクドクド言わなきゃ伝わらない人は結構いるんだろうなあ、と思う。
 あ、上でも書きましたが繰り返します。その掲示板でコメントされている方の中でも、ちゃんと読んでコメントされている方、見識を持ってコメントされている方は大勢いますので念のため。

Excelで学んじゃう「マイナスイオン」

 『Hado』の方もあと少しご紹介したい記事があるのですが、その前に、一部で話題になっているうちに関連する話を。

 マイクロソフトの Excel をお使いの方も多いだろう。私は少し前まではほとんど使ってなかったのだが、今の職場に移ってきてから大量の書類がExcelで来るものだから、やむを得ず使っている(基本はLinuxなのだ)。で、去年、あろうことか Excel の使い方講座みたいなのをヤレと言われ、慌てて Excel 本を数冊買い求めたのであった。そのうちの一冊が、『Excelで学ぶ理工系シミュレーション入門』(臼田昭司、伊藤敏、井上祥史)である。
 ちなみに対象は理工系とはまったく関係ない人々なのであるが、なにかネタがないと使い方を教えてもつまらんだろう、ということで、買ったのであった(結局使わなかったけど。Excel上で乱数ふらして、たまたま特定の血液型に偏る少数の集団が出る確率とかをビジュアルに示すとか、そんな講座にした)。

 で、結局使わなかったのでちゃんと読んでないのだけれども、そのうちの第5章はこうなっている:「マイナスイオン、コロナ放電式、電子放射式、紫色LEDと光触媒 不平等電界の解析に挑戦」。きました、マイナスイオン!1年以上も引っ張っているのは、単にちゃんと中身を検討していないから(せめて書いてあることのオーダー評価ぐらいはしたかった)のだが、いま一部で大学教員でありながらマイナスイオンを推進しているような人々についての話題が出ているので、紹介する次第。

 やってることは、ざっと見る限り、電極まわりの電場の解析。ラプラス方程式を解いているようだ(解法自体は前の第4章に記載されているらしい)。

 詳細は措いとくとして、問題は「マイナスイオン」にどういうアプローチをとっているかだ。
 最初のページの脚注にはこうある。
本章執筆時において、マイナスイオンについては諸説いろいろであり、その実体はわかっていない。本章は、マイナスイオン発生器の試作や実験結果、オゾン測定などを通してこれまで得てきた知見をもとに、筆者の1人である臼田がまとめたものである。
というわけで、実体がわかっていないものを計算しようというのだから恐れ入る。さすがに他の著者からも文句が出たのか、この章を執筆している臼田氏が自分の責任で書くということにしたようだ。

 その次には「マイナスイオン」についての解説が載っている。これも詳細は省くが、大気イオンの解説になっているようだ。ただし、「マイナスイオン」「プラスイオン」という用語が出てくるのだが。
 で、こんな記述に出っくわすのだ。 
 空気中にはマイナスイオンだけでなく、プラスイオンも多く存在します。プラスイオンの実態はプラスの電気を持った分子や粒子です。大気が澄みわたり湿度が低めで清々しく感じる時にはマイナスイオンの比率が高く、大気が汚れて高湿度のときはプラスイオンの比率が高くなります。
 滝、噴水、森や森林などの大自然ではマイナスイオンが多く発生します。排気ガスやばい煙などが多いところではプラスイオンが多くなります。
なんというか、教科書的な、というか、絵に描いたようなニセ科学の記述である。

