アントワーン・フークア監督、デンゼル・ワシントン、アシュトン・サンダース、メリッサ・レオ、ビル・プルマン、ペドロ・パスカル、サキナ・ジャフリー、オーソン・ビーン出演の『イコライザー2』。PG12。

 

元CIAのエージェント、ロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)はタクシー運転手をしながら密かに人助けをしている。やがて彼はベルギーのブリュッセルで起こった殺人事件にかかわっていくことになる。

 

2014年公開の『イコライザー』の続篇。

 

前作はかなり好きな映画で、だからその第2弾が公開されるということで楽しみにしていました。監督は前作と同じくアントワーン・フークア。

 

フークア監督の映画は『イコライザー』と『サウスポー』も好きで、だからわりと手堅い監督さんという信頼感があったんですが、日本では去年公開されてファンも多い『マグニフィセント・セブン』が僕は正直「…あれ?」って感じで、結構酷評してしまったのでした。

 

でも、この「イコライザー」シリーズは1作目が面白かったんだから大丈夫だろうと思っていたんだけど、ちょっと気になったのが日本ではほんとにギリギリまで予告篇を目にしなかったこと。

 

最初に観たのはYouTubeでだったし、映画館では一度も観ていない。

 

う~んと、なんでこんなに出し惜しみするのだろう、と。

 

しかも、意外と公開館数は多くない。…なんだろう、この嫌な予感。

 

確かに前作がかなり評判よかったのに、あまり話題になってないし。

 

で、観てきたのですが。

 

以下、ネタバレがありますのでご注意ください。

 

 

…あぁ、う~ん、えーっと^_^;

 

いや、別に普通に面白いですよ。めちゃくちゃ強いデンゼル・ワシントンが悪者をやっつけるアクション映画であることには違いないんで。ただ、前作が面白過ぎたので、どうしたって期待値が上がってしまって。

 

前作とこの続篇、どちらが面白かったかといったら、それはもう圧倒的に前作の方が面白かったと言わざるを得ない。前作と続けて観ると、なるほど、こういう展開になるわけか、と納得する部分もなくはないけど、ハッキリ言っちゃえば「俺が観たかったのはこれじゃない」。もう、この一言に尽きる。

 

あと、クロエちゃんも出ません。残念。

 

あんだけ面白かったマシュー・ヴォーン監督の『キングスマン』の続篇がああなってしまったように(この『イコライザー2』はもうちょっと面白いけど)、続篇って難しいんだなぁ、と痛感する。『キングスマン』は第3弾も作られてるみたいだけど。

 

キングスマン:ゴールデン・サークル』にも出演していたペドロ・パスカルがこの映画にも出てますが、彼のちょうどジェレミー・レナーをさらに人相悪くしたような悪役ヅラ見てたらすぐに黒幕だと気づいてしまった。

 

そして物語は予想通りに展開する。

 

『キングスマン2』の敵がなんだか魅力薄で、だからその敵と主人公との戦いにまったくといっていいほど燃えなかったように、この『イコライザー2』も前作のロシアン・マフィアとの戦いの面白さが嘘だったようにどこか盛り上がらないまま映画は終わってしまう。

 

やはり『キングスマン2』同様に、前作にも出てた主人公の味方が殺されてしまうという、一見効果的だけど安直ともいえる展開もある。

 

前作は134分あったのにちっとも長く感じなかったのが、今回は121分と短くなってるにもかかわらず長く感じてしまった。一番の見せ場であるはずのクライマックスの嵐の中の戦いに退屈さすら覚えてしまったほど。

 

…おかしいなぁ。

 

ちょうど日本も台風に襲われていろいろ大変だったわけだし、あの嵐の中での戦いにはリアリティを感じてもおかしくないのに、なんかもう、マッコールさん絶対に死にそうにないし^_^;やはり元同僚たちに主人公を絶対的な危機に陥れるほどの狡猾さや凶悪さを感じられないのが痛い。

 

いつも花壇の手入れをしているインド系の女性(サキナ・ジャフリー)、ホロコーストで生き別れた姉を何十年も捜し続けているユダヤ系の老人(オーソン・ビーン)、絵を描くのが好きだが麻薬の売人たちとの関係を断ち切れないアフリカ系の若者、そういうマイノリティの人々とのふれあいが描かれて、その若者マイルズ(『ムーンライト』のアシュトン・サンダース)はマッコールの裏稼業を知ることになる。

 

 

 

 

 

いろいろ詰め込んでるし、そういう現実の世界との接点が前作の魅力でもあったんだけど、何かどこかで噛み合っていない。妙に説教臭くなっちゃったし。このシナリオの出来はあまりよくないんじゃないだろうか。

 

