第5回「借金との付き合い方;その2」
借入が「悪」だなどと言う気は、毛頭ありません。資金調達無くして事業は成り立ちませんし、金融が経済活動の命脈だというのは明らかですから。言いたいのは「良い借入」と「良くない借入」があるということです。良くない借入のひとつが、前回申し上げた「賞与」のように、本来利益の再配分であるべき資金を先に借り入れてしまうこと。これ、順番が間違っています。こういう借入を行うところは、やむにやまれずという場合もありますが、大概「業績が良かったときの会社の基準にいつまでも合わせている」場合が多い。あるいは、変に社員に遠慮している。きつい言い方をすれば、会社としての「見栄」のためにどんどん自分自身の首を絞めてる。だいたいこんな企業に限って、利益は思うように上がらないものなので、返済は苦しくなる一方です。
次に良くないのが「税金支払いのための借金」。一番多いのが、消費税支払いのための借金です。決算・申告期まで「預かっている」だけのはずの「仮受消費税」が資金繰りの中に埋もれ、いざ払う段になるとまとまった金が無くなってる。で、仕方なく借入を起こすわけです。「だって先生、お金に色が付いてないんですから。目の前にあるキャッシュは普通つかっちゃいますよね~。」って、お金に色がついてないのは他の資金も同じことじゃない?仕入資金とか給与資金とかは絶対に確保するくせに、なぜか消費税には無頓着。だから制度的に「予定納税」なんかの措置も取られてるわけですが、それでも意識は薄い。恐らく決算期に仮受と仮払いが相殺されることを勘違いしてるんじゃないか、と思う訳です。「赤字だったら消費税は戻ってくるんじゃないです?」とか聞く経営者もいます。う~ん、大きな不動産投資もしてないのに仮払いの方が多くて消費税が戻ってくるようだと、そりゃ事業そのものが危ない。特に仕入控除の対象外である「人件費」の比率が高いサービス業などでは、まず間違いなく「消費税は預かり超過」になりますから。後であわてないよう、しっかり自分で色を付けて管理してください。そうしないと、返すあての無い借金に足を踏み入れることにつながります。
一番厄介なのは、本来赤字なのに金融機関や取引先向けに粉飾決算し、法人税や所得税(個人事業)を支払う際にキャッシュがなくって借入に頼る場合です。気持ちは分からないでもない。金融機関も杓子定規ですから、ねえ~。赤字じゃ貸せないって言いますもんね~。でも度合ってもんがある。私の知っている事例では、前年まで10年連続高額納税者として名をはせたある個人事業主が、ある日突然多額の借金を理由に破たんしました。悲しかったのは、破たん時の借金総額と10年間の納税額がほぼ同額だったこと。一体なぜそこまでして税金を払い続けたのか?何を守り何を優先した結果なのか?本人が雲隠れしてしまったので真相は謎のままですが、確かに残ったのは「税務署の表彰状」だけ、というお話でした・・・。