私はAmazonMusicを利用しているのですが、いいねを押すと勝手に出来上がる「Myいいねプレイリスト」が大変いい仕事をする。自分で作るプレイリストは曲順にこだわってしまうものだが、いいねプレイリストはその名の通り、私がいいねを押した順だから無作為と言ってもいい。だから、イントロが流れた瞬間、あれこの曲なんだったっけ?という新鮮さが聞くたびにある。
どれもこれもいい曲なのだけど、名曲はなぜこんなにも名曲なのか、とため息が出ることがある。ため息というか瞬間的にサブイボが立つ。例えばビートルズのLet it be とかoasisのWhateverとか、誰もがこれいい曲ですねと感じるだろうコード進行とメロディ、あれはどういうメカニズムで人の心に響くのだろう。誰かもう解明済でしょうか?その中でも今日はサカナクションの話がしたい。最近のプレイリストに入っているサカナクションは3曲。ライトダンス、夜の東側、あとドキュメント。ドキュメントはサカナクションの中でも上位に来るサブイボ曲ではないかと思う。
この曲、イントロから本当に良い。語彙力が乏しくて申し訳ないが本当に良いんだ。私は学がないので誰か教えて欲しいのだけど、例えば椎名林檎の依存性のサビからアウトロの部分、また中田裕二の正体のような、4つのコードとギターリフがひたすら循環することで生まれるあの情緒、あれは音楽的にいうとなんなのでしょうか?私はあの気だるく、退廃的で、抜け出せない沼のような、希望か絶望かというとどちらかといえば絶望を見るような、あのなんとも言えない後味が堪らなく好きです。この曲、サカナクションでいえば「目が明く藍色」を聴いた時の情感に近い。終始放たれるあの絶妙な不穏さ、それが最後アウトロにかけて光が差すように解放されるところが共通しているからだと個人的に思う。そして、「目が明く藍色」と同じくらいの名曲だとわたしは思ってる。
MVは予想以上に不穏で、曲からMVに飛べば「思ってたんとちゃう!」となったのは私だけではないはずで、コメントを見る限り実際そうだ。女の子が一郎さんのiPadの写真見て笑うとこ私泣いちゃうんだけど同じ人はいますか?ふつう、楽曲の世界観を素直に表現するものがMVだと思うけど、どちらかといえばこれは映画のエンドロールみたいなかんじ。つまり映画と映画の主題歌は作品として別モノであるように、このMVが一郎さんの「ドキュメント」を表してるかと言うと違うと思うのだが、ただこの人間の闇と、孤独と、なぜだか込み上げてくるもの寂しさは、「この世界は僕のもの」と歌う一郎さんの中にもきっとあるもので、おそらく魚民(サカナクションのファンのこと)はそれだからサカナクションの音楽に共鳴するように思う。一郎さんが思う「君」のことは知らないが(ていうか星野源のこと)、「君と僕は似てるな」といってくれる安心感はリスナーにとって大切なものだ。少なくとも、私はそんな理由でこの曲に惹かれている。
この曲は5thアルバム「DocumentaLy」を締めくくる位置にあるが、一郎さんはいつだったか配信で、この曲が出来上がった経緯を話してくれた。「今までの僕の話は全部嘘さ/この先も全部ウソさ」と書いた意味。私がここに書いてもうまく伝えきれないからやめておくが、つまりはこれは一郎さんの「ドキュメント」だ。私がこれを初めて聴いたのはもう10年以上も前になるわけだけど、一郎さんの意図が分かったあとだと余計胸に響くようになった。このアルバムの締めくくりで、この曲のラストに繰り返される歌詞がとても好きだ。
愛の歌歌ってもいいかなって思い始めてる
愛の歌歌ってもいいかなって思い始めてる