続・功夫電影専科 -114ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「真夜中のヘッドハンター・殺人の報酬」
原題:獵頭/再見江湖
英題:Head Hunter/The Killer in Love
製作:1982年

●さて、今回の『Martial Arts 50 Movie Pack』在庫一掃セール(笑)は、周潤發(チョウ・ユンファ)の主演作からだ。前回の『四大天王』と同様に日本でもリリースされているようだが、本作の話題はあまり聞いたことがない。製作年代を見ても『上海灘』や『男たちの挽歌』でブレイクする前の作品のようだし、私としても本作にはそんなに期待していなかったのだが…。
ストーリーははっきり言ってよくわからない。ベトナム帰還兵で今はヒットマンとして暗躍する周潤發が、TVリポーターの關之琳(ロザムンド・クァン)といい仲になっていくものの、そうは問屋が許さない…といった感じの話のようだが、いかんせん英語吹替え字幕無しのダブルパンチでは細部が解りかねる。国内版はビデオとDVDが発売されているので、その気になればちゃんと日本語字幕で内容を知る事が出来るかもしれないが、そこまでして確認したいような代物ではなかった。
本作で注目すべきは、やはりデビューしたての關之琳だろう。本作の關之琳はやり手のTVリポーターで、気丈だが可愛らしいキャラをはつらつと演じている。日本初お目見えとなる『七福星』に出演するのがこの3年後となるのだが、その後の『ワンチャイ』系列でも見られる可憐さが、既にこの頃から発揮されているのは興味深い。
この他に、いつもの如く刑事を演じる黄錦[火火火]木(メルビン・ウォン)や、逆に悪役として立ちはだかる陳欣健(フィリップ・チェン)など、キャスト面でもそこそこ見られる作品だが、先述の通りストーリーが解り辛いのと全体的に暗いせいで、かなり窮屈な印象を感じてしまった。特に気になったのがラストのオチで、周潤發は贖罪のつもりでああやったのかもしれないが、これじゃあ關之琳は前科者だ(悲恋にするにしても、死に際の陳欣健の不意打ちを食らった周潤發が…みたいな展開にすれば、關之琳の手を汚さずに済んだはず)。
ちなみに本作は動作片ということになっているので、個々のアクションは警匪片だった『四大天王』よりかはマシになっている。とはいえ、功夫のできる人間が誰一人いない作品なので、アクションスケールは(しょぼいけど)銃撃戦が散りばめられていた『四大天王』とどっこいどっこい。作り手はラブストーリーとクライムアクションを一緒に描きたかったのだろうが、結局は關之琳の初々しさ"だけ"が印象に残る事となった。
ところで本作、HKMDBによると製作が思遠影業となっているが、私が見た『Martial Arts 50 Movie Pack』版ではチャンピオン・インターナショナル・フィルムという会社の名義になっている。確かに思遠影業にしてみたら随分とショボい作品であるが、武術指導が王将(『酔拳』『蛇拳』などの思遠影業作品に多数参加している功夫スター)というところが思遠影業っぽい。一体どちらが本当なのだろうか?


