もともと経営戦略として導き出された「自社生産の強化」はどこに行ったのでしょう?
社長に尋ねると、「なかなか難しい。思ったような製品が出来ない。」とのこと。そりゃそうです。生産を主にしてきた先行企業は、その苦しみを乗り越えて今があるわけで、新規参入組がそう簡単に成功するとは私も思っていません。
後発組が追いつくには、後発のメリットを生かさないと。すなわち、先行企業の「真似」から入ること。「真似る」は「学ぶ」の原点。先行企業に学び、先行企業の良さを真似ながら徐々にオリジナリティを追求すればいい。
交流を深めるべき存在として、私がよく中小企業にお伝えするのが「近くの異業種、遠くの同業種」です。近くの異業種交流はよくあるのですが、意外と少ないのが「遠くの同業種交流」。同業であっても、市場が直接重ならない遠隔の同業者は、お互いに情報交流をすることで相互にメリットが生じます。大企業と違って、中小企業はその機動性や人的交流を生かし仲間を増やして共に補完し合うことが大切な鍵になります。
「どこか先行企業で、お互いを高め合える相手がいませんか?」と私が聞くと、「あるにはあるが、その企業に教えていただくには少し時間がかかる。現在の自分(社長)の業務を放り投げてそれに時間をかけることができない」との事。
・・・・。
戦略と合わない小売店にはかける時間があって、戦略上最も重要な生産力強化に充てる時間が無いとは・・・。
体の良い逃げ口上ではないかと見た私は畳み掛けます。
「じゃあ、社長の今の業務を誰かに任せていけばいいんじゃないですか?組織の成長とはそういうもので、社長は新しい生産を学ぶ。そのために今の社長の業務を社員に教えて任せる。任された社員の従来の業務は又その下のスタッフに教え、任せていく。これでいいじゃないですか。」
それでも「お金を扱う業務(市場からの買い付け・競り)や現在の生産管理の仕事は、すぐに社員には任せられない」と否定姿勢です。
確かに「お金」が絡む業務は、間違いがないような仕組み作りが必須です。でもそれは、企業が大きくなる過程でいつかは通らねばならぬもの。それが今、というのならそうすれば良いだけです。現在の生産管理が社長個人の力量に過度に依存しているのも確かですが、それを脱却するのも大切な社長の仕事です。いや、いつまでも社長が現場の仕事にかかっていると、大事な判断業務がおろそかになります。(現実まさにそうなっている。)
出来ない理由を並べたてるのではなく、「どうやったら出来るか」を考えること。ここが経営改善の原点です。
しかし、社長は否定の姿勢を崩しません。
そして更に恐ろしいことを言い出しました。
「生産を強化してもそれがすぐに市場に評価される保証はないし、こちらが力を注いだところで、その卸価格が今以上に上がるかどうか分からない。卸先も景況が厳しいし、当方の目指すブランド価値をこんな田舎では評価してくれないだろう。」
戦略ですよ。戦略。生き残るための戦略。その戦略に対する自己否定。それが一体何を生み出すと言うのか?
「じゃあ社長はどうしたいんですか?」
私は怒りを押し殺し静かに尋ねました。
「それが分からないから貴方に頼んでるんじゃないですか。」
・・・・。
やりもしないうちから「出来ない理由」のオンパレード。
そのくせ戦略にそぐわない従来の切るべき事業には固執して、貴重な経営資源を浪費する、この感覚。
「分からない」?そうか、戦略の持つ重要性が分からないのか。
そう思い、もう一度簡単にこの戦略に至った経緯を思い出してもらいました。
でも。一通り確認した後に出てきた答えは「自信が無い」。
私はクライアントに「自信満々」であることを求めません。むしろ、謙虚であることは、経営者の重要な要素のひとつであると考えています。「自信」なんて、走りながらつければ良い。自信がないから「やらない」ではなく、自信がないからこそ「やるしかない」。
よし、ならば「やらざるを得ない体制づくり」をしよう。そう決意した私は、当初の「経営改善」ではなく「経営改革」「経営革新」に舵を切り始めました。
(つづく)