3月最後の日曜日…
家族と駅で別れ、半蔵門線に乗り三井記念美術館へ向かう。
三井タワーから入り三井本館の専用エレベーターで7階へ。(写真はタワー1階の正面入り口)
本日の鑑賞は「三井家のおひなさま」
特別展示「きもの―明治のシック・大正のロマン・昭和のモダン」
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition_01.html
展示室1,2,3は併設展示の当館蔵茶道具「春の取り合わせ」
<印象に残る作品>
★金襴手鳳凰文宝珠香合 永楽保全作 江戸時代・19世紀
形はちょうど玉葱のように上部が細くなっていて、卵ほどのおおきさ。これを宝珠形という。
かつての京焼きにはなかった金襴手写し、祥瑞写しを生み出すことになる。
★阿蘭陀向付 17世紀(室町家旧蔵)
17世紀オランダ東インド会社との交易で入ってきたと思われる。
直径8センチほどのコーヒーカップを想像してみて…
やわらかな白釉(ゆ)、東洋には見られない華やかな花鳥が藍色で描かれている。
5客揃い、箱書きには「猪口」。
展示室4,5 三井家のおひなさま
総領家 北家、北三井家十代夫人、十一代夫人とその娘(浅野久子)の豪華なひな段飾りが展示されている。
夥しい数なので、ここでは私の独自の抜粋でさらりと紹介だけにとどめたい。
<三井苞子(十代・高棟夫人) 旧蔵品>
男女和合、男性は松の模様、女性は藤の模様、子どもを意味する撫子がそれぞれの袖、裾に描かれている。
★有職雛 江戸時代・19世紀
公家の装束を有職故実(ゆうそくこじつ)に基づいて正確に考証して作られたひな人形。
男性は狩衣姿。 ※有職故実…朝廷や武家の故実・礼式を研究する学問のこと。
★享保雛 江戸時代・19世紀
享保年間に流行したひな人形。面長で能面のような顔立ちである。
町人階級に好まれ明治まで作られた。金襴・錦など上質の織物を装束としている。
裾が左右に跳ね上がっているのが特徴。
江戸時代から続く京都の人形師、丸平こと大木平蔵の作。
江戸生まれの古今びなの影響を受けている。眼には玉がつかわれている。
★内裏雛(先妻 貴登の所蔵品) 明治17年(1884)
江戸時代から第二次世界大戦前ごろまで、結婚した新婦のためにひな人形を誂える習慣があった。
そして、うまれた娘の初節句を祝って新調するひな人形へと変遷していく。
ひな道具(貝桶、箪笥、長持など)とともに各種人形(官女、五人囃子、随身など)も数多く展示されており、浅野久子旧蔵のひな段飾りは当時の色彩を僅かに残して、絢爛豪華さにため息がでてしまう。
その中で、ちょっと面白いと感じた人形がある。
★御所人形 安政5年
まるまると健康的な幼児の人形。参勤交代の大名たちが国へ帰るときのおみやげとして求めたという。
胡粉が使われている。 ※胡粉…貝殻を粉にして作る白色顔料のこと。
展示室7 特別展示 きもの―明治・大正・昭和
簡単にそれぞれの時代の特徴と特に印象に残る(私好み)の着物について記録したいと思う。
<明治のシック>
地色は黒、藍、鼠、茶系が多い。ちりめん・平絹地に友禅染を中心に刺繍を併用して風景や花鳥が描かれる。江戸褄模様として襟下から裾にかけて配され、渋く地味な印象。
五つ紋か三つ紋が付くので、儀礼的な場以外でも着られた。
明治中期以降はぼかし、濃厚な色彩も生まれ化学染料が大いに使われるようになる。
※化学染料は江戸末期にヨーロッパから伝えられて作られている。
※平絹(へいけん・ひらぎぬ)…無地の平織りの絹織物。表面に凹凸がなく、さらリとしている。
★鼠平絹地 流水牡丹菊模様 振袖 明治時代・19~20世紀 個人蔵
梅、牡丹、やぶこうじ、鶯、おしどりなど四季の草花、鳥が描かれている。
赤、橙色は化学染料を用いている。
<大正のロマン>
「大正デモクラシー」、欧米のアール・ヌーヴォー様式の影響を受けると、大柄な洋花のモチーフが多くなり、油彩画のような表現になる。着物が次第に社交着となり、華やかな装いへと変わっていく。
★桃色縮緬地 洋花菊模様 振袖 大正時代・20世紀 個人蔵
裾に向かってぼかしがあり、白菊とハゲイトウらしい植物が描かれている。
鮮やかな明るいピンク地に化学染料による友禅染で、緑、黄色を効果的に使いシルエットのようなモダンな着物。現代でも充分に好まれると思うし、着てみたい図柄である。
<昭和のモダン>
幾何学的な地紋、明快な色彩表現、デザイン化された模様が生み出される。
★浅葱綸子地 岩牡丹孔雀模様 着物 昭和時代前期・20世紀
地紋の大きな綸子や複雑な模様の綸子は西欧から新しい織機が導入されて可能になった。
※綸子(りんず)…地紋のある絹織物。やわらかく光沢がある。
円山応挙や四条派にも似た画風、濃厚で繊細。
きものは、明治維新後に洋装化が急速に進んでいく中にあっても、洋服にはない日本独自の伝統美を継承しつつ、外国の新技術や感覚をうまく取り入れながら日本のきもの文化を発展させ今日に至っている。
※四条派…与謝蕪村と円山応挙に学んだ呉春が創始した画派。
幕末の関西画壇で一大勢力となった。京都四条通りに住んでい
たことから呼ばれた。
※天然染料…天然の植物、動物、鉱物などから採取した染料。
天然染料は染法が複雑なこと、土地や採取時期の違いによっ
て色相が一定しないこと、染色物の耐久性に劣ることなどから、
19世紀中期に化学染料が開発されてからは、次第に主流では
なくなっていく。
今回は、日本の伝統美を伝える作品を一度に沢山展示されていたので、私の眼と心が迷ってしまい、どれをどうまとめようか…
なかなか整理できていないので、間違いがたくさんありそうで怖い。
きもの…
きものには、着方に多少の決まりごとがある。その決まりごとを理解した上で、自分の個性が光る着こなしをできたらいいなあと思う。
しばらく着ていなかった和服に袖を通してみようかと思いながら昨日今日を過ごしている。
「三井家のおひなさま」特別展示 きもの 会期2009.2.4~4.5
※参考文献 「三井家のきもの」文化学園服飾博物館編 文化出版局