 さらに、「マイナスイオンの効果」にも話は及ぶ。
 最初にこう来る。
マイナスイオンは除菌とリフレッシュ、健康促進に対して効果があります。
大断言!さらに、
 人体の皮膚の細胞膜は外側がプラス、内側がマイナスに保たれています。マイナスイオンが皮膚表面に付着するとイオン交換が行われ、膜の内外に電流が流れ、内から老廃物が、外から栄養分が行き交い、新陳代謝が活発になります。新陳代謝の機能をつかさどる自律神経も活発になり、内分泌腺の機能をよくします。さらに、中枢神経や末梢神経にも好影響を与え、造血機能も増進します。
 このようにマイナスイオンは細胞の生理機能を向上させる効果を担っています。結果的に、身体機能が向上し、呼吸が楽になり、血液が弱アルカリ性になるなど、疲労回復に繋がり、気分が爽快になります。また、気分が落ち着くなどリフレッシュ効果も相乗します。この意味からマイナスイオンはまさに”空気のビタミン”と言えます。
出た~、「空気のビタミン」!!
 ついでに効能をまとめた表も二つ書いておこう。
表5.2◆マイナスイオンの効果と作用
効果 作用
除菌 細菌とウィルスの両方に対して除菌する
除菌補助 オゾンと共存することで除菌作用を促進する
マイナスイオン化 空中の浮遊粒子をマイナスイオン化して無害化する
集塵 空中の浮遊粒子をマイナスイオン化して、集塵用のプラス電極に吸着して取り除く
リフレッシュ、健康促進 マイナスイオンを多く含んだ空間は気分を落ち着かせ、健康を促進する

表5.3◆マイナスイオンの健康促進
プラスイオンが多い場合
マイナスイオンが多い場合
不快感、イライラ
爽快感、精神安定
不眠
快眠
血圧上昇
血圧降下
頭痛、肩こり、めまい、吐き気
身体機能・呼吸器機能の向上
アレルギ症
免疫力向上
動脈硬化、老化 新陳代謝が活発、老廃物の排出
体の疲れ 疲労回復、気分がリラックス
まるで「イオントレーディング 」のようだ(ここの「マイナスイオンを学ぶ」を参照)。

 この後は、コロナ放電などのメカニズムの話や、「マイナスイオンの測定」の話、光触媒との関係などの話が続き、「マイナスイオン」という言葉が出ること、測定の具体的な話が欠如していることを除けば、割とマトモな話に見える。タバコの煙を重イオン化して煙を消す実験の写真なども載せられている。
 まあ後半のこういった「効果」は、たぶん本当なんだろう。そこまで疑うとキリがないので、実験は真摯に行われているとみなしておく。

 それにしても、である。まるでバイブル商法のバイブルを書いているようなものだ。わざわざ「マイナスイオン」という手垢のついたニセ科学用語を出さなくても、また健康に関わる主張をしなくても、十分意味のある内容に仕上げることができたはずなのに。あまりに安易過ぎる。

 「著者略歴」によると、問題の章を執筆した臼田氏は、現在大阪府立工業高等専門学校システム制御工学科教授だそうである。1975年に北大工学部でドクター取って、その後20年近く東芝で研究開発に従事されていたそうだ。他の二人は、伊藤氏は79年にドクター取得、現在愛知工科大学工学部教授、井上氏は80年にドクターを取って現在岩手大学教育学部技術科教授。ただし出身大学もその後の経歴でも、この3人に接点がなさそうなので、どういうご関係なのかはわからない。3人ともソフトウェア関係の著書は多いので、そのあたりでつながったのかもしれない。

 「効果はあってもニセ科学」というマイナスイオン問題の特質がよくわかる本だ。
Excelで学ぶ理工系シミュレーション入門―表計算ソフトを使った分析・解析の実践テクニック/臼田 昭司
¥2,625
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乗客に日本人はいませんでした

 帰りの電車の中で音楽*1 を聴きながらウトウトしていたら、ふいに別の曲が頭の中で鳴り出した。THE YELLOW MONKEY の「JAM」である。好きな曲の一つだ。…いや、好きと言う以前に、心をチクチク刺すので忘れられない曲、と言った方がいいのかもしれない。イエモンの他の曲は特に好きと言うわけではないし。

 子どもの頃、私もニュースで旅客機が墜落すると「乗客に日本人はいませんでした」と何度もアナウンサーがしゃべるのをおかしいと感じていた。日本人じゃなかったらいいのか、と。天の邪鬼なガキだったのだな。*2
 そのうち、たしか親だったと思うが、「日本でやってるニュースなのだから見ている人のほとんどは日本人だ。乗客に日本人がいないとわかれば、大半のニュースを見ている人は自分の関係者は無事であることがすぐにわかる。だから、そう言うことに意味はあるのだ」と言われ、なにか釈然としないものを感じながらも、確かに合理的だよなあ、と納得したのを憶えている。