ところどころ面白そうな要素はあるんですよ。ペドロ・パスカル演じるデイヴだって、普通に家庭があって、暗い表情でちょっと頼りなさげですらあった彼の後半での豹変ぶりはなかなかよかったし、前半にワシントン演じるマッコールが幼い娘を誘拐した男からその少女を救い出したり女性に性暴力を働いたヤッピーどもを全員ボコボコにするシーンなんて、あのノリで全篇やってくれてたらガン上がりだったのに、映画はそのお馴染みの「必殺仕置人」パターンから外れていって最後まで戻ってこない。なんか後半になって別の映画になっちゃったみたいな違和感があった。

 

 

 

 

 

予告で「イコライザー vs イコライザー」みたいなこと言って煽ってるから、てっきりマッコールと対等の戦闘能力を持つ強敵が現われるのかと思ったら(Twitterで「『コラテラル』のトム・クルーズみたいな敵を想像してしまった」と呟かれてるかたがいましたが、ほんと、そういう話を期待しちゃうよね)、敵の元同僚たちはあっちゃりと一人ずつ片づけられてしまう。その無敵ぶりがどんどんスティーヴン・セガールに近づいていくデンゼル・ワシントン。セガールの映画を今僕が観る気にならないのは、もう彼にかなう敵が登場しないことがわかってるから。

 

 

 

そこはやっぱりデンゼル・ワシントンに並ぶぐらいの存在感のある、たとえばラッセル・クロウみたいな敵が登場、というサプライズが必要だったと思う。なんだったらシュワちゃん演じる“イレイザー”でもいいけどw

 

前作は“悪役”の魅力でグイグイ見せてたのが、今回は最初から最後までマッコールさんの完全無双状態のまま全篇続くんで、溜飲が下がらないんですよね。カタルシスがない。

 

今回の敵はいわば“裏マッコール”とでも呼ぶべき存在で、だから「イコライザー vs イコライザー」なんていう思わせぶりな惹句が作られたんだろうけど、実は主人公のロバート・マッコールこそがどんな悪党よりも一番危険な存在であることは、すでに観客も前作の時点でわかってるんですよね。

 

だから、それをあらためて指摘したところで別に意外性もないし、それよりも元CIAのエージェントなんていうリアリティを感じづらい敵じゃなくて、現実の世の中にいるクソ野郎たちの中でももっともタチの悪いお偉方どもがぶっ殺されるところが見たかった。マジで死ねばいいのに、って奴なんて世の中にいくらでもいるでしょ。

 

しかし、なぜ現実にはマッコールのような「正義の味方」がいないのかといったら、彼のような男がもしも実在したら、それこそデイヴたちのようにやがて金のために罪も恨みもない人々を殺すようになるからだ。暴力によって人を断罪する者は、一度それを行使したらその暴力を制御できなくなる。職にあぶれたらその暴力で食い繋ごうとする。

 

マッコールのように普段はホームセンターの店員やタクシー運転手として真面目に働きながら、いざという時には悪人を懲らしめにいく、みたいなことなんてできない。武器持って自警団みたいなことやってる連中の危うさを思えば、そのことがよくわかる。

 

デイヴたちエージェント崩れの殺し屋たちは、そのことを観客に気づかせてくれる。

 

どんなに映画の中でデンゼル・ワシントンが社会のクズを掃除してくれても、それはスクリーンの中のファンタジーに過ぎない。

 

だから、ほんとならそのマッコール自身の影のような存在であるデイヴ一味との戦いはめちゃくちゃ燃えるはずなんだけどな。テーマ的には『ダーティハリー2』に通じるものもある。『イコライザー2』の場合は、敵が人を殺すのは正義感からじゃなくて「経済」が目的ですが。

 

何か、映画自体が途中で息切れしてしまったような、そんなもったいなさがあった。

 

このシリーズそのものが、「アクション映画」の枠を越えようとしているようにも思える。

 

それを「面白い」と感じるか、「つまらない」と感じるか。難しいところですね。

 

妻の死について語られて、マッコールの過去もさらに明らかになった。CIAを辞めてからも付き合いのあったスーザン(メリッサ・レオ)は殺されてしまった。

 

それでも彼は今も都会の隅で、助けを求める人々に手を差し伸べ続けている。

 

「失われた時を求めて」「世界と僕のあいだに」

 

前作でも本のタイトルが引用されていたように、これらの著書からいろいろと思索してみることはできるかもしれない。この映画のロバート・マッコールという主人公に対して自分なりに意味づけをして、例え話として見ることも可能でしょう。

 

マッコールを演じるのが“筋肉モリモリマッチョマンの変態”ではないデンゼル・ワシントンであることは、このシリーズに独自性をもたらしていて捨てがたい魅力があることは確かだし、もしもさらなる続篇が作られるなら観たいと思うけど、アクション映画の面白さというのは本当に微妙なバランスで保たれていて、それがちょっと崩れた拍子に急にリアリティや迫力や興奮が霧散するのだ、ということを強く感じました。

 

 

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