「実録・香港マフィア戦争/四大天王」
「四大天王~実録・香港マフィア戦争~」
原題:四大天王
英題:Four Robbers
製作:1987年

●(※…画像は本作を収録したDVDパックのものです)
本作は『Martial Arts 50 Movie Pack』(久々!)に収録されている作品の中では比較的新しいものだが、本来ならここで紹介するはずの無い作品であった。
功夫片じゃなくて警匪片であるという点、出演者にあまり馴染みの顔がいない点などがスルーをした理由であり、レビューを書く予定すら無い作品だったのだ。そんな作品をどうしてわざわざ紹介するのかというと、実はこのたび『Martial Arts 50 Movie Pack』の完全制覇に向け、こういった作品も紹介していこうと思い立ったからなのである。とはいえ、流石に『ブラック・コブラ』のような完全に当ブログとは関係の無い作品はスルーしていくつもりなので、予めご了承をば…。
李榮山・劉俊輝・呉杭生・石漢の4人は強盗グループ。宝石店を襲撃したり悪党にケンカを売ったりと暴れまわるが、方野(ちょっと太り気味)や曹査理の組織と対立する事になる。そこに華倫と大細眼(本作では武術指導も担当)ら警察も絡み、裏の世界を突き進む4人だが…という、ありきたりな黒社会抗争モノの1本である。
本作で凄いのは主役の4人を筆頭に、誰一人として華のある役者がいないという点だ(事実上の主役となる李榮山でさえ、お世辞にも魅力的とは言えない)。
呉杭生や江島、谷峰(クー・フェン)などの知っている顔こそいるが、作品の照明となるべきスターの存在が欠落しており、とてもじゃないがこれは見ていてかなりキツいものがある。特にショックだったのが華倫で、千葉真一の『ゴルゴ13』で見せたニヒルさは何処へやら…なんと本作では完全に中年太りのオヤジと化しているのだ。彼の映画出演は本作が最後だったようだが、いくら末期だったとしてもコレはなぁ…。
物語は後半から舞台がタイへと移るが、その後も観光や裏切りなどのヒネリの無い物語が淡々と続いていく。その潤いと新鮮味のない描写は90年代のVシネマを思わせるが、正直言ってつまらないの一言に尽きる。ラストでは死闘の果てに救い様のない破滅エンドが待ち構えているが、悲壮感やカタルシスは皆無。ついでに後味の悪ささえも感じられなかった。
破滅への物語といえば張徹作品でも取り上げられているテーマだが、本作の場合はキャラクターの描写が曖昧だったりとスカスカで、アクションシーンも数が少ないうえに迫力の無い銃撃戦がメイン。功夫アクションを期待していると思いっきり肩透かしを食らう結果となるので、『Martial Arts 50 Movie Pack』を購入しようと思っている人は本作をスルーしても何ら心配はないかと思われます。
目くじらを立てるほど酷くはないが、別段良くもない並の作品。こんな地味な映画がどうして日本で発売されたのかが気になるところである(業者が騙されて二束三文で掴まされたのか?)。


「バレット・フィスト」
原題:KAMPFANSAGE - DER LETZTE SCHULER
製作:2005年

▼新たなるアクション超人、マティス・ラントヴェアーの主演作である。
実は私はマティスの主演作を見るのはこれが2度目で、もうひとつの主演作である『死亡特急』も既に視聴済み。『死亡特急』はアクション映画としてもかなりの完成度を誇っており、マティス自身のアクションシーンも迫力満点な傑作だ。しかしマーシャルアーツ映画として見ると、今ひとつ格闘アクションの数が少ない気がしないでもない。そんなわけで、今回レビューする彼の主演作はこちらにした次第である。

■199X年・世界は核の炎に包まれた…じゃなくて(爆)、2045年・世界は戦争によって荒廃していた。
近代兵器は廃れ、古流武術を身に付けた暴君と配下の軍団は一国を統治下に置いていた。暴君は武術家狩りを開始し、迫害された武術家たちは一冊の本に自分たちの奥義を書き記しては命を落としていった。この負の連鎖を断ち切ったのは、最後の1人となったある達人だった。暴君は死に、国は平和を取り戻す…筈だったのだが、暴君の息子とその姉が後を継ぎ、遂には最後の達人を死に至らしめて奥義書までもを奪い去ってしまったのだ。
最後の達人の弟子だったマティスも殺されそうになったのだが、運良くキャンピングカーに住んでいる女性に助けられ、一命を取り留めていた。傷の癒えたマティスはかつて達人と共に暮らしていた街に戻るが、そこは既に暴君の息子によって死の街となっていた。地下に潜っていた者たちと協力して奥義書を奪還し、反撃を続けるマティスたち。しかし仲間のリーダーが捕らえられ、暴君の息子が訓練した特殊部隊によって多くの仲間が傷つけられた。全ての落とし前を付けるべく、マティスは敵の根城へと単身踏み込んでいく…!