 それから何年も過ぎ、当時大学院にいたころだと思うが、この「JAM」を知ったのだった。なんで知ったのかは覚えていない。当時は芸能界の動向などほとんど知らず(今も昔も知らないけど)、朝遅くに起きて新聞読んだら研究室に行き、夜は銭湯の閉まる時間ギリギリに慌てて帰って風呂に入り、酒を呑みながら本を読んだりマンガを読んだりという生活だった(テレビはバックグラウンドとしてつけていたけど、内容はあまり見ていなかったような気がする。夜中の再放送のアニメとかぐらいかも。見てたのは。テレビのツボとかやってたのはこのころかな。もうちょい前かな)。というわけで、歌番組も見なかったのだけど、まあなんかのきっかけで知ったのだろう。で、この歌詞を聞いて、昔感じた違和感がまた急に膨らんできたのだ。

 電車の中でウトウトしながら勝手に連想が続き、最近ネット上であった論争(キーワードは「トリアージ」「かわいそう」「ホロコースト」あたりか。これでもまだ断片だと思うけど)を思い出していた。つまり、視聴者の関係者に事故の被害者はいないということを効率よく伝える「乗客に日本人はいませんでした」という言葉、これはまさに合理主義の極であり、情報伝達の最適化をした結果生み出されたもの。ところが、それに対する漠然とした違和感の原因というものが、最適化の結果、捨象されてしまったものへの視点にあるのではないか、と。その意味で、構造が似た側面があるよなあ、などと思っていたのだった。
 もちろん、緊急事態なのであるから、いちいちニュースでそういう視点について解説しているわけにはいかないだろう(今ならネットもあるしまた少し違うのだろうが)。ただ、どこに最適化するか、ということは、実はまったく自明ではなく、価値判断が入るわけだ。大半の視聴者が安心できればよい、という価値判断が。
 結局、ある特定の価値観を持った上での判断だから、別の価値観に立脚することは否定されようがなく、視点を相対化できれば違和感もなくなりようがない。逆に言うと、そういった違和感を感じなくなるということは、最適化への批判的視点がなくなるということなのではないか。捨象される人々への視点がなくなるということではないか。その意味で、ホロコーストと同じ論理構造なのではないか、という気がする。特定の価値観の上にたった合理主義、という認識がなくなってしまう、と。

 それは結構怖いことで、いままでこのブログでも問題にしてきた「水伝」も、ある意味同じことだ。「水が綺麗な結晶を作ることは善、汚い結晶を作る/結晶を作らないことは悪」という特定の価値観に立脚した上での合理主義を極めれば「水伝」の世界になる。ここで注意しなければならないのは、仮に「『ありがとう』という言葉を見せると綺麗な結晶を作る」ということが科学的に正しいとしても(実際は正しくありませんよ)、「綺麗な結晶ができるかどうか」を判断基準にするということは、極めて合理的で善行のための最適化がなされているように見えても、所詮は「綺麗な結晶ができるものを善とする」という特定の価値観に立っているということを忘れてはならないということである(これはいままで何度も何度もあちこちで語られてきた「科学を道徳の根拠にしてはならない」ということと同じである)。
 もし土台の設定に価値判断が入っていることが忘れられると、たとえばSFじみた話をすれば、近未来社会では18歳になったら全員顔写真を水に見せてどんな結晶ができるかテストされ、結晶の美醜で将来が決定される…などという「合理的」で「最適化」された社会がやってこないとも限らない。

 たぶん、このことは、poohさんkatsuyaさん が述べられているような「呪術」「魔術」といったキーワードとも関係してくるのではないか、と思っているのだが、そこまで展開する能力が私にはないのが恨めしいところだ。

