ここがヘンだよ、日本の中小企業 | アツキココロ

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広島県在住の経営コンサルタント・児玉学の熱血ブログ。

15回「中小企業の事業承継」

中小企業の抱える大きな課題のひとつに「事業承継」問題があります。親族に後を継ぐ者が居なかったり、居ても過酷な経営を嫌って継ぎたがらなかったり・・・。中小企業だからと言って、経営者の後を継ぐ者は何も親族に限ったわけではありませんが、残念ながら社員にもなかなか任せるに値する人材が居なかったりで・・・。ここには大きなミスマッチが起きています。

A社は、ある地方の中堅卸会社。厳しい時代にも関わらず、創業者の先見の明によって、特定市場にしっかりとした地盤を築き利益を出し続けています。しかし、あまりに創業者が有能過ぎたのか、創業者の急逝後は・・・。まず創業者の未亡人が後を継ぎましたが、仕事をやったことが無かったためマネジメントが機能しません。そこで、未亡人は自分の身内を外部から呼んできて役員に押し込みました。が、これが残念ながら無能な人だったため、旧来からの役員が猛反発。しかし、大株主の未亡人は「血は水よりも濃し」と言い張って譲らない。どうしてもその身内をトップにしなければ、「会社を閉める」とまで言い出す始末。実際に100名近い従業員が路頭に迷う一歩寸前まで行きましたが、結局、大口債権者たる銀行筋からの圧力で未亡人も折れ、ようやく古手の幹部が社長を継ぐということで矛を収めました。しかし、無能な身内役員はそのまま残り、抗争のあおりを食った形の有能な幹部数名が辞め、組織の力は大きく衰えたのでした・・・。

 

一方、B社。同じ卸会社ではありますが、こちらはより小規模の企業で従業員は10名そこそこ。業界内の激変もあり業績は青息吐息ですが、大口顧客のおかげで何とか経営を継続中。ここも3代目社長が急逝。この会社には、社長の身内でない有能な専務が一人おりました。業務に素人で後を継ぐ気もない3代目の未亡人はその専務に後を継いでもらおうと考えましたが、なぜか彼はかたくなに拒否。よくよく聞いてみると「他の従業員が誰も自分の言うことを聞かない」とか。この専務、自分ひとりの仕事は良く出来ても、従業員の管理は全く出来ない人だった訳です。結局、専務と定年間近の常務の二人が何度も未亡人を訪ね説得を重ねた結果、まだ若年だった子息(4代目)が成長するまで、という条件付きで未亡人が社長を引き受けたのでした。しかし。その後素人未亡人が社内で動き出すと、あれほど社長就任を懇願した専務と常務が反発。社内は真っ二つに割れ、ただでさえ厳しかった業績は悪化の一途を辿っていきました。最後には、外部コンサルを入れて若年の子息を社長にすることにして、両者和解。ただ、若年の新社長がまた頑張りはじめると、何となく幹部との間に隙間風が再び・・・。

それに比べてC社。従業員10名程度の小規模建設会社。創業者がまだ元気なうちに、幹部2名を呼び宣言します。「俺は親族に後を継がせる気は無い。お前ら二人でこの会社を継げ。」当時社長70代前半。呼びつけられた幹部はひとりが40代前半。もうひとりはまだ30代半ばでした。「え~、無理っすよ。社長まだまだ元気じゃないっすか。」若い幹部二人は叫びますが、頑固が取り柄のこの創業社長、「いや、俺はもう辞める。あとはお前ら二人で続けるかどうか決めろ。」と結論を二人に投げつけてしまいました。困った二人の幹部は1ヶ月間悩み続け、従業員・信頼できる取引先等にも何度も相談した結果、二人で後を継ぐことを決意。結論を社長に告げたところ、ニッコリ笑った社長は一言「俺も最後にいい仕事をした」。今年、創業社長は亡くなりました。後を継いで10年になる二人の他人経営者は、立派に事業を継続しています。今、創業者の子息(ちゃんと居たんです)と株の相続等で話をしていますが、子息も「オヤジに『絶対にもめるな』と何度も言われてきましたから、どうぞ良いようにしてください。」と穏やかな委譲が無事完了しようとしています。この事業承継、正に「あっぱれ!」の一言、です。