逆に、大きな暴力なのにやはり本質をついていないと感じる事例もあります。
北朝鮮がミサイルを発射しました。ロシア領海内に着弾したそうです。普通は最も抗議し、場合によっては戦争に突入するほどの怒りを覚える国は・・・ロシアのはずです。そのロシアが国連安保理の非難決議案に最後まで反対しました。明らかに、北の事前通告を了解していたのです。こんなことは当たり前。なのに、事前通告がなかったとか、地元住民が怒っているとか。マスコミの観点ずれまくりです。
中国も当然事前通告受けて、納得済み。そう見るのが普通です。北の暴走で、中国の立場が無くなった?あり得ません。本当に中国が反対して、それでも中国の面目丸つぶれにしてでも北が強行する?普通に考えればそれは無い。北は常識が通用しない?とんでもない。彼らは極めて打算的且つ合理的です。本当に周囲の国から見捨てられたわがままな国は、例えば数年前のアフリカ・ウガンダのように、あっという間に政府転覆です。ロシアも中国も、北が韓国と一体化して民主国家になってしまうより現在のジョーカー的存在の方が都合がよいのです。そこにうまく乗っかっているのが北。ただそれだけです。
北にとって一番気になる存在は、アメリカです。そのアメリカにとって一番大切なのは自国の防衛です。テポドンはアラスカまで射程内ということで多少は気にし始めましたが、まだアラスカのそれも一部だけが射程圏。本当の危機感には至っていません。同盟国の韓国や日本の安全は更にその次です。
そうすると今回のテポドン発射で、最も怒り反発しても世界中から納得される国は・・・、日本以外にはありません。韓国は同一民族国家で、基本的に融和政策だからです。元より、韓国が攻撃の対象なら長距離弾道ミサイルは余り必要ありません。
ところが。日本の意見が世界で意外と通らない。なぜか?日本の危機が他の国から見て、あまり連鎖しないからです。資源はもともと無いから頼られていない。工業製品は輸入されているが、他国製品でも代替は利く。技術力に一部弊害が出るかもしれないが、これも中長期的に見れば何とか代用が利く。イランやイラクの問題が世界中に大きな影響力を与えるのは、石油があるからです。極東に何か有事が起きても、実際に他の国が受けるダメージは以外に少ないんです。
そんな状態の中で、日本はどう対処すべきなのか?この問題の本質は実はそこにあります。日本は世界を上手く巻き込めていない。アメリカだけは世界の警察を自負していますし、日本への対応次第で他の同盟国が自国に対しどうするかじっと注視されていますから、まあ有事があった場合には動いてくれるでしょう。
でもその他の国は?アメリカが働きかければアメリカに義理立てして一応は動いてくれるでしょう。でも日本のためじゃない。日本がのど元に刃を突きつけられているのに、本気でそれを心配してくれる国が他に無い。これこそが北の強みなのです。そこを冷静に計算した北は、「日本ほどの経済大国でもミサイルひとつで右往左往させられること」を他の潜在戦備増強国にPRしています。これで北朝鮮製ミサイルを売りやすくしているわけです。「貧乏な国でも裕福な国を脅すのにかなり効果的だぞ」と訴求している訳です。
北は、あれだけあきれた国政を行って世界中から孤児扱いされていますが、実際には中国・ロシアが何かとカバーしてくれる。同民族国家の韓国も融和策だ。日本は靖国問題等で韓国・中国とも関係が良くない。他にも日本を尊敬し、何かあれば我がことのようにカバーしようと言う国は皆無。アメリカは日本以外にも沢山の同盟国があり、更に何をおいても最後には自国優先。(まあ当たり前ですが。)孤児である北に対し、実は日本も結構寂しい。それが北を助長させています。太平洋戦争時の補償の話しでも出せば、世界中は日本と北はどっこいどっこい位に見る。北の行動や言い分が盗人の論理なのは明白なのに、それでも日本は圧倒的な優位に立てない。・・・そこをうまく突いて、自国ミサイルの販促PRに利用している訳です。