 だいぶ話が拡がってしまった。元に戻そう。
 「乗客に日本人はいませんでした」への違和感は、おそらく、「トリアージ」に対して「かわいそう」と思うこと、「水伝」において「水に判断してもらっていいのだろうか」と疑問を持つこと、と同じ構造を持つのではないか。
 だからなんだと言われると困ってしまうのだが、要は、そういう違和感を大切にしたい、ということだ。
あの偉い発明家も凶悪な犯罪者も
みんな昔子供だってね
外国で飛行機が墜ちました ニュースキャスターは嬉しそうに
「乗客に日本人はいませんでした」「いませんでした」「いませんでした」
僕は何を思えばいいんだろう
僕は何て言えばいいんだろう
こんな夜は逢いたくて逢いたくて逢いたくて
君に逢いたくて 君に逢いたくて
また明日を待ってる  (THE YELLOW MONKEY「JAM」より)
表面上の合理主義だけではなく、そういう感覚的な部分も重要なのだろう、と思う。もっとも、感覚的な部分を深めていけば、それはより大きな枠組みでの合理的判断にもつながるのだと思う。価値観の相対化と、相対化を経た上での価値基準の再設定というプロセスを通じて。


***

 まあなんかうまく言えないのだけど、ひとりごとというかつぶやきというか、ちょっと頭の中を整理してみたくなったのでした。結局はあちこちで言われていることを焼きなおしただけなんですけどね。

*1 聴いていたのは SEX MACHINGUNS の 「TEKKEN II」。どちらも切ない曲ですから。たぶん。
*2 「天の邪鬼な餓鬼」だと「鬼」が二つも入ってこわいですね~。どうでもいいが、天の邪鬼というと「奇面組」の天野邪子を思い出します。

お水様で金儲け

 前回まで『Hado』9月号の内容について色々紹介してきた。これだけ『Hado』を読んでいる人もそういないんじゃないかと思ったりするのだが、今回はさらに、『Hado』に書いてある商売についてご紹介したいと思う。

 まずは裏表紙である。ここでは「HADOカウンセラー資格認定講座」の案内が全面を使ってなされている。主催は(株)IHM、共催はNPO法人日本心理カウンセリング協会 、となっており、この2団体による合同認定講座である(丁度、aliceさん が関東地区女性校長会のエントリを見て、御自分でもいろいろ調べておられるのでそちらも参照してほしい)。
 「第3期生募集」、30名限定ということなので、おそらくすでに60名程度がHADOカウンセラーなるものとして各界で御活躍されているのだろう。さぞや厳しい特訓でもされているのだろうと思いきや、「3か月コース(6日間)」と書いてあって「へ?」と思ったら、月2回づつ、3か月受講するだけでOKのようである。
 講師はaliceさんがお書きになっているように、江本勝と「メキキの会」の出口光氏である。取得資格は「(株)IHM認定『HADOカウンセラー』」、NPO法人心理カウンセリング協会認定『心理カウンセラー(初級)』『四魂カウンセラー』」ということになっている。「心理カウンセラー」だなんて紛らわしいなあ。知らない人だったら、マトモなカウンセラーかと思っちゃいますよね。
 「主なカリキュラム」は「HADOカウンセリングとは」「基本的なカウンセリング技法の習得」「自分の波動を知り、相手の波動を感じる」「魂を見つめていく技法の習得(一霊四魂)」「結晶写真を使って意識の大切さを掴む」「HADO機器を使っての実践」「ケーススタディ」となっている。困った困った。
 で、凄いのが参加費である。なんと、350,000円!!3万5千円じゃありませんよ、35万円ですよ。ちなみに「国際波動友の会会員」は2万円オトク。国際波動友の会に入るには、『Hado』の年間購読を申し込めばOK。1冊680円のところが600円にもなるよ!(地元で売ってないので、半ば本気で年間購読しようかと考えているのですが、それはやりすぎだろうと内なる声が…)

