第13回「社内SEの功罪」
IT経営(情報技術の適正な利活用で、ビジネスを効率化し高い付加価値を創造する経営手法)を推進する企業は、年々増えています。その情報システムの開発方法については、社外のシステムベンダに委託する場合と社内の情報システム部で開発する場合の、2つに大別されます。どちらにもメリット・デメリットがあり一概に良し悪しは判断できませんが・・・。
A社は大正年間創業の老舗卸。この会社の情報システムは、十数年前から一貫して社内SEが作製・構築してきました。この社内SEは情報システム関連会社からの転職組で、現在50代半ば。30代の時に縁あってこの会社に入ってから以降、ずっと現在の社内システムを組んできました。社内のある取締役は、彼を「こちらが依頼すると、何でもすぐに作ってくれる」と大変評価しています。別のある部長は「彼は全く部下を育てず、社内システムをブラックボックス化している」と批判しています。どちらも事実なのですが、問題は、この会社のシステムが我々の見る限り「単に手作業業務をコンピュータに置き換えただけ」にしか見えないこと。「何でも作ってくれる」というのは頼む側からすると大変ありがたい訳ですが、その内容が全て「部分最適」な場合には、出来上がったシステムは個々バラバラになりがち。開発を重ねれば重ねるほど、逆にどんどん「全体最適」からは遠ざかっていくことになります。将来性に危惧を抱いた現在の経営陣は、2年前に新たな若手のSE候補を採用しました。しかし、この優秀な新人さんも悩んでいます。曰く「(50代SEに)現システムの内容を質問しても、何も明確な答えを返してくれない」とか。50代SEに悪意は無いのかも知れませんが、要するに自分でも良く分からない複雑なシステムになってしまっているのでしょう。
一方のB社。某地方でサービス業を営む新興企業。若い創業社長が、積極的に事業を進める傍ら、情報化にも熱心に取り組んでいます。あるサブシステムの開発を手掛けた縁で、外部ベンダの「営業職」(SEやプログラマではなく、営業の人、です)をスカウトし、自社SEに据えました。当然、バリバリのSEではありませんから「つくる」のは勉強しながら。しかし、この会社の社長は言います。「彼はビジネスの本質が判る人間だったから、走りながらでもモノになる」。こうして、社長と青葉マーク入りSEの二人三脚がスタート。完全なものは最初からあきらめる。常に進行形で「あすなろ」の精神発揮。走りながら徐々に完全に近づけていくという情報化を進めて行った結果、今では同業他社が絶賛するオリジナルシステムを構築。しかも、素晴らしいのはその「シンプルさ」。小難しいシステム理論を排し、出来るだけ本質を追究していった結果、こうなったのでしょう。
社内SEを重宝する企業からよく聞く言い分は、「(外部ベンダより)社内の人間の方が自社の業務をよく理解している」ということ。・・・現場重視は良く分かります。でも現場スタッフが業務の「本質」を見通している、というのは勘違いです。私の知る限り、社内SEは意外とシステム開発の「本質の部分」が分かっていない。「構想する・設計する」と言うのは「業務の本質を理解」していないと、出来ません。実際にプログラムを「つくる」作業とは、根本的に違う能力が必要なんです。