▲…という訳で長々と紹介してきたが、見ての通りこの作品は『北斗の拳』っぽい物語だ。
さしずめマティスはケンシロウで、暴君の息子はシンで、仲間のリーダーはレイで、ヒロインはユリアといったところだろうか(まぁ、ヒゲモジャなレイとか姉にヘコヘコしているシンとかは無理があるが・笑)。荒廃した世界観といい、敵の兵士が思いっきり頭が悪そうなところといい、拳が世界を支配する設定といい、ゲイリー・ダニエルズの『北斗の拳』よりも非常に「らしい」作品となっている。
実際、ストーリーの中身も定石通りの展開ばかりで、あまり目新しさは感じられない。だが本作に関して言えばストーリーなんて添え物でしかない。本作の見どころは、マティスたちの素晴らしい格闘アクションそのものにあるのだ。
オープニングのマティスによる見事な演舞シーンから始まって、街に着いた早々に敵の兵士との集団戦、地下でのリーダーとの棍術→拳でのバトルと、前半だけでもハイクオリティなバトルがこれでもかと炸裂!後半からは敵の特殊部隊との対決になるが、こちらでもマティスたちは大暴れを見せ、ラストのマティスVS暴君の息子の死闘も素晴らしい出来栄えだ。殺陣は手技も足技も満遍無く見せる『ダークブレイド』タイプのスタイルだが、完成度に関してはもちろんこちらの方が五倍ぐらい上である。
個人的に一番お気に入りなのが、前半のマティスVSリーダーとの対決だ。マーシャルアーツ映画ではウェポンバトル自体珍しい気もするが、まさかここまで激しい棍術バトルが見られるとは驚きだ。そして何よりも、香港系のスタッフが誰一人関わっていないマーシャルアーツ映画でも、ここまで良質のアクションが出来るようになったんだなぁ…と、少し感慨深いものを感じてしまいました。
全体的な出来は『死亡特急』の方が上だが、マティスの格闘シーンを見たい方は本作のほうがオススメ。ストーリーは弱いものの、全編に渡ってアクションのつるべ打ちなので、見て損は無いかと。


小飛侠
英題:Teenage Master/My Father Is a Hero 2
製作:1995年

▼釋小龍(シク・シウロン)と共に90年代を代表する好小子・謝苗(シェー・ミャオ)は、『D&D完全黙秘』と『新・少林寺伝説』の2本で李連杰と共演した事により、日本のファンにも広く名前を知られる事となった。
そんな彼が同時期に主演した作品がコレなのだが、スタッフや出演者に至るまで『D&D』まんまの陣容で占められている。武術指導に元徳が、メインキャストには『D&D』で干光榮の配下を演じていた慮恵光(ロー・ワイコン)と倪星(コリン・チョウ)がそのままスライド。プロデューサーに『D&D』にも関わった王晶(バリー・ウォン)が名を連ねているが、本作の製作は永盛ではなく王晶のプロダクションである。

■田舎で功夫道場を経営している慮恵光と謝苗の親子(!)は、精神病院に入院している師匠から「命を狙われている、助けてくれぃ」という旨の手紙を受け取り、一路都会へと向かった。
その際、慮恵光たちはヒットマンの倪星が人殺しをしている現場に遭遇。混乱の中で親子は離れ離れになってしまい、謝苗はひょんな事から呉孟達(ン・マンタ)の家族と、慮恵光は倪星と繋がりのあるチンピラ青年の元へとそれぞれ厄介になる。ここからギャグのパートを謝苗が、アクションのパートを慮恵光がそれぞれ担当していく事になるのだ。
謝苗は倪星から奪った財布で呉孟達を納得させ、彼の子供である鄭柏林といっしょに学校へ通う事に。教師顔負けの活躍をしたり不良グループと闘ったりと、学校ライフを満喫する謝苗。一方、慮恵光はチンピラ青年の起こしたいざこざで石灰を被り、一時的に盲目となってしまう。これら2つの流れは最終的に病院での乱戦で合流し、倪星の一味との決戦へ雪崩れ込むのだった…。