 さて、次は、『Hado』に綴じ込まれている通販カタログの紹介。月刊『Hado Life』となってて、ページ番号も別立てになっている。
 冒頭を飾るのは「波動スピーカー」。円筒形の左右にスピーカーがついており、1台で「ステレオ以上の立体感やライブ感を創出」するそうだ。MP3プレーヤーなどに直結できるアンプ内蔵型が168,000円、アンプなしは大きいのが126,000円、小さいのは98,000円。小さいのは六本木のリッツカールトンの「スウィートルーム」に全室完備だそうだ。しかも特別仕様の革張り。スイートに泊まれば体験できるね!って「水伝」を批判してるような人でリッツカールトンのスイートに泊まろうなんて人はそうそういないような。私は当然無理ですが。(^^;;
 性能はもちろんどんなんだかわからないけど、もしちゃんとしたスピーカーなのであれば、わざわざ「波動」など謳わなくてもいいのになあ。

 機械系では、「高周波発信装置ゼッテン116-AS」もなかなか興味深い。116kHzまでの高周波を発生させ、リラックスするのだそうだ。イルカは高周波で鳴くが、人がイルカに癒されるのは、高周波を体で感じているからだと考えて開発したんだって!わたしゃテレビでイルカを見てても癒されますけど。
 有限会社ビュージックというところが開発したそうなのだけど、2001年にお月様からインスピレーションを受けて以来、メッセージが届くようになったんだって。2012年のアセンションは、「陣痛」のようなもん、なんだそうな。去年の12月にお月様に教えてもらったんだって。いいなあ。
 このマシンの「科学的」解説が載せられているのだけど(α波が増えてうんたらかんたら、的な)、書いているのは「元日本医科大学 河野貴美子」氏。どっかで聞いた名前だなあ、と思ったら、七田の顧問をやってた人じゃないの。以前は「元」が付いていなかったと思うのだが、いつのまにかやめたのかな。

 機械系と言えば、波動測定器は外せないだろう。
 お買い得なのが「携帯波動機器 HADO-i」だ。持ち運びできる高性能モバイル波動機器、届いたその日に波動転写水を飲むことができる。お値段たったの283,500円!!誰が買うんだ一体。
 そして真打は「HADOアストレア」。『Hado Life』には値段が書いてないのだけれど、江本のウェブページを見ればちゃんと書いてある。ノートPC付きで、1,995,000円!PCなしだと1,890,000円。以前は「HADO"R"」ってのが売ってたはずだけど、どうもウェブにも載ってないみたいなので、その後継機という位置づけなのかな。

 食品系・化粧品系は大量にあるので(ホメオパシー含む)、ちょっと紹介しきれないが、ひとつだけ。
 水、売ってます。「お水さんありがとう」。「希釈蒸留水」で2Lx6本が4,095円!「濃縮液」だと同じ値段で240ml。蒸留水の濃縮液ってまったく意味がわからんが、こういう「波動情報」が添加された蒸留水らしい。
蒸留水からつくられたIHM独自の技術で「幸せ」「安心」「愛・感謝」など、波動情報をプラス、細胞に愛と感謝が浸透し、心身ともに浄化される。また、太陽神経叢(第三チャクラ)のエネルギーを強化する作用もあり、第六感が刺激されて人が本来もっている自然治癒力を高める効果も。
だそうです。
 他にも240mlで7,350円の「ホロンウォーター81」(9,000種類の波動情報を転写、遺伝子に働きかけ、あなたの才能を活性化します!な水)とか色々取り揃えてます。遺伝子に働きかける水なんて怖くて飲む気起こらんけど。

 ああ、水と言えば浄水器もありますね。蛇口につけるタイプで19,740円「ミネルバJ」(高っ)、据え置きで5万円程度、元栓型だと20万弱。「バイタルイオン整水器 若さの泉」210,000円、なんつーのもある。「水素が豊富な水でパワフル還元。活性酸素を強力除去!中性だから、ビタミンCを壊さない!」ですってよ。

 「高くて手が出ないよ~」という人には、「愛・感謝シール」2枚組1,050円、なんてーのもありますぜ。「身近に結晶を!美しく輝く結晶がシールに。使い方はいろいろ!」だって。

 七田式の教材も売ってます。「超高速モーツァルトCD」「超高速オペラモーツァルト」「全身活性モーツァルト体操」「聖徳太子の耳 養成キット」なんか色々魅力的だなあ。モーツァルト体操ってちょっと見てみたいぞ。

