この薄い端末に何千もの本が!みたいな謳い文句に負けてKindle端末を手にしてから、もう4年は経つと思う。でも紙の本が好きなので結局カバンには1冊文庫が入っている。下手したらKindleと文庫本両方持ち歩くこともあるので最早本末転倒です。私が紙の本で購入するときは、基本話題作。あとで売れるかなと思うから。で、ずっと検討していた本がありました。それが「おいしいごはんが食べられますように」です。

 

 


最近近くに新しいカフェができまして、しかもそこが本屋が併設しているとあって、今日は仕事終わりに本を読みに行きました。カフェに入る前に本を選びに行ったらこちらが目立つところに山積みにしてあったので、そういえばこれ読みたかったんだわと思い出したわけです。早速買ってコーヒーとチーズケーキいただきつつ、思ったより薄い本だったので食べ終わる前に読めました。せっかくなので以下感想。



別にそれほどホラーでもないし胸糞でもない



前評判にちょっと期待しすぎた?帯見たら「職場ホラーNo.1」ってあるし、先に見た感想も怖かったとかもう読みたくないとかそういうのが印象に残っていたので、いつだれの化けの皮がはがれるのか?こいつか、それともオマエか!みたいな視点で読んでおりました。私は「芦川さんが実は超悪女」にベットしましたが特段大事件は起こりませんし別に誰も死にません。なので「これでおわり?!?!」と思っちゃった私ですが、ただね、それが日常なのかなという気がしましたよ。んで、それがこのお話のすごさなのだなと。結局誰が芦川さんのお菓子を捨てていたのかは最後まで出てきません。私はなんなら芦川さんの自作自演では?(藤さんとデキとるやろ)とも思いましたが、どんなに考察しようがその答えは書いていないのです。なんだよそれ!と言いたくなりますが、私たちの日常ってほんとそうなんですよね。ないって言われたらないし、自分のこと以外は本当のことなんて誰も分からない。誰が嘘ついてるかも誰がいい人なのかも多分死ぬまでわからないです。そういうリアリティは自分の生活に置き換えるとたしかに恐ろしい、ということかもしれません。



で、あまりに肩透かしをくらった私は読み終わったあとすぐさまレビューを覗きにいったわけですが(私が読み取れてないことがあったのかと)、どうやら私はちゃんと物語は読めているようで安心しました。ただ、こんなに感じ方が違うのかというのが正直な感想。解説にも「ごまめ」という表現があったが、どなたかのレビューにも「弱いものが勝つ結末」みたいなふうに表現してあってなるほどーと、たださ、芦川さんって弱いか??それってみんなが芦川さんの外面から勝手にそう見ただけであって、中身普通にしたたかやと思うんだが(藤さんと絶対デキとるって)。空気読まないってある種才能ですからね。そういう意味でなら激強ですよ。最強。「弱いものが勝つ」というよりか「弱いものは最強」という表現のほうが個人的にはしっくり来ます。


私には芦川さんより二谷のほうがよっぽど弱く見えたし生きづらそうだった。なんでこんなに食事に執着してるのかがわからなかったし(執着していないという執着)(終盤を見るとおそらく幼少期のトラウマなのだろうが)、自分がいつお菓子を食べるか、どう感想を述べるか等々、ここまで他人の目線を気にするもんかいと思った。私は食べるの大好きなので共感できるところがなかったし、あと作ってもらったものについて褒めるのは当たり前だと思う。考えすぎ。とにかくコイツがいちいちねちっこい。私なら絶対に結婚したくないので二谷おまえ調子乗んなよ?というかんじでした。

押尾さんのような真面目OLの気持ちは私も経験があるので十分わかるが、わざわざ芦川さんに嫌がらせをするのは理解できなかった。明らかに自分が不利じゃんね。送別会も出ないとかそれをわざわざ言うとかカッコつけてるようでダサいんだよなそれーというかんじ。そんで「地雷女」芦川さんについてだが、こういう人いるっちゃいるよねーと思いつつ、とくに嫌悪まで抱かなかったので私の実生活において出会ったことのないタイプなのかも知れない。というかここまで書いてて思ったけど私は芦川さん寄りのタイプなのかも知れないね。お菓子は作れないしこんなにマメじゃないし偏頭痛持ちではないけど、有給は全部消化して辞めたし。「みんなに好かれる芦川さん」に対してみんなこう要領良く生きたいけどそうもいかないという憂鬱がはびこるお話でしたね。まぁ芦川さん皆が思ってるようなピュアな人じゃないと思いますけどね、芦川さんの正体がいつまでもわからないっていう結末はホラーですね。うん、やっぱわたしのベットは間違ってなかったんじゃないですか?何回も読みたくはないので綺麗なうちに売ろうかな。