なのに、マスコミは「国連の枠の中で解決を目指すべきだ」とか「ミサイル迎撃力アップのための防衛費増強」だとか両極端な反応を示し(これを右往左往と言います)、挙句に「非難決議案を何とか採択できたから、世界中の国が日本の立場に同意してくれた」などと言い始めました。
違う、違う。対処療法は問題の本質を突いていない。世界における現在の日本の立場の脆弱性からの脱却。これがこの問題への本質的対応です。
しかし、ここで「暴力には暴力で対抗」とすると間違い。世界の尊敬は得られません。国力とは、イコール戦力ではない。「他国から尊敬される度合い」なんです。ピッチ上での暴言に対し、頭突き行為に及んだスター・ジダンが尊敬に値しないのと同様に、経済大国である日本の安易な暴力への依存は逆効果。ここがポイントです。日本はこれを機に、世界を巻き込んだ「喧嘩上手」にならないといけません。
インド建国の父、ガンジーは「非暴力」で世界中の尊敬を集めました。暴力は否定しましたが、明らかな「喧嘩上手」だったんです。喧嘩に勝つ方法は実は腕力とは全く別物なんです。もちろん、その背景に「力」は必要です。ガンジーは民衆の「数」の力を使いました。ハンガーストライキやデモ行進の力も使いました。あくまで「戦った」のです。圧力を受けて「戦わない」のでは、誰からも賛同を受けません。
だから日本は毅然と戦わねばなりません。今回の北のミサイル発射は、実は拉致問題も含め手詰まり感のあった日本の対北戦略を大きく前進させられる重要なターニングポイント。そんな出来事なんです。それを「防衛問題」や「安全保障問題」といった軍事的課題のみに矮小化しては、北の思う壺です。ここを間違ってはいけません。
ガンジーは、抵抗運動にたまりかねて行ったイギリスの実際の暴力による干渉を、かえって自分達の優位性確立に利用しました。
今なら、北の暴挙を肯定する国はありません。この暴挙を上手く逆手にとり、日本は世界の賛同を得る「力」を行使しなければなりません。
世界は決してお人好し国家を尊敬はしない。誰もが認める場面で誰もが納得する「力」を行使することこそが、最大の尊敬を集め、引いては国力増強につながる。この大きな暴力に対する、課題解決の本質は正にここにあります。
日本のミサイル迎撃に匹敵する効果的な武器は何か?経済制裁以外にありません。国全体への経済制裁は、かの国の何の罪も無い一般市民を更に貧窮に追い込むだけ?それも本質をついていません。経済制裁しないで、金正日政権を生き永らえさせても貧困は改善しない。確かに経済制裁をすれば今以上に国全体が貧窮するでしょう。でもそれは、日本が行える唯一最大の武器なのです。それを行使しないで、ただ世界の憐れみを請おうとしても、ムリ。世界は日本を尊敬していない。経済制裁しなくても尊敬しない。それよりも世界中が納得するこのタイミングで、毅然とした対応(すなわち経済制裁発動)をとるほうが、まだ尊敬に値する。国連の支持も重要ですが、まずは日本だけでもすばやく動く。どんどん力を行使する。
その上で、日本だけでは効を奏さないと言われている経済制裁の効果アップ策に動きます。そこが力の行使の持つ本質です。北に対する経済制裁に反する行為を行った第三国にも経済制裁を実行する。それしか武器はないんですから。確かに日本の経済にも悪い影響が出るでしょう。でもそれでも行う。その毅然とした対応と、同時にその正当性の理解を深めるための拉致問題のアピール。これに勝る武器はありません。だから戦っているんだと。協力してくれと。こうして少しでも多くの国から「尊敬」と「納得」を得ること。
喧嘩はやるからには勝たねばなりません。北の逆切れによるミサイル打ち込みの可能性?それを恐れず行うから、他国の尊敬が得られるのです。もし北がそれを実行したら・・・。間違いなく北はその瞬間に負ける訳です。それを踏まえて勝ちに行く。これが今回のミサイル問題への本質的対策です。