 というわけで、江本の商売の一端を御紹介しました。「水伝」は金にも直結してるんですよね。どうせファンタジーでしょ、とみんなが思えばこんな商売は成り立たないわけで、逆に言えば、売れるっていうのは「事実」として信じる人々が大勢いるからですね。放置しておけば被害が拡がります。

***

後半、文章がちょっと短めで素っ気ないのは、昨日途中まで書いて、うっかり消してしまったからです(涙)。途中までは「下書き保存」で生き残ってたのだけど…。


『共鳴によってのみ生命の音は振動し続ける』その5 (『Hado』9月号)

 本題に入る前に、前回のエントリ(その4)で触れた「クリエイター」の意味するところに訂正が必要なのではないか、と思うに至ったので、その点について先に述べる。
 本文で唐突に「クリエイター」という言葉が出てくるのだが、他にも唐突に出てくる言葉が多すぎるので、さして気にも留めずに普通の意味でのクリエイターを解して考察をしてきた。ところが、『Hado』9月号と一緒に買った、『anemone』という雑誌の9月号(なんというか、ロハスでエコでナチュラルな人向けのスピリチュアルな女性向け雑誌、というか。新宿の紀伊国屋本店では、『Hado』のすぐ横に平積みにされている)の巻頭で江本勝のインタビューが載っていて、そこにも「クリエイター」という言葉が出てくるのである。該当部分を引用しよう。
 波動は根源的な問題です。我々はなぜ存在するのか。クリエイターなり神なりという存在を考えなければ始まりません。なんでこんな素晴らしいデザインを持った人間が誕生したのか。神の存在、サムシング・グレイトという存在を、私はまず肯定しました。肯定しないことには、絶対に次に行けないからです。(p.6)
つまり、江本が言う「クリエイター」とは、どうも「神」や「サムシング・グレイト」と同列のものらしいのだ。とすると、前回のエントリの「クリエイター」を例えば「サムシング・グレイト」と読み替えてみれば、サムシング・グレイトが「仲の良い音」だけで人間をはじめとするいろいろなものを作ってきたのだ、ということを江本は言いたかったのではないかと解釈できる。
 私としてはさらに「絶対に」行ってはいけないところに行ったのが江本だよ、とツッコミを入れたいところだが、それはここでは措いておこう。
 『anemone』も見かけとは裏腹になかなか強烈な雑誌なので、いつか紹介したいと思う(目次をちょっと紹介すると、「キテルキテル!!ふんどしの波(ウェーブ)」とか「大谷ゆみこさんの霊性を高めるスイーツ」とか、気になるでしょ?)。ちなみに10月号(9月9日発売)では、高樹沙耶のインタビューがある。私は買ってないけど。

 と、クリエイターについての話はここまでにして、次に行こう。

(8)水はエネルギーをもっている それは現代科学ではタブー
 この節、内容としては大したことないのだが、色々な意味で味わい深いので、全文引用する。
 科学者のジャック・ベンべネストさん(ママ)は、20年前に水が情報を持つということを科学雑誌『ネイチャー』に発表し、科学界を大騒動に巻き込みました。
 その結果、科学界から袋叩きにあい、追放され、3年前に寂しくお亡くなりになりました。
 私は2002年3月に、スイスのルチェルンで彼にお会いし「仇を取ってくれてありがとう」と言われ、握手をしたのです(拍手)。
 しかし、今だに(ママ)、科学界は水が情報を持つことを認めていません。
 何故でしょう。それは情報を持つということは、エネルギーを持つということになり、石油社会にとって非常に困るわけです。
わー、陰謀論!
 仮に水が「情報」を持ち、それが「エネルギー」であるとしよう。で、それをどうやって取り出し、電気にしたり熱にしたりするわけ?いま具体的に可能でなくてもいい、それができるという示唆があるわけ?ないですよね。とにかく自分たちが攻撃されるのは石油業界のせいだ、と敵を作って自分たちの正当性を主張したい、と。
 そう来るとユダヤだフリーメーソンだロスチャイルドだロックフェラーだと妄想の世界へあと一歩なのですが、以前このエントリ で紹介したように、太田竜と対談なんかしちゃってるところからして、すでに踏み込んでいるのかもしれん。

