第23回「中小企業こそリソース・マネジメントを!;その4」
次に着手したのは、営業活動における「ヒト・リソース」へのマネジメント強化対応です。ここでも、業務分析(簡易型ABC)を行ってそれぞれにかかる時間を調べました。すると、直接顧客と接する時間が以外と少ないことが判明。それ以外の多くの時間は「移動」や「事務処理作業」「会議」等に費やされています。確かに、ひとつひとつの活動にはそれぞれ意味があるのでしょう。決してサボっている訳ではない。しかし、倉庫内作業をアウトソーシングしてまで最も重視した「営業活動」は、吟味してみると「直接営業活動」に人的資源が思ったほどかけられていない。そんな現状が見えてきたのです。
そこで営業の各アクティビティを、直接営業活動のような「付加価値業務」と、移動時間のような「非付加価値業務」とに分けて業務毎の重みづけを実施してみました。更に、その活動を行っている人の人件費を活動時間に応じて割り振り、業務毎の生産性を分析しました。すると、面白いことに「人件費の高い人ほど非付加価値業務への従事が長時間を占めている」ことが分かりました。ここまで見えてくれば打つべき手はひとつ。「人件費の高い上位層の活動を直接営業活動等の付加価値業務へシフトし、非付加価値活動については下位者もしくは派遣等の外注に任せる」という仕組みへの転換です。「ヒト・リソース」は通常「活動の『量』」が主たる投下基軸ですが、実は無形資産のひとつ「知的資産(知産)リソース」を保有する対象でもあるため、その有効活用をおこなうためには「活動の『質』」の視点に立った投下も必要です。知産リソース保有者は優秀ですから、組織上上位者となっている可能性も高いのですが、その上位者の活動時間が必ずしも適切な対象業務に振り向けられていないのが、企業の大きな課題の一つ。知産リソース保有者を最も有効な業務に充て込んで行くこと、これがヒト・リソースのマネジメントの重要な部分です。
リソース・マネジメント上、「カネ」リソースのマネジメント(キャッシュ・マネジメント)も重要なんですが、中小企業経営の現場で最も目を振り向けて欲しい対象は、カネそのものではなく、カネとは違う形で目の前に存在しているリソースです。「モノ」「ヒト」「情報」「ノウハウ」・・・。おカネは数値ですぐ計れますし、実物として非常に分かりやすいのですが、それがそのままの形で経営に役立ちはしません。真に経営に役立つ「リソース」は、カネが変化して曖昧で捉えにくいモノになっています。感覚で分かっていても、それをマネジメントするにはもう少し「実態」としてつかむ必要があります。それが「資産活用度の計測」「業務の可視化」であり、それらを最大限に生かす「付加価値創造のストーリーづくり」なのです。中小企業はリソースが足りない、あなたはそう決めつけていませんか?業務の見える化を行い、その見えてきた業務の品定めが出来れば、意外や意外、中小企業には「リソース」がまだまだたくさんあることに気づかれるはずです。その潜在価値を、生かすも殺すも経営者次第。不況の今こそ、経営者の力の差が出るときです。