第11回「隠さないことの重要性」
前回、「仲間づくりに長けた企業が伸びる。そのヒントは“自らの情報を隠さない姿勢”にある。」と書きました。なぜ、「隠さない企業」は仲間を創ることができるのか?それは「情報の非対称性」という、経済学でよく取り上げられる「壁」を打ち破ることにつながるからです。
「情報の非対称性」とは、取引や交換の場における参加者の間で、それぞれが保有する情報量に差が存在することにより、取引や交換の実行・効果に歪みが生じる状況を言います。例えば「中古車販売」では、売り手はその中古車の実情をよく知っていますが、買い手は外見でしか判断できない、即ち売り手と買い手の間に情報の格差がある状況です。情報優位の売り手が、その情報格差を使って自分に有利な契約(実情より高価格での販売契約)を結んだとします。この場合、一見売り手が得をしたように見えますが、長い目で見ると買い手は「中古車は購入価格に比べて品質が悪い」という経験値を積むことになり、やがて中古車の値段に対し不信感を抱くようになります。そうすると売り手の言い値では買い手がつかなくなり、結局売り手は言い値どころか適正価格をも下回る値段でしか売ることが出来なくなります。このように情報の非対称性は、市場の失敗要因となる事象です。いまや「情報」は、経営資源の中核に位置付けられるくらい重要な要素です。しかし、この資源は、他の資源と違い「保有することそのものより、むしろシェアすることでその価値が高まるもの」なのです。
前回ご紹介したB社の社長は、情報を隠さないことで、仲間(候補)との間の「情報の非対称性」を自ら打ち破って見せているのです。ここには当然リスクも存在します。相手は一種のライバル。自らは情報をさらけ出したものの、相手は情報を出さない、という可能性も大。さらけ出した自社の情報を、悪用する可能性だってあります。でも、B社長はそのデメリットを補って余りあるメリットを信じ、追求しているのです。
B社の隠さない姿勢は、金融機関との間でもメリットとして遺憾なく発揮されています。この会社は、毎年新たな期に入るとき「経営方針発表会」と言うものを開催し、必ずその場へ取引金融機関も招きます。発表会時に配布される経営方針書には過去・現在・未来の数値データが入っており、企業情報はほぼフルオープン。取引金融機関に、企業情報は筒抜けです。業績が良い時は問題無いかも知れませんが、落ち込んだ期などは正直難しいことになりかねません。しかし、B社長のぶれない姿勢を知っている取引金融機関は、たとえ業績が落ち込んでも友好的姿勢を変えません。金融機関が最も嫌がるのは、情報の非対称性。融資先の業績悪化はもちろん好ましいものではないでしょうが、むしろそんな時こそ金融機関の存在価値は高まる訳です。その時の対応は、与えられた情報が「正しいかどうか」にかかっています。正しい情報を与えられているという安心感が、次の協力体制を生むのです。
金融機関と上手く付き合えていないという企業は、一度自社の「隠さない度合」を見直した方が良いですよ。えっ?以前、正直に全てを出したら融資を全額引き揚げられたことがある?う~ん、長い目で見ればそんな金融機関はやがて潰れる運命にあるはずなんですが・・・。金融機関と中小企業との間の情報の非対称性問題は、実は長い・重い歴史が続いているのです。でも解決の糸口は、やはりB社長の「まず自らがさらけ出す」姿勢しか無いんじゃないでしょうか?