(9)新たな科学の幕開け 多次元世界が立証される?
 いよいよ最後の節である。
 「藤原ダムでお坊さんが1時間祈ったときの水の結晶」が紹介される。「そのときの湖面は、視覚的にも綺麗になりました」そうだが、どうだったのだろうか、実際は。
 「祈りの前の結晶は、苦しみで歪んだ女性の顔が見えます」という写真も紹介されているのだが、これ、心霊写真以上のものではないですよ。祈りの後では綺麗な結晶ができた、と言うのだが…。
 そして、物理屋にとっては大笑いするしかできない文章が続く。
 お坊さんの祈りは素粒子にまで届きました。素粒子レベルは、物質に関係ありません。その結晶を撮ったカメラマンも純粋な人でしたので、共鳴が起きた……。そして、山彦のように情報が現実の世界に帰って来たところで、シャッターを押したことになります。
 私たちは、素粒子レベルの写真を撮ったのです。素粒子レベルは、3次元と5次元の中間にあるのではないかと思います。
 最近、それを発見した理論物理学者リサ・ランドールという女性がいます。数式でこのことを発表し、現在、スイスで大がかりな実験をしています。
これ、物理をそれなりに本格的に学んだことのある人以外には、「変そうだということはわかるけど…」という感じかもしれない。でも、トコトンおかしいのだ。
 「素粒子レベルは、物質に関係ありません」て、素粒子は物質やがな!「素粒子レベルの写真」てこれも意味がよくわからん。光子も素粒子だから、その意味では素粒子レベルの写真ではあるけれど、そんなの誰でも普通に撮れるしねえ。
 そして、「3次元と5次元の中間」とのたまう。これは明らかにアセンションの影響ですね。3次元から5次元世界への次元上昇がある、というやつ。4次元世界はなにかというと、人によって色々違うようなのだが(霊界だったりとか)、それにしても「だと思います」て…。
 そして、リサ・ランドールが発見した、て、これランドールが聞いたら泣いて爆笑するんちゃうやろか。発見したんじゃなくて、もし世界が5次元時空で、しかし5次元目の方向には重力しか伝わらなくて、通常の物質は4次元時空(時間+3次元空間)にしか存在しないとすれば、一般相対論的にはどのような宇宙となるか、ってのを、幾つかのパターンについて研究したんですよね、私の理解によれば(彼女が書いた通俗書になんと書いてあるのかは知らないけど、実際にやってるのはこんな感じだったはず)。超ひも理論で10次元とか11次元とか言うてますが、一般相対論でそこまでイキナリそこまで扱うのは現状では難しいので、少しづつ次元を拡張し、次元を増やすことによってどういう現象が起こり得るかを調べている段階、のはず(もう少し意味を付与している研究者もいるだろうけど)。ただ、彼女らが考察したモデルが、結構うまいこと現実の宇宙っぽい振る舞いをしてくれたので、みんなが注目したんですよね。

 最後にまた水の結晶の写真の紹介。東京の水道水はダメだが、「リコネクション」のエリック・パールが江本のオフィスでエネルギーを送ったら綺麗になった、とか、「江本勝ウォーター・MASARU EMOTO WATER」の結晶の写真とか。「気になる水をこの結晶の上に置いてみてください」って、意味がわからん。
 で、「江本勝ウォーター」ってなんだ?このサイト(Hadolife) でも扱ってない。高額な水(「お水さんありがとう」とか)や浄水器(何十万円もする)は売ってるのに。写真のキャプションには、「水道水に『MASARU EMOTO WATER』を見せた結晶」と書いてあるのだが、そういう文字を見せたのか、それともそういう水を見せたのか、どうなんだろう。

 最後はスタンディングオベーションで拍手が鳴りやまなかった、というが、なんだかなあ。

***

 というわけで、この記事はおしまい。こんな記事、要約不可能ですよね。あえてまとめるとすれば、トンチンカンなトンデモ記事、ということにしかなりようがないけど。

 『Hado』9月号には、もう一つ困った文章が載っているので、次回か次々回か、それを紹介したいと思います。