▲先述したとおり、本作は『D&D』と似通った人員が揃っている。本作が公開されたのは『D&D』が公開された直後であり、『D&D』の公開による相乗効果を狙っている事は火を見るよりも明らかだ。流石は王晶の制作した作品だけの事はある(笑
作品自体に関しては『D&D』のようなシリアスさは一切影を潜めており、ギャグ満載のキッズ向け動作片に仕上がっている。ストーリーは王晶らしくバラエティに富んだ内容で、物語としての完成度よりもその場の面白さを優先した作りだ。そのためショボいといえばショボいのだが、まぁ王晶の作品ですので…(爆
また、珍しく年相応の役柄を演じる謝苗の姿も微笑ましいし、当時の好小子系列を盛り立てていた呉孟達の活躍も見逃せない。そしてやっぱり本作で1番の注目点は、慮恵光と倪星の2人だろう。慮恵光は謝苗の父親としてほのぼのとした姿を見せ、倪星は『ターゲット・ブルー』を髣髴とさせるヒットマンを演じている。最後には再会した謝苗&慮恵光VS倪星の闘いとなるが、この顔合わせなので出来に関しては言わずもがな。尺こそ短いものの、結構なバトルを繰り広げていました。
ところで、作中に思いっきり『魔女の宅急便』等のBGMが使われているが…いいのか、コレ?(爆


「BACK FIRE/強制奪還」
製作:2006年

●やくざ者だった過去を持つ大和武士は、現在は車の修理工として息子と静かに暮らしていた。そんな彼の元に、堀田眞三の組に押し入って強盗未遂を働き、逃亡中の松田優と風間貢が現れる。大和がただ者でない事を知った2人は、彼の息子とたまたま立ち寄っていた夏目ナナを人質に取り、堀田の組から金を取って来いとの要求を突きつけた。
やむなく大和は組へ殴りこんで金を強奪するが、一方で松田たちを捜索していた組員が彼らを襲撃。大和は居場所を移動した松田の指示に従うが、どのみちこのままでは終われない。一計を案じた大和・金を待つ松田たち・そして組や警察を巻き込んだ事件は、意外なクライマックスを迎えつつあった…。

 珍しく最近のVシネを取り上げますが、色々とツッコミどころの多い作品となっています。ストーリーはVシネ系アクション作品でよくあるパターンですが、その内容はかなりスカスカ。画面はチープで演出も間延びしているため、まったくと言っていいほど緊張感がありません。尺は69分と短いものの、ダラダラした物語のせいでそれ以上に感じてしまいました。
クライマックスになっても盛り上がらず、最大の敵であるはずの松田優が簡単に撃ち殺されるなど、未整理な部分ばかりが目に付きます。ラストでは銃撃戦が発生しますが、本来なら全ての勢力が一堂に会して大混戦にしたほうが面白そうなのに、本作では何故か個々の決着をバラバラに描いてしまっています(主役不在のまま別勢力が潰しあったり等々)。この崩壊っぷりは話のオチまで続くんですが、もう少しどうにかならなかったのかなぁ…。
 そんな四面楚歌な本作で、一番の見どころは松田優のアクションにあります。松田は作中で最も良い動きを見せており、冒頭で組員数人を蹴散らすシーンなど迫力のファイトを展開!この松田と大和という大柄な2人が対決するラストバトルも、時間こそ短いものの完成度においては及第点以上のものを見せていました。
暴力的な描写・視聴者おいてけぼりのPV風な演出などが影響し、人に勧められるような作品ではない本作。大和VS松田の一戦にどれだけ価値を見いだせるかで、この作品の真価は問われるものと思われます。