私は、１０年程前、突然主人の会社が倒産してしまったんです。
それで、借金返済のため、自宅を売却することになりました。
私と息子は、一時的に非難するため、実家へ向かったんです。
その日の夜。
私は、家から、息子のサッカースパイクを持って来るのを、忘れてしまったことに気が付いたんです
気が動転してましたから…。
その頃、小学校６年生だった息子は、サッカークラブに入ってました
翌日は練習日だったんです。
サッカークラブには、たくさんの友達がいて、いつも楽しそうに通ってました
私はすぐ、売却する家へ、スパイクを取りに行くことにしたんです。
ただ、午後８時を過ぎていて、外は真っ暗でした。
主人とは連絡が取れなかったんです。
なので、私１人で行かなくてはいけませんでした
「もしかすると、借金取りが隠れてるかも」
急に、家に入るのが怖くなりました
「警察に守ってもらえないかな」
考えてばかりいても、どうにもなりません…。
とにかく車を走らせました。
そして、午後９時頃、警察署に着いたんです
「事情を話したら、怒られるかも…」
また怖くなってきて…
心臓がドキドキして、膝がガクガク震えてきました
でも、思いきって、警察官にお願いしたんです
「息子のスパイクを、家から持ち出したいんです」
「でも、借金取りが怖くて…」
「一緒に来てもらえませんか？」
最初、怖い顔をしていた警察官は、事情を話すと分かってくれたようでした。
「パトカーで行って、家の前で待機しましょう」
家の前に着くと、時刻は午後１０時頃で、辺りは静まり返っていました
私は、近所に気付かれないよう、早めにライトを消して停車したんです
パトカーも、静かに後ろから付いてきて、家の前に停車しました
私は、パトカーが来たのを確認して、玄関の鍵を開けようとしたんです。
懐中電灯は持っていましたが、近所に気付かれるのが怖くて、点けられませんでした。
その上、緊張で手が震えて、開けるのに時間が掛かったんです。
やっとのことで開けると、靴を履いたまま、部屋の中へ入りました。
もし、借金取りがいても、すぐに逃げられるように…。
家の中は真っ暗。
静まり返って、お化け屋敷のよう
なぜか、足の踏み場もないほど、散らかってました。
家から出て、数時間しかたっていないのに…
私は、急に怖くなって、大声で叫びたくなりました。
「誰かいるの？」
でも、必死に我慢しましたけどね…。
借金取りが、どこかに隠れているような気がしたんです。
なるべく足音を立てないように、奥へ進みました。
すると、台所の窓から、隣の家の明かりが見えたんです。
明かりで、すぐ側に隣人がいるのが分かりました。
私は気付かれないように、身をかがめて、息子の部屋へ向かったんです。
息子の部屋に入ると、スパイクはすぐ見つかりました。
そして、スパイクを持って家から出たんです。
家の前には、２人の警察官が、パトカーの横に立って待ってました
「大丈夫でしたか？」
私は緊張しすぎて声が出ず、うなずくのがやっとでした。
警察官は、私が家から出てきたのを見ると、あっという間にパトカーに乗って去っていきました。
私も急いで、家から離れました。
借金取りに会わずに済んで、本当に良かったです…。
実家に戻って、息子にスパイクを見せると、すごく喜んでくれました
私は、息子の笑顔を見て、大きな仕事をやり終えたような気がしたんです。
そして、息子の大切なスパイクを家から持ち出せたことで、気持ちに区切りを付けられました。
「家は無くなった」
「悲しんでる暇はない」
１５年以上住んだ、思い出深い家を諦める決心がつきました。
そして、「息子と2人で、また楽しい家庭を作ろう」と思ったんです
今日は、最後まで読んでくださってありがとうございました。
人気記事