いよいよ物産展の開催日が迫ってきました。
この物産展の主たる目的は3つ。
(1)この企業の知名度を上げること。
(2)商品の良さを知っていただき、クチコミを広げること。
(3)Web通販(無店舗直販)への足がかりを作ること。
ただモノを売るだけなら、わざわざ東京まで何人もの人を行かせ手間隙かけて手数料を払ってまで行う意味はありません。この有名百貨店本店で行う「県の物産展出店企業」というブランドを最大限に生かす。これが最大のポイントです。
ですから(1)(2)は当然のこと。この企業にとってもうひとつ重要だったのが(3)です。これは経営改革案で新たに出てきた戦略です。
生産の強化のみならず、小売までの一気通貫体制の確立。これがこの企業の経営革新最終ゴールです。そのためにクリアにしなければならない要素がこれまた3つ。
①ローカル性の打破(近隣だけ対象では市場として小さい)
②ノウハウ不足の補完(小売に慣れていない後発組のデメリットを払拭)
③生産・卸を手がける企業のメリット訴求(小売専業でないことの優位性追求)
その上で、更に経営革新に伴うキャッシュフローの悪化を考慮し、出来る限りの既存経営資源の有効活用(今いる人員、今ある設備で出来る限り対応)が求められました。
そこで導かれた解が「Webショップ」。実店舗よりバーチャル店舗が、これらの要素を全て満たすことが出来ます。もちろん、メリットばかりじゃない。バーチャルの良さを知っているライバルも皆Webに進出しています。ここでの競争は、「知っていただく」「実際に購入していただく」「リピーターになっていただく」と言う点で、地域の実店舗の比ではない位の厳しさがあります。
メリットとデメリットの比較です。それでもこの企業にはWebショップのメリットが勝る。そこで、物産展との相乗効果がより重要となる訳です。
物産展開催前に、もう一度私は社長と夫人に対しこの経営革新の枠組みを説明しました。その上で、特に戦略商品をひとつ挙げ、この販促を提案しました。それはその地域に昔から伝わる加工品で、地元の方にはよく知られた商品ですが、全国的には無名。しかし、美味しい。職人が手間隙かけた本物の商品。この「珍しさ」と「美味しさ」と「ホンモノさ」。これが突破口の商品になり得る鍵です。
これを物産展に向けて大量に製作するよう依頼しました。その数1000個。
この企業の歴史上かつてない飛びぬけた数量です。
早速社長は躊躇しました。「そんなに売れるわけが無い」。
期間中の集客数からすると、可能性はある。しかし、あまりに無名の商品だけにその良さを知っていただかないと、全く売れない可能性もある。パッと見の見た目も決して良くない。
でも。これがこの企業ならではの「尖がった商品」だったんです。東京の物産展で、ただ「美味しい食材」を売ったんでは、埋没する。この戦略商品で、強烈なイメージを残しブランド化する。そのためには期間中品切れなど絶対に起こして欲しくない。そんな思いから導き出した数量。
さらにもし物産展で売れ残っても、次の活用法がある。
私は社長に言いました。
「経営革新とは、確かな戦略に基づいてやるべきはやり抜く。やめるべきはすばやくやめ抜く。このメリハリが大事です。どちらも中途半端だと、革新は失敗に終わります。」
ああ。この時に。社長は何と言ったか?
「自信がない」。
・・・・・・。
半ばあきれて、あきらめかけたその時、横で聞いていた夫人が敢然と言い切りました。
「私が責任を持ってやります!!」
私はこのとき半分、成功を確信しました。
しかし。社長の迷走はまだまだ続くのでした。
(つづく)