


さて今回のアルバムは、タイトルがご自身の名前というファーストインパクトのデカさ。リリースの情報が出てからアルバムタイトルしかりジャケしかりその曲名の羅列しかり、星野源もしかして引退しちゃうんじゃないの?なんてファンの声も聞こえてきた。いやそれはないやろあるはずないやろ、と思ったけど解禁されていた情報を見てみるとそう勘ぐりたくなるのもわかるというか。それくらいの渾身の1枚という印象が、発売前から既にあったんである。で、私は発売日にしっかり聴いた。
良い、良すぎる。
Gen、良すぎるぞ。なんだチミは。私はおそらく複雑なコード展開が好きで、それ故ジャズやR&Bといったオシャンな音楽を好む傾向にあるんだが(と割と最近自覚した)、星野源、多分いま日本で1番複雑なコード進行をしている。55分テンションコード鳴らしっぱなし。揺らしすぎて酔うくらいだ。こんなんもはや邦楽ではない、いや言いすぎた、邦楽ではあるんだけどこれは今最も洋楽に近い邦楽だと思う。てかこんなんジャズやろジャズ。ばかのうたの素朴さは勿論、Strangerあたりの雰囲気すらもう無い。それは悪いことではなくて、それだけ星野源は進化したということ。彼の影響を受けてか、星野源ぽい音楽をやる人が少しずつ増えてきているように思う。それでもなお星野源がオリジナルだと思えるのは単に生まれが早いというよりか(それもあるけど)、彼の書く詞の力だと私は思う。私が言い始めたことではないけど彼の言葉には死の匂いがする。で、私は芸術に死の匂いを感じさせる人がとても好き。坂本慎太郎さんとか、横尾忠則さんとか。やっぱり死生観は、どうやったってティーンネージャーには描けない。ただただポップなだけなら星野源はここまで売れていない。暗さ、強い。
私は今作に関する星野源のインタビューもラジオも雑誌も何一つ見ていないが、辞めるどころか星野源まだまだやれます、というふうに聴こえた。CD買い漁るのが趣味だった大学生はもうアラフォーになってサブスクの恩恵受けまくりだけど、初めてクレジット見たさにCDを買おうかと思った。こんなにクールでキャッチーでクリエイティブでチャレンジングでパワフルな音楽を、星野源とその他どんなスタッフが関わって造り上げたのかが気になってしまった。こんなん初めてである。
