第16回「中小企業の人事」
中小企業は規模が小さいために、人事異動というものがあまりありません。しかし人事が停滞すると、組織としてのダイナミズムが失われ、歪みは大きくなります。マンネリ化、セクショナリズム、視点の狭小化などなど・・・。
A社は、80名規模の物流企業。拠点は本社と営業所の計2か所ありますが、営業所と本社間では過去、人事交流はないそうです。本社内でも、ほとんど人事異動がありません。入社時にある部署に配置された人は、基本的にいつまでたっても同じ部署。当然のように、セクショナリズムが蔓延しています。なぜ、そんなに人事異動が無いのか、経営陣に聞いてみました。すると、驚くべき答えが。「過去に経営判断で人を異動させたら、異動先の部署の上長が気に入らないと、優秀な異動人材がふてくされて辞めた」とか。えっ?何?それだけ?他には?「自分の部署の業績に最も貢献している部下を無理やり異動させた、と言う理由でその上長が暴れた」。・・・、「一度ダイナミックな人事異動を行おうとしたところ、外部のライバル他社に情報が漏れて、優秀な人材を数人まとめて引き抜かれた」。・・・。正直あきれましたが、この企業の人事異動不信は根強いようで・・・。
一方のB社。パートを含め、100名近い従業員を抱えるサービス業者です。拠点は現在7つ。近接した市域内とは言え、全店舗回ると車でも丸1日かかるような距離関係。店舗展開を始めてから以降、その店舗間での人事異動を積極的に行っています。その人事異動が、この企業のダイナミズムを生んでいます。抜擢あり、失敗者への復活制度あり、疲れた人の一時休止あり、などなど。本人の気に沿わない人事もあるでしょう。やってみたら「違った」ということは、経営サイドにもあるでしょう。それでも、この「フレキシブルさ」が救いとなって、皆どんどん成長しています。この企業の中心は、若い女性スタッフ。もともと自宅通勤の人が多かったのですが、本人の理解を得て、異動に伴う一人暮らしも推進。(もちろん、会社側が家賃補助します。)一人暮らしと異動に伴う環境変化が、相乗効果を生むのでしょうか?わずかの間のその成長ぶりには、本当に驚かされます。可愛い子には旅をさせよ、とはよく言ったものです。この企業、一部のベテラン社員にその変化ぶりについていけず落ち込む人も出ます。企業にとっての家賃補助は、財務的負担も大きい。でも、組織の活性化に人事異動は欠かせない、と割り切っています。
ところで、冒頭のA社。今、この企業では、部署を跨いだあるプロジェクトを立ち上げ、このプロジェクトを通じた人事の交流を始めています。最初に催した飲み会では「違う部署の人間と一緒に飲むのは入社以来初めてだ」などという声があちらこちらから出て、そのギクシャクさは想像以上でしたが・・・。中小企業の強みのひとつは、何といっても人間関係の深さ。少々の軋轢を恐れて、その良さを消しちゃ~イケマセン。